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第7話 アイザックの正体
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アイザックの正体は、黒竜様だった。
頭では理解したつもりでも、まったく理解できない。
だってアイザックとは、8歳の頃からずっと一緒にいたのに……。
「ルシル、いままで黙っていてすまなかった」
私がまだ現実を受け入れられていないと思ったのか、アイザックはこれまでのことを説明してくれます。
アイザックは守護竜として、山に隠れ住んでいた。
この国を守るという盟約をしていたアイザックは、人知れずこの国を災害から防いできたらしい。
だけど、いつの間にか人間たちは守護竜信仰を捨て、山には誰も来なくなった。
それから長い時間が過ぎて、竜の山に数十年ぶりに人間の子供が現れた。
その子供こそが、私。
もう忘れられていたと思ってたのに、まだ自分を想っていてくれる人間が存在していた。
そのことがたまらなく嬉しかった黒竜様は、その娘に興味を持ち、同じ人間に化けた。
そうして一緒に、竜の研究を始めたのだという。
「だから黒竜様はこの十数年、姿を消していたのね」
人間のアイザックになって、私の幼馴染となっていたから。
「ずっと君のことが好きだった。でも、俺はドラゴンだ。ルシルのためを想うならと、身を引いていた」
黒竜様の鱗と同じ、アイザックの黒色の髪が風になびく。
竜が人に化けると、髪の色素は鱗の影響を受けるんだなと、研究者らしく場違いなことを考えてしまう。
「だが、ルシルが処刑されることになって、その考えは誤りだと気がついた。竜の姿で人と関わることは禁じられているから、できることなら人の姿で助けたかったが、ルシルが死ぬことに比べれば俺の正体がバレることは些細なことだ」
「だからアイザックは人の姿のまま、何度も私を助けようとしていたんだ」
竜になれば、いつでも私を救うことはできたはず。
でも、人に関わることは禁止されていた。
そのせいで私だけでなく王太子や衛兵たちに、正体を明かすことができなかったんだね。
「何度も苦労をかけさせてごめんなさい。怪我もさせちゃったかも。痛かったでしょう?」
「あんなの怪我には入らない。それにルシルのことを理解できずに傷つけようとする男にはもう任せられないからな、これからは俺が君を幸せにする!」
アイザックが私を抱きしめる。
彼の肌が温かい。
竜も人間と同じような生き物なんだと、なんだか安心してしまう。
──まさか、アイザックが私のことをそんなふうに想っていたなんて、まったく気が付かなかったわ。
なにせ私自身、この気持ちに気づいたのは独房に入れられてからのことだったし。
いったいアイザックは、どれだけ長い間、私への想いを秘めていたんだろう。
「私を好きになる殿方なんて、誰もいないと思っていたのに」
「ルシルのことは俺が一番良く知っている。ルシルじゃないと、俺は嫌なんだ」
私は竜研究しか頭になく、女らしいことがなにひとつできないというのに。
だけどそんな私のすべてを、アイザックは包み隠さず、すべて知っている。
というか、実際に何度も見られている……!
だからこそ、思うのだ。
「でも、私なんかでいいの? 竜が好きなことしか取り柄がないのに……」
「むしろ大歓迎だ。君はずっと俺のことを好きだと言ってくれていた。黒竜様は憧れだ。むしろ好き。いつか会いたい、と。やっとこうして君に本当の姿を見せることができて、感激だよ」
まさか黒竜様のへの数々の恋慕の言葉が、本人に聞かれていたなんて……。
は、恥ずかしすぎるんですけど!
「初めて会った日から、俺はルシルに夢中だったんだ」
アイザックが私の頬をそっと触りました。
そして騎士のように片膝をつきながら、私の手の甲に口づけをします。
「ルシル、君を愛している。俺と結婚してくれ」
頭では理解したつもりでも、まったく理解できない。
だってアイザックとは、8歳の頃からずっと一緒にいたのに……。
「ルシル、いままで黙っていてすまなかった」
私がまだ現実を受け入れられていないと思ったのか、アイザックはこれまでのことを説明してくれます。
アイザックは守護竜として、山に隠れ住んでいた。
この国を守るという盟約をしていたアイザックは、人知れずこの国を災害から防いできたらしい。
だけど、いつの間にか人間たちは守護竜信仰を捨て、山には誰も来なくなった。
それから長い時間が過ぎて、竜の山に数十年ぶりに人間の子供が現れた。
その子供こそが、私。
もう忘れられていたと思ってたのに、まだ自分を想っていてくれる人間が存在していた。
そのことがたまらなく嬉しかった黒竜様は、その娘に興味を持ち、同じ人間に化けた。
そうして一緒に、竜の研究を始めたのだという。
「だから黒竜様はこの十数年、姿を消していたのね」
人間のアイザックになって、私の幼馴染となっていたから。
「ずっと君のことが好きだった。でも、俺はドラゴンだ。ルシルのためを想うならと、身を引いていた」
黒竜様の鱗と同じ、アイザックの黒色の髪が風になびく。
竜が人に化けると、髪の色素は鱗の影響を受けるんだなと、研究者らしく場違いなことを考えてしまう。
「だが、ルシルが処刑されることになって、その考えは誤りだと気がついた。竜の姿で人と関わることは禁じられているから、できることなら人の姿で助けたかったが、ルシルが死ぬことに比べれば俺の正体がバレることは些細なことだ」
「だからアイザックは人の姿のまま、何度も私を助けようとしていたんだ」
竜になれば、いつでも私を救うことはできたはず。
でも、人に関わることは禁止されていた。
そのせいで私だけでなく王太子や衛兵たちに、正体を明かすことができなかったんだね。
「何度も苦労をかけさせてごめんなさい。怪我もさせちゃったかも。痛かったでしょう?」
「あんなの怪我には入らない。それにルシルのことを理解できずに傷つけようとする男にはもう任せられないからな、これからは俺が君を幸せにする!」
アイザックが私を抱きしめる。
彼の肌が温かい。
竜も人間と同じような生き物なんだと、なんだか安心してしまう。
──まさか、アイザックが私のことをそんなふうに想っていたなんて、まったく気が付かなかったわ。
なにせ私自身、この気持ちに気づいたのは独房に入れられてからのことだったし。
いったいアイザックは、どれだけ長い間、私への想いを秘めていたんだろう。
「私を好きになる殿方なんて、誰もいないと思っていたのに」
「ルシルのことは俺が一番良く知っている。ルシルじゃないと、俺は嫌なんだ」
私は竜研究しか頭になく、女らしいことがなにひとつできないというのに。
だけどそんな私のすべてを、アイザックは包み隠さず、すべて知っている。
というか、実際に何度も見られている……!
だからこそ、思うのだ。
「でも、私なんかでいいの? 竜が好きなことしか取り柄がないのに……」
「むしろ大歓迎だ。君はずっと俺のことを好きだと言ってくれていた。黒竜様は憧れだ。むしろ好き。いつか会いたい、と。やっとこうして君に本当の姿を見せることができて、感激だよ」
まさか黒竜様のへの数々の恋慕の言葉が、本人に聞かれていたなんて……。
は、恥ずかしすぎるんですけど!
「初めて会った日から、俺はルシルに夢中だったんだ」
アイザックが私の頬をそっと触りました。
そして騎士のように片膝をつきながら、私の手の甲に口づけをします。
「ルシル、君を愛している。俺と結婚してくれ」
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