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12:下三位交流会
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【下三位交流会 会場】
あの後、四姉さまからも『行った方がいーわよ』と言われたので参加することに。
そもそもあれは出欠の確認じゃ無かったとか言わない。
人数は三〇人ほどだろうか。
色の定まらない無色無味な神が大半を占める中、今回参加した色付きはたったの五人きり。大変よく目立つ。
色付きとは、つまり神性を得た者の事を言う。
〝月〟のわたしであれば、わたしには内側だけしかないけど青く輝く銀髪に赤い瞳、日焼けのない白い肌に魅惑の黒いナイトドレスなど、無色と違ういで立ちを言う。
『無』の間に半数ほどが神性を発現するそうなので、5/30という今回は特に少なかったようだ。
はい。先ほどから囲まれています。
流石に触れてくることは無いけれど、特にわたしの周りが多いのは、わたしの神性が希少な〝月〟だからに違いない。
浴びせられる質問のほとんどは、神性に関すること。
特に〝聖〟について聞きたいらしい。
きっとこれが〝聖〟かなという所はあるけれど、語るのならば〝闇〟やら〝常闇〟の方が語りやすい闇まっしぐらなわたしです。
さていまのわたしは姉さまがたから、階位の『無』ではなく、神性の『月』と呼ばれている。
レアだからそう呼ばれているのではなく、実はこれ、早い者勝ちなのだ。つまりいま居る下三位の三〇人から、わたし以外に『月』が出ることはない。
だから質問は〝聖〟について。
聖の神性はまだ埋まっていないから、手に入る可能性はゼロではない。
質問攻めにあいながら周りを見れば、少し離れたところで緑の男神が囲まれていた。
四大の一つ〝風〟か、それともニッチな〝草〟か〝森〟の方かな?
別にあったもう一つの集団は先ほど解散した。
こちらはオレンジの男神なので〝火〟だろう。複合でもない単色。ついでに発現しやすい四大属性の〝火〟なので聞くことが無く飽きられたのだろう。
あーじゃあ緑は〝風〟じゃないな。同じく四大属性の単色ならもう飽きられてる。
あとの二人は服装にだけ色があるタイプで見分けが付きにくい。髪や肌に特定の色を持たない神は〝知恵〟や〝正義〟と言った概念や思想の神性を発現した者たちで、本人に聞く以外に知りようはない。
周りから人が消えた。
一歩も歩けず、いい加減面倒になって、
「初めて交流会というものに参加しましたが、いつから質問攻めを交流と言うようになったのですか?」
と聞いたらやっと囲いが解けた。
いまは至る所で『闇』という単語が聞こえてくるようになった。
闇の癖に、闇風情が、闇なんて、これだから闇は。
へえ結構バリエーションあるじゃん、闇。
「初めましてだよねー?」
無味ではあるけど色味はやや黄色交じりの女神が話しかけてきた。
光か雷が強いのだろうか? まさか土とか地だったらごめんなさい。でもまだ複合の豊穣とか大地が開いてますよ、頑張って!
「うん初めまして『月』です」
「いいなー、あたしは『無』」
その名乗りいる?
下三位の交流会だもん、あなたが『無』なのはみんな知ってるよ。
「月の神性って三人しかいないんでしょう。凄いねー!」
「凄いのは先輩方だよ。『座』と『主』だもん、わたしなんて居ても居なくても一緒」
そう言えば、その凄すぎる先輩方は、下神が利用者の大半となるバザールには参加していないようだ。もし月の神性が参加すれば、間接的に三姉さまの力になれたりするのかな。
「主神もそうだけど座神なんて見たこともないやー。確か五人だっけ?」
「そうだね」
熾は唯一人、智が三人で座が五人。合計九人が上神だ。
一姉さまに当たる座に会ったことが無いということは派閥の規模が小さいのか、それともうちと方針が違って、上神が下の方まで直接管理していないのかな。
「わたしはこの前、智神に会ったよ」
「うわぁ凄い凄い! どんな方だったのー!」
「〝月〟と対の〝太陽〟で男神。習わしだって言われて会わされたんだけど、なんか凄すぎて震えが止まらないかな」
褐色肌の筋肉粒々の男が白い歯を見せてニカッと笑う。いま思い出しても震えます。
話していると視界の端っこに新たな集団が生まれているのが見えた。
男神と女神が三人ずつ計六人が楽し気に談笑している。
あれは一体……? 人間たちが言う所のリア充?
わたしの視線に気づいたのだろう、黄色交じりの無ちゃんが教えてくれた。
「あー。あれは〝愛〟狙いの人たちだねー」
本来同時には発現しない神性だけど、愛だけは別で、これは男女に一人ずつ同時に発現する。
過去には単身で愛を発現させた強者も居たそうだが、一人で愛を語れていいのかな?
あいつらあんな談笑してるけどライバルなんだなーと、集団をぼんやりと見ていたら再び隣から声が掛かった。
「ねえ。あたし何にみえる?」
普段の会話の中でこんな台詞が聞こえてきたら、その子とはそっと距離を置いた方が良いだろう。だけど今は違う意味なのでちゃんと答えてあげた。
「土か地が強いかな」
話してみて判った。
光や陽は、わたしの内封する常闇と死と相性が悪く嫌悪や畏怖が出る。しかし夜と月は逆に惹かれるから、ドキドキするのにガクガクする謎の感情に捕らわれる。しかし彼女にそれは感じないからそこは消える。そして苛烈さもないので雷でもない。
最後にどこがとは言わないが平坦なので、地味な二つのどっちかという訳だ。
「やっぱ判っちゃうよねー。あたし土なんだ」
発現しやすい四大属性の一つは地の方。土は地よりもさらに地味……
しかし草か森を得れば豊穣になれる。
豊穣は女性的な権能で、月と同じく女神にしかなれない神性だ。
「さっき緑の男神がいたよね」
「うん。『草』だってさー」
「だったら丁度いい、彼に〝草〟の神性を得るコツを聞いてみて。なんなら彼から〝草〟の【機能】を買ったらいい」
「そんなの意味ないじゃん、だって『草』はもう埋まってるもん」
「〝土〟と〝草〟で〝豊穣〟になるんだよ。『豊穣』はまだ空いているでしょう」
「そうなんだー! ありがとう、あたし頑張ってみる!」
パタパタと慌ただしく走っていった。
明るい子だ。
あれで光が出てこないとか、光って厳しすぎでしょ?
あの後、四姉さまからも『行った方がいーわよ』と言われたので参加することに。
そもそもあれは出欠の確認じゃ無かったとか言わない。
人数は三〇人ほどだろうか。
色の定まらない無色無味な神が大半を占める中、今回参加した色付きはたったの五人きり。大変よく目立つ。
色付きとは、つまり神性を得た者の事を言う。
〝月〟のわたしであれば、わたしには内側だけしかないけど青く輝く銀髪に赤い瞳、日焼けのない白い肌に魅惑の黒いナイトドレスなど、無色と違ういで立ちを言う。
『無』の間に半数ほどが神性を発現するそうなので、5/30という今回は特に少なかったようだ。
はい。先ほどから囲まれています。
流石に触れてくることは無いけれど、特にわたしの周りが多いのは、わたしの神性が希少な〝月〟だからに違いない。
浴びせられる質問のほとんどは、神性に関すること。
特に〝聖〟について聞きたいらしい。
きっとこれが〝聖〟かなという所はあるけれど、語るのならば〝闇〟やら〝常闇〟の方が語りやすい闇まっしぐらなわたしです。
さていまのわたしは姉さまがたから、階位の『無』ではなく、神性の『月』と呼ばれている。
レアだからそう呼ばれているのではなく、実はこれ、早い者勝ちなのだ。つまりいま居る下三位の三〇人から、わたし以外に『月』が出ることはない。
だから質問は〝聖〟について。
聖の神性はまだ埋まっていないから、手に入る可能性はゼロではない。
質問攻めにあいながら周りを見れば、少し離れたところで緑の男神が囲まれていた。
四大の一つ〝風〟か、それともニッチな〝草〟か〝森〟の方かな?
別にあったもう一つの集団は先ほど解散した。
こちらはオレンジの男神なので〝火〟だろう。複合でもない単色。ついでに発現しやすい四大属性の〝火〟なので聞くことが無く飽きられたのだろう。
あーじゃあ緑は〝風〟じゃないな。同じく四大属性の単色ならもう飽きられてる。
あとの二人は服装にだけ色があるタイプで見分けが付きにくい。髪や肌に特定の色を持たない神は〝知恵〟や〝正義〟と言った概念や思想の神性を発現した者たちで、本人に聞く以外に知りようはない。
周りから人が消えた。
一歩も歩けず、いい加減面倒になって、
「初めて交流会というものに参加しましたが、いつから質問攻めを交流と言うようになったのですか?」
と聞いたらやっと囲いが解けた。
いまは至る所で『闇』という単語が聞こえてくるようになった。
闇の癖に、闇風情が、闇なんて、これだから闇は。
へえ結構バリエーションあるじゃん、闇。
「初めましてだよねー?」
無味ではあるけど色味はやや黄色交じりの女神が話しかけてきた。
光か雷が強いのだろうか? まさか土とか地だったらごめんなさい。でもまだ複合の豊穣とか大地が開いてますよ、頑張って!
「うん初めまして『月』です」
「いいなー、あたしは『無』」
その名乗りいる?
下三位の交流会だもん、あなたが『無』なのはみんな知ってるよ。
「月の神性って三人しかいないんでしょう。凄いねー!」
「凄いのは先輩方だよ。『座』と『主』だもん、わたしなんて居ても居なくても一緒」
そう言えば、その凄すぎる先輩方は、下神が利用者の大半となるバザールには参加していないようだ。もし月の神性が参加すれば、間接的に三姉さまの力になれたりするのかな。
「主神もそうだけど座神なんて見たこともないやー。確か五人だっけ?」
「そうだね」
熾は唯一人、智が三人で座が五人。合計九人が上神だ。
一姉さまに当たる座に会ったことが無いということは派閥の規模が小さいのか、それともうちと方針が違って、上神が下の方まで直接管理していないのかな。
「わたしはこの前、智神に会ったよ」
「うわぁ凄い凄い! どんな方だったのー!」
「〝月〟と対の〝太陽〟で男神。習わしだって言われて会わされたんだけど、なんか凄すぎて震えが止まらないかな」
褐色肌の筋肉粒々の男が白い歯を見せてニカッと笑う。いま思い出しても震えます。
話していると視界の端っこに新たな集団が生まれているのが見えた。
男神と女神が三人ずつ計六人が楽し気に談笑している。
あれは一体……? 人間たちが言う所のリア充?
わたしの視線に気づいたのだろう、黄色交じりの無ちゃんが教えてくれた。
「あー。あれは〝愛〟狙いの人たちだねー」
本来同時には発現しない神性だけど、愛だけは別で、これは男女に一人ずつ同時に発現する。
過去には単身で愛を発現させた強者も居たそうだが、一人で愛を語れていいのかな?
あいつらあんな談笑してるけどライバルなんだなーと、集団をぼんやりと見ていたら再び隣から声が掛かった。
「ねえ。あたし何にみえる?」
普段の会話の中でこんな台詞が聞こえてきたら、その子とはそっと距離を置いた方が良いだろう。だけど今は違う意味なのでちゃんと答えてあげた。
「土か地が強いかな」
話してみて判った。
光や陽は、わたしの内封する常闇と死と相性が悪く嫌悪や畏怖が出る。しかし夜と月は逆に惹かれるから、ドキドキするのにガクガクする謎の感情に捕らわれる。しかし彼女にそれは感じないからそこは消える。そして苛烈さもないので雷でもない。
最後にどこがとは言わないが平坦なので、地味な二つのどっちかという訳だ。
「やっぱ判っちゃうよねー。あたし土なんだ」
発現しやすい四大属性の一つは地の方。土は地よりもさらに地味……
しかし草か森を得れば豊穣になれる。
豊穣は女性的な権能で、月と同じく女神にしかなれない神性だ。
「さっき緑の男神がいたよね」
「うん。『草』だってさー」
「だったら丁度いい、彼に〝草〟の神性を得るコツを聞いてみて。なんなら彼から〝草〟の【機能】を買ったらいい」
「そんなの意味ないじゃん、だって『草』はもう埋まってるもん」
「〝土〟と〝草〟で〝豊穣〟になるんだよ。『豊穣』はまだ空いているでしょう」
「そうなんだー! ありがとう、あたし頑張ってみる!」
パタパタと慌ただしく走っていった。
明るい子だ。
あれで光が出てこないとか、光って厳しすぎでしょ?
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