下っ端から始まる創造神

夏菜しの

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24:姉妹訪問

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 未だに神力は安定しないけれど、倒れたのを察知して駆け付けてくれた姉妹たちにお礼を言おうと一人ずつ回ってみた。


【一姉さま】
 神力が近くなったからか、視られても以前に比べて威圧感はあまり感じない。ただし閉じている瞳が開いたときどうなるかは知らない。
 挨拶もそぞろに、一姉さまは兄貴たいようわたしと『座』神つきのやり取りを聞きたがった。
 もちろん隠す必要が無いので全部話した。ずっと楽しそうに聞いてくれたが、〝極光〟の話が出るや笑みは消えて途端に機嫌を損ねてしまったっぽい。
 極光=地雷らしい。

「そう言えば『主』の眷属が行き場を無くして途方に暮れているわよ」
 そう告げて来た一姉さまは、先ほどとは打って変わってとても楽しそう。
「どういうことです?」
「あら突然付き従っていた神が消えたんですもの困って当然でしょう? あの女が回収できるのはいいとこ六割。残りを上手く攫えれば差は歴然になるわ。フフフ」
 黒い。けどめっちゃ楽しそうなので、挨拶を終えてお暇させて貰った。


【二姉さま】
 続いて二姉さまの部屋にやって来た。
 わたしの神力はまだ不安定だけど、あれほど遠かった二姉さまと神力がほぼ並んでいるのがわかる。そして第四位『主』を喰ったのだから、安定すればきっと抜くだろう。
 神力は勝とうが永くお世話になった姉だもん、そんなの気にしない。でもサクッと抜かれた側である姉の方はどうだろうかと、ちょっと不安。

 腹芸を嫌う二姉さまなので、単刀直入にぶっちゃけてみた。
「ん~気にしなくていいよ。肩張らずに楽にしなよ~」
「そう見えましたか?」
「まあね~ウチも伊達に姉やってないってことさっ」
 そう言って貰えると助かります。


【三姉さま】
 二姉さまから温かいお言葉を貰ったので、勇み足で三姉さまのところへやって来た。
「あなたね、先触れを出しなさいといつも言っているでしょう!
 いつになったら理解できるのかしら?」
 そして到着と同時にお説教が始まった。三姉さまはいつも通り何も変わらない。
 そしてわたしも、どこで『ごめんなさい』を差し込むか、タイミングを読みつつ反省してますポーズをとっておく。つまりいつも通りである。

 ここだというタイミング!
「三姉さまいつもありがとうございます」
 しかし口から出たのは違う台詞だった。

 三姉さまはハァ……と深いため息を漏らすと、
「お礼をいうより行動を改めなさい!」
 すべて解ったうえで叱ってくれたっぽい。できた姉に感謝。


【四姉さま】
 出す先触れ出す先触れ、すべてNGで、意地になって出しまくったら純白の鷲が飛んできて『煩い!』と叫んで消えた。
 むむむ。ならば直接乗り込んでやる。

 だが転移は発動しなかった。
 座標指定してから飛ぶのだけど、座標指定後の転移が強制キャンセルされている。いったい誰の差し金だろうか。
 四姉さまじゃあない。だって四姉さま、こういうの苦手だもん。そして二姉さまも違う。あの人もこういう細かいことは苦手にしている。
 じゃあ三姉さま~と言いたいところだが、いまの神力の差を考えると、三姉さまの結界でわたしの侵入を防げるとは思えない。
 最後に残ったのは一姉さま。出来るか出来ないかは横に置き、無理やり入ったらダメということ。

 悩んだ末に、月狼にメッセージを託すことにした。
『四姉さまの都合がよくなったときに改めてお願いします』
 これでよし。

 月狼が消えて数秒、四姉さまが転移してきた。
「あれもういいんですか?」
「……」
 うわぁ無視ですわー

「あのぉ四姉さま?」
「まだあーしを姉と呼んでくれるの?」
「当たり前でしょう。なに言ってんですか」
「そ、そうよね! それでっ用事はなに? あーしが姉として聞いてあげるわっ!」
「わたしが倒れたときに来てくださってありがとうございました」
「そんなの当然でしょ」
 なに言ってのあんたと呆れ顔を見せられた。
 全然は似ていないと思っていたけれど、すこしだけわたしたちは似ているらしい。


【環】
 三姉さまの努力が報われ、『環』は8割くらいの確率で自室に帰るようになった。残った二割は妥協ラインだそうでツッコミ禁止だってさ。
 さてわたしの物をありがたがる『環』に先触れを出すと、月狼が捕縛されて帰ってこないので、先触れ無しで『環』の神域に向かった。結果は空振り、『環』は不在だった。
 刻を改めようと自室に戻れば『環』がいた。あえて付け加えるならわたしの知らない世界も二つある。
 二つとも灰色の大地が広がる世界だが、わたし特有の死の大地ではなくて、『環』節が全開した氷の世界の方。
 ちなみに動き出した世界はもう移動できないので、この世界は新しくここで創ったということだ。
 ねぇいつからここに居たのこの子?
 それにさ。世界をポンポン創ってるけど大丈夫?
 ようするにすぐ滅びるって意味だけど……

「ねえ『環』ここでなにやってんの?」
「あっお帰りなさい五姉さま!」
「ただいま。で、なにやってんの」
「五姉さまが姉妹を訪ねて回っていると聞きましたので、最後は私の番だと確信してお待ちしておりましたわ」
 待ってたんだ、へえ~。
 よく判った。でも何でここで待ってんだい。行っちゃったじゃん!
「自分の部屋で待ちなさいよ!」
「そんな些末なことで五姉さまのお手を煩わせるわけには参りません!」
「……『環』?」
「はい!」
「あなたが部屋に居なかったから、余計わたしの手を煩わせんだけどー?」
「……ああっ! 申し訳ございません。こうなれば自決してお詫びいたします!」
 言うが早いか『環』は黒い刃を持つ短剣を取り出し首に当てた。
 そしてちらりとこちらを見る。
 だがわたしは何も言わず、そして反応だってしてやらない。

 『環』がチラチラッと視線を送っている。
 必死のアピールに見えるだろう? でもこの子、輪廻を司る〝輪〟の権能持ちだからこんなんじゃ死なないんだわ。正確に言うと死んですぐ生き返るんだけどね。
 そしてこれ、今回が初めてじゃあない。
 そりゃあ初めての時は必死に止めたよ? 何度目かの時、本当に首を掻っ切ったときなんて超焦ったし。
 でももうタネは割れている。
「はよ切れ」
「酷いですわ!」
 ああ良かった、妹の態度も変わってないや。



 さらに刻が流れてようやく神力が安定した。

 なんと驚きの842万! 端数切捨て。

 神力量なら二姉さまを上回る第四位『主』、しかしその実態は?
 昇格試験も受けていなければ、育成した神の数や、創造した世界の数だって足りていない。前と変わらず第八位『大』でございます。

 えーと確か第七位『権』は、創造世界数が1000以上だっけ?
 ちょっと前から研修生を受け入れて、100ほど稼いだけれど全然足りない。
 神力が上がろうとも姉妹間の序列は変わらないしそれを受け入れているから、新人の育成は三姉さまが優先だし、研修生の受け入れだって四姉さまを優先している。
 今のところは『枝のほうで聞いてくる~』とか言って居なくなった二姉さまに期待!
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