下っ端から始まる創造神

夏菜しの

文字の大きさ
35 / 44

35:月の権能

しおりを挟む
 闇の集いから戻った後、わたしは眷属に種を配りながら、月神じぶんについて考えていた。自分の世界を創る時間をも惜しみ、ずーっと考え続けたことで、やっと実を結びそうなところまでこぎつけていた。

 最初は自分の考察から始めた。

・月はわたし、「月」
 暗くなると現れる、「夜・闇」

・月の光は神聖、「聖」

・陽の光なき場所、「闇」

・再生の太陽なき場所、「死」


 もっとも気になるのは〝月〟だろう。そもそも〝月〟の権能に〝闇〟が内封されているのに、個別でも〝闇〟を持たされている。
 ついでに言うと、わたしの〝闇〟は〝常闇〟なので〝闇〟をさらに二つも内封している。単一の『闇』神の実に三倍。
 わたしこそが真の闇神と言っても過言じゃあないってうるさいわ!


 さて月が光るのは夜だとか暗いからじゃあない。太陽の光を写し・・反射・・しているからだ。つまり月の光の大元は太陽と解釈してもよいはず。
 ってことは、わたしって〝太陽〟の権能を使えるんじゃないかと推測している。

 とても安直だけど、この試みには屁理屈、じゃなくて思い込み、でもなくて、えーと、そう閃きが大事なんだよ。
 もちろんすべての太陽のすべての権能がなんて烏滸がましいことは言わない。それを言ったら太陽いらんやんね。

 残念ながら太陽あにきの考察をしなければならないようだ。
 兄貴に出会ってしばらく経った頃、興味本位に手持ちの権能の話をしたことがあった。すべてはこの時のため!
 さてそのとき聞いた〝太陽〟神の権能は【太陽・生命・炎】だったっけ。そして〝太陽〟は複合でその中には【光・聖・再生】が入っているそうだ。
 もちろん正直に教えてくれているとは思っていないが……
 くっ! 闇要素一切なしとか!!

 続いて〝太陽〟と〝月〟には、それぞれ対となる権能があるのでそれを区分けする。今回の試みでは、持っているか反転したものは対象外だ。なぜってすでに写しているか反射しているからだ。

 まず〝再生〟と〝生命〟は〝死〟でしょ。
 〝光〟は〝闇〟とか〝夜〟だよね。
 〝炎〟は対がないな。
 んで〝聖〟は持ってる。少ないけど……

 〝炎〟か。
 月に温度のイメージはない。
 でも月は太陽の反転と考えていくと、死者に体温はないし、熱エネルギーは原子や分子の運動によるものだとすると、死は終わりであり終着つまり停止だ。生命の消失や消滅なんて言い方してもいいかもしれない。
 それを【機能】に落とし込むなら、『凍結』と『時』、もっと幅広く『消滅』ってところだろうか。
 前から順に簡単で、最後のやつは飛躍しすぎだ。でも出来たらラッキー、やらないよりはやった方がいい。


 ヒントが出たので次は試みへ。
 こっちは難しい順にやるよー。
 うん。『消滅』は言い過ぎた、無理だこれ。とっかかりもないね。
 『時』も微妙に無理かな、ただもう少し研究したら行けそうな気もする。そうだな【運命】が創った【機能】を解析させて貰えばとっかかりになりそうかな。
 一番の問題は『運命』神の伝手がないことか。
 なんにしろ成功例無しでこれ以上試すのはリスクしかない。いまは置いておく。

 一番行けそうな『凍結』までダメだったら凹むけど、これは無事にできた。ただこんなしょぼいのはいらない。
 〝太陽〟の権能を借りて創ったから、神力ろうりょくを使い過ぎていて、収支が赤字になる。

 でも一応成功、次のステップに進む。

 今度は『凍結』に手持ちの権能を混ぜて新たなものを創るのだ。
 簡単に思いつくのは反転前の〝炎〟と〝聖〟で創れる〝白炎〟だろう。連想元は『白炎』こと二姉さま。
 実は先ほど、だましすかしして、二姉さまから『白炎』の【機能】をせしめてきた。二姉さまを脳筋炎神だと思っていたのは遠い過去の話で、実際は一姉さまの最初の妹だけあって結構腹黒い。たぶんなにか感づいたと思う。
 まっ別に悪いことやってるわけじゃあないので、堂々とするけどね!

 『白炎』の【機能】は分解し解析にかける。ここでは『炎』と『聖』の混ざり具合や比率などを調べておく。

 よし実践だ。
 〝月〟の権能で太陽を写して〝炎〟の権能を反転されて『凍結』へ。それに〝聖〟を混ぜて……
 うぐっできね~!
 う~んこれは順番が悪いのかなぁ、反転するともう触れないのかも。

 〝炎〟に〝聖〟を混ぜ……
 いやどうやってあっちにわたしの〝聖〟を送るのさ。
 まず『炎』を持ち帰る。それに〝聖〟を付与……あれぇ? これも駄目なの?
 なんでだろう。どうやっても混ざらないんだけど。

 ん~
 ああ、わかった。これ出力が合ってないんだ。
 借りた〝炎〟とわたしの〝聖〟だと当然手持ちの方が強く……、ないだと!? ぐぬぬぬ。 太陽め小癪な!!

 仕方ない。〝聖〟も一緒に借りよう。
 えーっとあっちで〝炎〟と〝聖〟を混ぜて~よしできた。『白炎』の【機能】完成だ。月は〝写し〟か〝反転〟、このままでも使えるけれど、今回の試みはここからが本番。『白炎』を持ち帰って〝月〟で反転、属性をまるっと逆に。
 あれ『永久凍土』? 反転失敗したのかな。

 ……いや失敗してないわ、これでちゃんと出来てるみたいだ。まっ名前なんてどーでもいいのよ、問題は効果でしょ!
 えーとなになに。

 『この世界ではすべての生命が死に絶える』

 また邪神にしか売れないものを創ってしまったかも……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました! 裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。 ※2019年10月23日 完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...