俺のスパダリはギャップがすごい 〜いつも爽やかスパダリが豹変すると… 〜

葉月

文字の大きさ
54 / 217
第五弾

梓 ③

しおりを挟む
「お時間を取らせてしまい、すみませんでした。それでは失礼します」
玄関で見送る蓮と真司に梓は丁寧に頭を下げると帰っていった。

「蓮、素敵なお義母さんだったね」
「うん」
梓の事を褒められて、蓮も少し嬉しそうだった。
「でも、お義母さんが来られてるんだったら、そう言ってくれればよかったのに。じゃあもっと…」
「もっと早くに帰ってきたのに…だろ?」
蓮は真司の考えが分かっていたかのようだった。
「梓さんが自分が来ている事は真司に知らさないで欲しいって…真司の仕事の迷惑になりたくないって。もし会えなかったら、また来るって…でも一応真司には早く帰ってきてって伝えておきたくて…仕事中にごめん…」
「そうだったんだ。連絡ありがとう。俺も梓さんにきちんと会えて嬉しかったよ」

そういう気を使うところ、蓮と似てるな…
そんな梓さんが言うから大丈夫だ。
蓮のお父さんの事はお任せしよう。

「俺、梓さんが家に来るって聞いた時、別れなさいって言う話をされるんだと思ってた」
蓮の気持ちではないが、蓮の口から『別れ』と言う言葉が出ただけで、真司は胸が苦しくなった。
「でも、そうじゃなくて、父さんを説得するって言いにきてくれたんだな…家族に認められるって、こんなに嬉しいもんなんだな」
嬉しそうに微笑む蓮を見て、真司はギュッと抱きしめた。

蓮は一人でこんなに辛い思いを背負ってきたなんて…

「蓮…今まで、よく頑張ってきたね…」
「‼︎…うん…がんばった…」
真司が蓮の頭をポンポンと叩くと、蓮が真司の肩に顔をうずめた。




梓が二人の家を訪れてから、真司は仕事が立て込み、バタバタする日々を送っていた。

蓮は蓮で、大口の契約が取れた仕事が本格始動し始め、二人の時間はますます少なくなってきていた。

そんな中、真司は梓と蓮が言った言葉と笑顔が、ずっと心に引っかかっていた。

『子供の幸せを願わない親なんていませんよ』

『家族に認められるって、こんなに嬉しいもんなんだな』

あの二人の笑顔が忘れられない。
一人で頑張ってきた蓮に俺はなにが出来るんだろう…
俺も、あと一歩進むべきなんじゃないか…
これからの二人にとって大切な何か。
俺の出来ること…


「蓮、今いい?」
真司は書斎で仕事をしていた蓮に声を掛けた。
「ん?どうした?」
蓮はかけていたメガネを外し、微笑みながら真司の方に向き直した。
「あのさ…もし、蓮がよかったら、俺の母さんに会ってくれないか…?」
「え⁉︎」
蓮の笑顔が一瞬固まる。
「来週の日曜、姉さんの子供の誕生会があって、母さんがこっちまで出てくるんだ。だからその時に…」
「…」
「蓮は俺の恋人だって、大切な人だって知ってもらいたくて…」
「…」
蓮はしばらく黙り込んで、
「真司はそれでいいの?俺の事、友達じゃなくて…恋人だって紹介して…」
「もちろん‼︎」
「でも、俺、男だし…」
蓮が口籠る。
「俺は、蓮だからこそ、ちゃんと母さんに紹介したいんだ」
「……」
「でも、蓮が嫌だったら無理強いはしないよ」
真司は口籠ったままの蓮をそっと抱きしめる。
「…真司が本当にそれでいいなら…」
蓮も真司の背中に腕をまわた。
「蓮、ありがとう!」
真司は嬉しさのあまり蓮をより抱きしめたが、その時、蓮の腕が震えていたことに真司は気がついていなかった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

趣味で乳首開発をしたらなぜか同僚(男)が近づいてきました

ねこみ
BL
タイトルそのまんまです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

電車の男 同棲編

月世
BL
「電車の男」の続編。高校卒業から同棲生活にかけてのお話です。 ※「電車の男」「電車の男 番外編」を先にお読みください

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...