らぶこめ! 太陽のヒナタと影のエイジ

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第一話 太陽に照らされて目覚めるエイジ(7)

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 そして俺はそれだけじゃなく、漫画などで描かれる理想的なクラス委員らしく振舞うようにもした。

「おはよう」

 ある早朝、二番目に教室に入ってきた彼女に俺は挨拶をした。

「え? あ、おはよう」

 自分より早い人がいたのが意外だったのか、彼女は言葉を詰まらせてから挨拶を返した。
 俺は黒板消しをやっていた。
 当然、これはクラス委員の仕事じゃない。昨日の掃除当番か日直のどちらかがサボっていただけのことだ。
 だが、あとで先生から何か言われるのも面倒なのでついでにやっている、それだけのことだ。
 なんのついでなのかというと、それは、

「ずいぶん早いのね。影野くんも朝練?」

 彼女が言ったとおり、朝練のついでだ。
 そして俺が「ああ」と返すと、彼女は質問を重ねてきた。

「たしか、陸上部だっけ?」

 これにも俺は「ああ」と返した。
 いま思えばとても愛想の無い返事だ。
 だが、それでも彼女は会話を続けてくれた。

「短距離? それとも長距離?」

 俺は少し考えてから答えた。

「両方やってるけど、どちらかと聞かれたら長距離のほうかなあ。そっちのほうは良いタイムが出てる」

 これに彼女は「そうなんだ」と相槌を打った。
 それで会話は終わるように思えた。
 しかしそれが嫌だった俺は口を開いた。

「天野さんは弓道部だったよな?」

 彼女は「うん」と答えた。答えられなくても知っていたが。
 俺は会話を引き伸ばすために、同じような質問をぶつけた。

「そっちはどうなんだ? 俺は弓道のことはよくわからないけど、良い成績が残せそうか?」

 これに彼女は「まあまあかな」と答えた。
 その答えが嘘であることを俺は知っていた。
 去年は大会でなかなかの結果を出したと聞いたことがある。
 謙虚で彼女らしいなと、俺は思った。
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