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22,侮辱
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「ふ、ぐ…っ」
右手首をつかまれ、口を大きな手でふさがれ、壁に背を押しつけられる。男はもがく蓮をものともせず、その大きい身体と力で押さえ込む。
コイツ、強い…!
彼が王室護衛であったのは何年も前のはずだが、現役の蓮より戦闘能力も未だ格上のようだ。おそらく金眼保有者の血縁者で、今もその力を活かした仕事をしているのかもしれない。
「どのくらい仕込まれているか…楽しみだ」
「ぅ…!」
それでも、もう王室関係者ですらない者に犯されたくはない。蓮はいやらしく笑んで顔を寄せる男の胸元を、つかまれていない左手で押し、逃れようと身体をよじらせる。
「く…『身代わり』ふぜいが抵抗するな!!」
「!!ぐぅ、う…っ」
カッとなった男の膝蹴りが、蓮の無防備な腹にめり込む。重いそれに蓮は身体を折ることも膝をつくことも出来ず、上がってきた胃液を飲み込んで耐える。
「くわえていろ」
「あ、ぅ…」
男は震える蓮の口を押さえていた手を離すと、彼の上着をまくり上げてすそを噛ませる。助けを求める声を出させないためだ。
「離したら、もう一発入れてやる」
と、あらわになった腹に膝を当てて脅す。蓮は再び激痛に襲われる恐怖に、サァっと青ざめる。自分の上着をグッと噛み、従うしかなかった。
深夜のホテルの廊下に出る者はきっと少ない。ましてや、ここは部屋数の限られたスイートルームが占める階。人気のなさが今はうらめしい。
「あまり腫れていないな」
「う…っ」
男の手が引き締まった腹筋をなで上げ、胸を飾る小さな突起に触れる。
「ふっ…感度はいいようだ」
ビクッと反応する蓮をあざ笑い、突起をつまみ、引っ張る。反対側には舌をはわせてから吸い付く。
「ぅぐ…!」
蓮は痛みに身体を強ばらせ、わずかに感じてしまう快感にうめく。見知らぬ者に、性交目的で触れられることに慣れはしない。たまらなく怖くて、気持ち悪い。ジュルジュルと聞こえる音に目をギュッとつぶり、上着のすそを噛みしめる。
「嫌がっている割に、もう勃起ってきているぞ?」
「うぅーっ!」
スウェットの上から股に膝を当てられ、そこをグッと押される。そのまま硬い膝で、反応し始めているモノをもてあそぶようにぐりぐりとこすりつけられる。
「ん?イクのか。『身代わり』だろう?」
「う…!」
「この程度も我慢出来ないのか、淫乱が」
乳首をつぶされ、下半身のモノを押され、言葉で蔑まれる。耐え難い苦痛と、力で敵わない悔しさ。蓮は声も出せず、黒い瞳からポロポロと涙をあふれさせた。
「遅いな、レンの奴…」
クラウドはグラスを傾け、戻って来ない蓮を思う。自販機の場所まで行って帰ってくるのに、何分もかからないはずだ。
「…」
虫の知らせというものか、嫌な予感がする。カードキーをつかむと、部屋を飛び出した。
「たいして仕込まれていないな」
「んぅ、う…っ」
スウェットを膝下まで下着ごと下ろされ、男の太い指が2本、蓮の後孔をまさぐる。唾液で濡れただけの指はほとんど滑らず、ギチギチと内膜に引っかかり、痛くてたまらない。きつくすぼまるそこを、男は期待外れとばかりに指を開き、無理やり拡げる。
「ここは知っているか?」
「う、あぁっ!」
指先が中を探り、過敏なしこりを強く押される。急な刺激に蓮は声をあげてしまい、上着が口から離れる。
「チッ…離すなと言っただろうがっ」
「ぐっ!!ふうぅ…っ!」
男は舌打ちするとまた蓮の口を押さえ、腹に膝蹴りをくらわした。同じ場所への再びの激痛。蓮は涙を散らし、ブルブルと身体を震わせてうめく。
「『身代わり』は『身代わり』らしく、学習しろ」
「んぅ…」
貶めながら、また上着のすそをくわえさせようとした時
「レン…?」
「!」
蓮の名を呼ぶ声に男はハッとする。
「レンーっっ!!」
声の主、クラウドは自販機の陰で何者かに押さえ込まれているのが蓮だと気づき、かけ寄る。
「お前、何してやが…っえ…?」
その男を引きはがそうと手を伸ばすが、こちらを向いた彼を見て動きが止まる。
「はっ…なるほどな、お前か」
男もクラウドを見て何かを察し、あざ笑う。
「久しいな、クラウド」
「ふ、フブキ、さん…」
ふたりは同時期に王室護衛を勤めていた。高慢な先輩フブキと生意気な後輩クラウドはそりが合わず、クラウドはフブキに殺されかけたこともある。そのトラウマがよみがえり、クラウドは嫌な汗が吹き出る。
「お前も護衛は退職しただろう?城に残ったのか」
フブキは蓮を抱き寄せ、口も押さえたまま話し出す。蓮の涙と苦悶の表情、乱れた服、のぞく腹に浮かぶ青アザ。クラウドの揺れていた茶色い目が、その痛々しい姿をうつす。
「『身代わり』を連れて外泊とはずいぶん親しげだな。しかし、王室護衛の程度も落ちたものだ。格下のお前がこれを犯す権利をもらえたのか。どおりでろくに仕込まれていないはずだ」
「…さい」
べらべらと嘲笑され続け、クラウドは震える拳をギュッと握る。
「俺に3日も預ければ、完璧な色狂いに…」
「うるさいっっ!!」
そして、叫ぶと同時に床を蹴った。
「?!!」
それに構えるすきも与えず、蓮を奪って抱くとフブキの顔を思いきり殴った。彼は受け身すら取れずに床へ叩きつけられる。
「あんた何様だ?!王室護衛を侮辱するな!!レンはものじゃない!あんたには触る権利すらない!!こいつを泣かせて辱めたことを詫びろ!!」
9年前はフブキの攻撃に手も足も出なかったクラウドが、はるかに上回る覇気を高め、怒鳴る。たった一発の殴打で、フブキは立ち上がれないほど眼前が揺れていた。
「詫びないなら、死ぬまで殴ってやる…!!」
「…っ」
さらに高まる覇気にゾッとする。怒りでクラウドの表情は歪み、鋭い目つきが狂気を帯びる。
「…クラウド」
腕の中の蓮が弱々しく名を呼び、クラウドはハッとする。
「レン…」
「も、いい…嫌だ…」
蓮はフルフルと身体を震わせ、クラウドの胸元にすがる。この男が何だろうとどうでもいい。早く離れて、苦痛と恐怖から解放されたかった。
「…チッ」
クラウドは舌打ちすると、蓮を抱き上げて背を向ける。倒れたままのフブキを見もせずに、廊下を引き返して行った。
「まさか、追い抜かれていたとはな…」
フブキはまだ揺れている天井を見つめ、つぶやいた。
「嫌、やだ…!クラウド…!」
「うるさい」
部屋に戻るなり、クラウドは蓮をソファーへ押し倒した。嫌がる蓮にかまわずのしかかり、スウェットを下着ごと脱がして上着をまくり上げる。
「あっ?!」
膝裏を持って胸まで押し上げると、取り出した猛るモノを後孔に当てる。
「い、あ、いぃ…!」
ろくに濡れてもいなければ、慣らされてもいないそこに、熱く硬いモノが無理やりねじ込まれていく。痛くて苦しくて、蓮は呼吸もまともに出来ずにうめく。
「あぐぅ、う…っ」
肌がつくまで押し込まれ、裂けるのではないかと思うほどギチギチと粘膜が引きつる。苦痛で潤む目を見開き、身体がブルブル痙攣する。行き場のない手がソファーに爪を立てた。
「はぁ、は…っ」
「ぐっ…う!あ、う…っ!」
明るく豪華なスイートルームに響く、ソファーがきしむ音と、クラウドの規則的な息遣い。蓮の苦しげなあえぐ声。
蓮はクラウドに痛いほど肩を押さえられ、力任せに下半身を叩きつけられていた。何度か精を中に吐き出され、ようやく滑りの良くなった内壁はもう感覚がない。果てを知らないクラウドに対し、蓮のモノは萎えたままだった。
「ん…ぅ…っ!」
蓮が見上げても、こちらを見ているはずのクラウドと目が合わない。いつもの彼は鋭い目を愛しげに細めて見つめ、蓮の身体を最大限にいたわり、気持ち良さを何より優先させた優しいセックスをしてくれる。だから、恋人だ何だとうっとうしい彼とのセックスは嫌いではなかった。
「…っふ、うぅ…」
なのに今は、優しいキスも、愛の言葉もなく、欲をぶつけられるだけ。身体の苦痛よりも心が痛い。蓮は泣き叫びたいのをこらえ、黒い瞳からあふれた涙がほほを伝った。
クラウドはソファーの前であぐらをかき、テーブルに顔を伏せていた。ゴツゴツ音がするほど、テーブルに額を打ちつける。
「…」
背後のソファーには気絶させた蓮が横たわっている。身体中にアザ、下半身はクラウドが吐き出したもので汚れ、目を泣き腫らし、ほほにはいく筋も涙の跡が残っている。
「クソぉ…」
二度と会いたくなかった、かつての憎らしい先輩に蓮をもてあそばれ、侮辱された。頭の中が真っ白になった。殴り倒したくらいでは発散しきれなかった怒りを、行き場のない熱さを、気づくと蓮にぶつけていた。
欠点だと言われ続けていた、怒りで頭に血がのぼると周りが見えなくなるほど激高する性格。護衛を退職し、少しはマシになったと思っていたのに。9年前の、フブキに殺されかけた頃の血の気が多いだけの自分と何も変わっていなかった。
不甲斐なくて情けなくて、自分を許せなくて。唇を噛みしめ、いっそう強く額を打ちつけた。
右手首をつかまれ、口を大きな手でふさがれ、壁に背を押しつけられる。男はもがく蓮をものともせず、その大きい身体と力で押さえ込む。
コイツ、強い…!
彼が王室護衛であったのは何年も前のはずだが、現役の蓮より戦闘能力も未だ格上のようだ。おそらく金眼保有者の血縁者で、今もその力を活かした仕事をしているのかもしれない。
「どのくらい仕込まれているか…楽しみだ」
「ぅ…!」
それでも、もう王室関係者ですらない者に犯されたくはない。蓮はいやらしく笑んで顔を寄せる男の胸元を、つかまれていない左手で押し、逃れようと身体をよじらせる。
「く…『身代わり』ふぜいが抵抗するな!!」
「!!ぐぅ、う…っ」
カッとなった男の膝蹴りが、蓮の無防備な腹にめり込む。重いそれに蓮は身体を折ることも膝をつくことも出来ず、上がってきた胃液を飲み込んで耐える。
「くわえていろ」
「あ、ぅ…」
男は震える蓮の口を押さえていた手を離すと、彼の上着をまくり上げてすそを噛ませる。助けを求める声を出させないためだ。
「離したら、もう一発入れてやる」
と、あらわになった腹に膝を当てて脅す。蓮は再び激痛に襲われる恐怖に、サァっと青ざめる。自分の上着をグッと噛み、従うしかなかった。
深夜のホテルの廊下に出る者はきっと少ない。ましてや、ここは部屋数の限られたスイートルームが占める階。人気のなさが今はうらめしい。
「あまり腫れていないな」
「う…っ」
男の手が引き締まった腹筋をなで上げ、胸を飾る小さな突起に触れる。
「ふっ…感度はいいようだ」
ビクッと反応する蓮をあざ笑い、突起をつまみ、引っ張る。反対側には舌をはわせてから吸い付く。
「ぅぐ…!」
蓮は痛みに身体を強ばらせ、わずかに感じてしまう快感にうめく。見知らぬ者に、性交目的で触れられることに慣れはしない。たまらなく怖くて、気持ち悪い。ジュルジュルと聞こえる音に目をギュッとつぶり、上着のすそを噛みしめる。
「嫌がっている割に、もう勃起ってきているぞ?」
「うぅーっ!」
スウェットの上から股に膝を当てられ、そこをグッと押される。そのまま硬い膝で、反応し始めているモノをもてあそぶようにぐりぐりとこすりつけられる。
「ん?イクのか。『身代わり』だろう?」
「う…!」
「この程度も我慢出来ないのか、淫乱が」
乳首をつぶされ、下半身のモノを押され、言葉で蔑まれる。耐え難い苦痛と、力で敵わない悔しさ。蓮は声も出せず、黒い瞳からポロポロと涙をあふれさせた。
「遅いな、レンの奴…」
クラウドはグラスを傾け、戻って来ない蓮を思う。自販機の場所まで行って帰ってくるのに、何分もかからないはずだ。
「…」
虫の知らせというものか、嫌な予感がする。カードキーをつかむと、部屋を飛び出した。
「たいして仕込まれていないな」
「んぅ、う…っ」
スウェットを膝下まで下着ごと下ろされ、男の太い指が2本、蓮の後孔をまさぐる。唾液で濡れただけの指はほとんど滑らず、ギチギチと内膜に引っかかり、痛くてたまらない。きつくすぼまるそこを、男は期待外れとばかりに指を開き、無理やり拡げる。
「ここは知っているか?」
「う、あぁっ!」
指先が中を探り、過敏なしこりを強く押される。急な刺激に蓮は声をあげてしまい、上着が口から離れる。
「チッ…離すなと言っただろうがっ」
「ぐっ!!ふうぅ…っ!」
男は舌打ちするとまた蓮の口を押さえ、腹に膝蹴りをくらわした。同じ場所への再びの激痛。蓮は涙を散らし、ブルブルと身体を震わせてうめく。
「『身代わり』は『身代わり』らしく、学習しろ」
「んぅ…」
貶めながら、また上着のすそをくわえさせようとした時
「レン…?」
「!」
蓮の名を呼ぶ声に男はハッとする。
「レンーっっ!!」
声の主、クラウドは自販機の陰で何者かに押さえ込まれているのが蓮だと気づき、かけ寄る。
「お前、何してやが…っえ…?」
その男を引きはがそうと手を伸ばすが、こちらを向いた彼を見て動きが止まる。
「はっ…なるほどな、お前か」
男もクラウドを見て何かを察し、あざ笑う。
「久しいな、クラウド」
「ふ、フブキ、さん…」
ふたりは同時期に王室護衛を勤めていた。高慢な先輩フブキと生意気な後輩クラウドはそりが合わず、クラウドはフブキに殺されかけたこともある。そのトラウマがよみがえり、クラウドは嫌な汗が吹き出る。
「お前も護衛は退職しただろう?城に残ったのか」
フブキは蓮を抱き寄せ、口も押さえたまま話し出す。蓮の涙と苦悶の表情、乱れた服、のぞく腹に浮かぶ青アザ。クラウドの揺れていた茶色い目が、その痛々しい姿をうつす。
「『身代わり』を連れて外泊とはずいぶん親しげだな。しかし、王室護衛の程度も落ちたものだ。格下のお前がこれを犯す権利をもらえたのか。どおりでろくに仕込まれていないはずだ」
「…さい」
べらべらと嘲笑され続け、クラウドは震える拳をギュッと握る。
「俺に3日も預ければ、完璧な色狂いに…」
「うるさいっっ!!」
そして、叫ぶと同時に床を蹴った。
「?!!」
それに構えるすきも与えず、蓮を奪って抱くとフブキの顔を思いきり殴った。彼は受け身すら取れずに床へ叩きつけられる。
「あんた何様だ?!王室護衛を侮辱するな!!レンはものじゃない!あんたには触る権利すらない!!こいつを泣かせて辱めたことを詫びろ!!」
9年前はフブキの攻撃に手も足も出なかったクラウドが、はるかに上回る覇気を高め、怒鳴る。たった一発の殴打で、フブキは立ち上がれないほど眼前が揺れていた。
「詫びないなら、死ぬまで殴ってやる…!!」
「…っ」
さらに高まる覇気にゾッとする。怒りでクラウドの表情は歪み、鋭い目つきが狂気を帯びる。
「…クラウド」
腕の中の蓮が弱々しく名を呼び、クラウドはハッとする。
「レン…」
「も、いい…嫌だ…」
蓮はフルフルと身体を震わせ、クラウドの胸元にすがる。この男が何だろうとどうでもいい。早く離れて、苦痛と恐怖から解放されたかった。
「…チッ」
クラウドは舌打ちすると、蓮を抱き上げて背を向ける。倒れたままのフブキを見もせずに、廊下を引き返して行った。
「まさか、追い抜かれていたとはな…」
フブキはまだ揺れている天井を見つめ、つぶやいた。
「嫌、やだ…!クラウド…!」
「うるさい」
部屋に戻るなり、クラウドは蓮をソファーへ押し倒した。嫌がる蓮にかまわずのしかかり、スウェットを下着ごと脱がして上着をまくり上げる。
「あっ?!」
膝裏を持って胸まで押し上げると、取り出した猛るモノを後孔に当てる。
「い、あ、いぃ…!」
ろくに濡れてもいなければ、慣らされてもいないそこに、熱く硬いモノが無理やりねじ込まれていく。痛くて苦しくて、蓮は呼吸もまともに出来ずにうめく。
「あぐぅ、う…っ」
肌がつくまで押し込まれ、裂けるのではないかと思うほどギチギチと粘膜が引きつる。苦痛で潤む目を見開き、身体がブルブル痙攣する。行き場のない手がソファーに爪を立てた。
「はぁ、は…っ」
「ぐっ…う!あ、う…っ!」
明るく豪華なスイートルームに響く、ソファーがきしむ音と、クラウドの規則的な息遣い。蓮の苦しげなあえぐ声。
蓮はクラウドに痛いほど肩を押さえられ、力任せに下半身を叩きつけられていた。何度か精を中に吐き出され、ようやく滑りの良くなった内壁はもう感覚がない。果てを知らないクラウドに対し、蓮のモノは萎えたままだった。
「ん…ぅ…っ!」
蓮が見上げても、こちらを見ているはずのクラウドと目が合わない。いつもの彼は鋭い目を愛しげに細めて見つめ、蓮の身体を最大限にいたわり、気持ち良さを何より優先させた優しいセックスをしてくれる。だから、恋人だ何だとうっとうしい彼とのセックスは嫌いではなかった。
「…っふ、うぅ…」
なのに今は、優しいキスも、愛の言葉もなく、欲をぶつけられるだけ。身体の苦痛よりも心が痛い。蓮は泣き叫びたいのをこらえ、黒い瞳からあふれた涙がほほを伝った。
クラウドはソファーの前であぐらをかき、テーブルに顔を伏せていた。ゴツゴツ音がするほど、テーブルに額を打ちつける。
「…」
背後のソファーには気絶させた蓮が横たわっている。身体中にアザ、下半身はクラウドが吐き出したもので汚れ、目を泣き腫らし、ほほにはいく筋も涙の跡が残っている。
「クソぉ…」
二度と会いたくなかった、かつての憎らしい先輩に蓮をもてあそばれ、侮辱された。頭の中が真っ白になった。殴り倒したくらいでは発散しきれなかった怒りを、行き場のない熱さを、気づくと蓮にぶつけていた。
欠点だと言われ続けていた、怒りで頭に血がのぼると周りが見えなくなるほど激高する性格。護衛を退職し、少しはマシになったと思っていたのに。9年前の、フブキに殺されかけた頃の血の気が多いだけの自分と何も変わっていなかった。
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