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五
84話 あの日の答え合わせとこれからのコト
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ベットで僕を抱きしめがら携帯電話で動画を見ていた鮫島の腕を軽く引いた。僕に気付き画面を閉じて「どうかしたか?」と聞いた鮫島に僕はポツリと質問した。
「鮫島は......要くんはあの時みたいに本来は女性しか抱かなかったの?...それともやっぱりどっちも経験あった?」
真面目な顔をして聞く慶の顔を見て鮫島は思わず笑い声を上げた。
「俺がセックス中にあんな事を言うから君も俺と同じようにあの時の出来事を思い出しちゃったか。嫌な事を思い出させて申し訳ない。......まぁ、そうだね。うん。今までに数人、女性は相手したことはあったよ。同性は君を入れて二人かな。」
そう言われた僕は、少し考えた後で思い出したように「芝野さん!」と言った。
「あぁ、君と彼だけだな。女性に関しては別に気持ちがあったわけじゃない。ただ交際をしていて相手に求められたから相手をしただけ、それだけのことだ。」
「......じゃあ今まで、好きで抱いたりした人はいないってこと?」
「...そもそも人を好きになることがなかったからな。幼い頃に恋愛感情を抱いたその相手以外に気持ちが揺れることなんて一度もなかったよ。」
遠回しに本命の相手の事を口に出されなんとも言えない気持ちになっている僕が言葉の意味を理解していないと悟ると、鮫島はクスッと笑って「慶くんのことだよ。」と優しい声で言った。
その何気ない鮫島の言葉で僕は気付かされた。
僕の中で絶対譲りたくないモノ___。
......それは間違いなく鮫島だ。周りが認めてくれている「ピアノ」は自分にとっての“処方箋”だ。それがあれば僕はもう少し生きていていいと思わせてくれる。しかし処方箋があっても肝心な“薬”が無くては全く持って意味を見出さない。その薬こそが鮫島だ。彼がいなければきっと僕はもっと早くにこの身を天に差し出していたと思う。
...彼がほしい。彼に求められたい。
彼だけは僕自身を離さないでほしい。
上の空なのか何度名前を問いかけても反応をしない。よくあることだ。
きっと俺が言ったことでまた少々考え込ませてしまったのだろう。申し訳ない。
困らせる気はなかったのだけれど、つい過去の話をするとどうも君に悪態を多くつけていた自分のことがコンプレックスに感じて余計な言葉まで吐いてしまう。
その度に君に感じる心情を鮮明に汲み取ろうと余計な感情ばかりが浮かんでしまう。
今だって君の気持ちを無視してでも君を欲しいと貪欲に君を欲してしまっているのだから...。
無言で黙り込む慶を静かに鮫島が見ていると慶は声を震わせながら口を開いた。
「......僕は...僕は、どうしたらいいのかな。どうしたら要くんと居られる...?もう来年から、僕は要くんにとって必要ない......?」
押し殺すように吐かれたその言葉に鮫島は驚嘆した。そしてすぐに慶を力強く抱きしめると大きく首を横に振った。
「そんなわけない。俺はこんなに執着の激しい男だ。そんな人間が海外に行くからと言う理由で君を手放すなんて馬鹿げたことするはずがないだろう。」
「でっ、でも居ない間芝野さんに世話をしてもらうって...。」
「それは君が俺の提案を拒んだ場合の話だ。」
「......え?」
大きな声で話す慶負けじと鮫島も言い返すと慶は驚いて口を開けたままぽかんと鮫島を見た。そんな表情を見た鮫島は、慶の頭を撫で優しく抱きしめた。
「......一緒に来て欲しい、イギリスに。生活も文化も違うから君には負担をかけるかもしれないがそれでも俺は来て欲しいと思っているよ。衣食住はもちろん、仕事も...全てできることは俺の方で手配する。できる限り君を一人でしないようにも努めよう。だからお願いだから俺自身の自分勝手な申し出だと思ってついて来てくれないか?」
一瞬時が止まったかように静まり返ると、しばらくして慶は涙を流した。その慶の涙が何によるものなのかがはっきりせず鮫島が困っていると、慶は鮫島の首に両手を回した。
「...一緒に行ってもいいの...?本当...?迷惑じゃない?仕事の妨げにはならないように努力する...一緒に居れるの嬉しい。」
声だけでもわかる慶のプラスの反応に安心して鮫島は笑みを浮かべると慶の背中を摩った。
「当たり前だろう。むしろ君が来てくれないとどうしているか心配で心配で...仕事どころじゃ無くなってしまうよ。言葉が悪く聞こえてしまったら申し訳ないが、正直、就職を頑張っている君にこの事を言い出すのが気が引けて迷っていたんだ。もし内定を貰えたらその時は諦めようと思っていた。君の決めた人生を優先して欲しいと思っているからね。でもやはり最後は欲が勝ってしまったよ。是が非でもどうにかして君を連れていく方法を、と考えていたくらいなんだから。」
冗談混じりに話す鮫島に泣きながら笑い返すと慶は「本当にありがとう、この旅行もこれからのことも。」と言葉付け足した。
そしてもうすぐ日が昇ると言う頃、僕らは真新しい綺麗な一枚の布団で二人で抱き合うようにして眠った。
朝食は八時。その時刻まだあと数時間はある。
それまでの時間はもう少しだけこうして、貴方の温もりの中で僕は身体を休めたいとそう思った。
「鮫島は......要くんはあの時みたいに本来は女性しか抱かなかったの?...それともやっぱりどっちも経験あった?」
真面目な顔をして聞く慶の顔を見て鮫島は思わず笑い声を上げた。
「俺がセックス中にあんな事を言うから君も俺と同じようにあの時の出来事を思い出しちゃったか。嫌な事を思い出させて申し訳ない。......まぁ、そうだね。うん。今までに数人、女性は相手したことはあったよ。同性は君を入れて二人かな。」
そう言われた僕は、少し考えた後で思い出したように「芝野さん!」と言った。
「あぁ、君と彼だけだな。女性に関しては別に気持ちがあったわけじゃない。ただ交際をしていて相手に求められたから相手をしただけ、それだけのことだ。」
「......じゃあ今まで、好きで抱いたりした人はいないってこと?」
「...そもそも人を好きになることがなかったからな。幼い頃に恋愛感情を抱いたその相手以外に気持ちが揺れることなんて一度もなかったよ。」
遠回しに本命の相手の事を口に出されなんとも言えない気持ちになっている僕が言葉の意味を理解していないと悟ると、鮫島はクスッと笑って「慶くんのことだよ。」と優しい声で言った。
その何気ない鮫島の言葉で僕は気付かされた。
僕の中で絶対譲りたくないモノ___。
......それは間違いなく鮫島だ。周りが認めてくれている「ピアノ」は自分にとっての“処方箋”だ。それがあれば僕はもう少し生きていていいと思わせてくれる。しかし処方箋があっても肝心な“薬”が無くては全く持って意味を見出さない。その薬こそが鮫島だ。彼がいなければきっと僕はもっと早くにこの身を天に差し出していたと思う。
...彼がほしい。彼に求められたい。
彼だけは僕自身を離さないでほしい。
上の空なのか何度名前を問いかけても反応をしない。よくあることだ。
きっと俺が言ったことでまた少々考え込ませてしまったのだろう。申し訳ない。
困らせる気はなかったのだけれど、つい過去の話をするとどうも君に悪態を多くつけていた自分のことがコンプレックスに感じて余計な言葉まで吐いてしまう。
その度に君に感じる心情を鮮明に汲み取ろうと余計な感情ばかりが浮かんでしまう。
今だって君の気持ちを無視してでも君を欲しいと貪欲に君を欲してしまっているのだから...。
無言で黙り込む慶を静かに鮫島が見ていると慶は声を震わせながら口を開いた。
「......僕は...僕は、どうしたらいいのかな。どうしたら要くんと居られる...?もう来年から、僕は要くんにとって必要ない......?」
押し殺すように吐かれたその言葉に鮫島は驚嘆した。そしてすぐに慶を力強く抱きしめると大きく首を横に振った。
「そんなわけない。俺はこんなに執着の激しい男だ。そんな人間が海外に行くからと言う理由で君を手放すなんて馬鹿げたことするはずがないだろう。」
「でっ、でも居ない間芝野さんに世話をしてもらうって...。」
「それは君が俺の提案を拒んだ場合の話だ。」
「......え?」
大きな声で話す慶負けじと鮫島も言い返すと慶は驚いて口を開けたままぽかんと鮫島を見た。そんな表情を見た鮫島は、慶の頭を撫で優しく抱きしめた。
「......一緒に来て欲しい、イギリスに。生活も文化も違うから君には負担をかけるかもしれないがそれでも俺は来て欲しいと思っているよ。衣食住はもちろん、仕事も...全てできることは俺の方で手配する。できる限り君を一人でしないようにも努めよう。だからお願いだから俺自身の自分勝手な申し出だと思ってついて来てくれないか?」
一瞬時が止まったかように静まり返ると、しばらくして慶は涙を流した。その慶の涙が何によるものなのかがはっきりせず鮫島が困っていると、慶は鮫島の首に両手を回した。
「...一緒に行ってもいいの...?本当...?迷惑じゃない?仕事の妨げにはならないように努力する...一緒に居れるの嬉しい。」
声だけでもわかる慶のプラスの反応に安心して鮫島は笑みを浮かべると慶の背中を摩った。
「当たり前だろう。むしろ君が来てくれないとどうしているか心配で心配で...仕事どころじゃ無くなってしまうよ。言葉が悪く聞こえてしまったら申し訳ないが、正直、就職を頑張っている君にこの事を言い出すのが気が引けて迷っていたんだ。もし内定を貰えたらその時は諦めようと思っていた。君の決めた人生を優先して欲しいと思っているからね。でもやはり最後は欲が勝ってしまったよ。是が非でもどうにかして君を連れていく方法を、と考えていたくらいなんだから。」
冗談混じりに話す鮫島に泣きながら笑い返すと慶は「本当にありがとう、この旅行もこれからのことも。」と言葉付け足した。
そしてもうすぐ日が昇ると言う頃、僕らは真新しい綺麗な一枚の布団で二人で抱き合うようにして眠った。
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