我が子と間違われて拐われた孤児と、病んでる公爵

51◆ルーナ視点

あれから、赤ちゃんを産むまであっという間に月日が過ぎた。

ずっとダクラスが一緒にいてくれて、特に悪阻もなくて、産む時ですらスルン♪と産まれたよ。

「うぅ…えぐえぐ……ルーナ……っ…ありがとう……ありがとう………っ！！」

ダクラスが、号泣しながら赤ちゃんを抱っこしていて、僕も嬉しくて号泣しちゃったよ！

赤ちゃんの名前は、アイリス。

可愛いダクラス似の女の子だったよ！

「アイリス、無事に産まれてくれてありがとう！」

僕もアイリスを抱っこしたいけど、まだ体力的に今は無理っぽいから、明日抱っこさせてね？

僕たちの可愛いアイリス。




アイリスはすくすく成長した5歳のある日。

「ママ！パパ！アイは旅にでまちゅ！ちぇかいのどこかにいるアイの王子しゃまをたすけりゅのでしゅ！！」

子供向け絵本の『囚われの王子様』にハマっているアイリスは、瞳を輝かせながらそう言った。

『囚われの王子様』の内容は、世界のどこかに囚われの王子様がいて、ある国のお姫様が旅に出て、王子様を救うお話。

アイリスはこの絵本が大好きなんだよね！

「アイリス、シアンがね、今日はイチゴのタルトだって言っていたけど………旅に出たら食べられないね。ママもパパも、アイリスと一緒に食べたかったな………」

「えっ！？イチゴタルト！！」

アイリスはイチゴが大好きだから、とても素早く反応した。

ふふ、可愛い。

「アイリス、旅は今度にして、パパたちと遊んでほしいな」

ダクラスがアイリスを抱っこすると、アイリスはさっきの旅云々の話を忘れたのか、イチゴタルトの話で夢中みたいだ。

「イチゴタルト……シアンのイチゴタルト……ジュルリ」

「あ……」

アイリスが垂らしたヨダレは、見事にダクラスの肩に着地した。

僕はクスクス笑いながら、ハンカチでアイリスのヨダレを綺麗にしてあげる。



まだ子供だった時。

スラムの孤児だった時には、きっと想像できなかった未来だ。

あの頃の僕に教えてあげたい。

「未来の僕は、すごくすごく幸せだよ」



完

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読んでくれてありがとうございました！

ここで、ダクラス×ルーナ編が終わりとなります。

次回から、テオドール×パルマ編がスタートします。

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