飼い主と猫の淫らな遊び

徒然

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飼い主と猫の新しい日常

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「お疲れ様でした!お先に失礼します!」
 定時を少し過ぎた頃、樹は今日片付けようと考えていた仕事が終わった。上司も同僚も、驚きに目を丸めているのも気に留めず、鞄を抱えてトイレに向かう。
 ――とりあえずチョーカーだけでも。
 流石に職場でディルドを入れる気になれず、個室に入って鈴を外したチョーカーを首に添わせて留める。洗面台の鏡で確認すると、意外とワイシャツで隠れていて、安心したような残念なような、不思議な気持ちがした。
 社屋を後にしてしまうと、後孔が切なく疼き始めた。
 ――これだけ頑張ったんだから、もういいよね?
 目に付いたデパートに入り、迷いのない足取りでトイレに向かう。その個室には着替えに使える、折りたたみ式の大き目の板と鏡が設置されていた。
 ごくり、と樹の喉が鳴る。颯真に知られたらきっと、「鏡を見ながら入れなさい」と言うだろう。そう考えた樹は、靴を脱いでそこに上がる。
 スーツの上着を脱ぐと、スラックスの前が押し上げられていた。
 ――俺は、こんな姿で仕事を……。
 ベルトを外し、スラックスを下着ごとずり下ろすと、勢いよく跳ね返る縛られたままのペニス。熱に浮かされた目でワイシャツを脱ぎ、チョーカーに鈴を付けた。
「っは、ぅ……」
 鈴の音がよく聞こえるのは、颯真のペニスに後孔を抉られる時で。軽やかに鳴るのは、颯馬に悪戯をされているときだった。
 後孔が疼く。樹は鞄から黒い箱を取り出し、中からディルドと、ローション入りの小瓶を取り出した。
「颯真、さん……っ」
 颯真のペニスにするようにディルドを深く咥える。片手を壁について身体を支え、ローションで濡れる指を後孔に差し込んだ。
『いい顔をして咥えるね』
 鏡の中の自分と目が合う。うっとりとディルドを咥え、ペニスからだらだらと雫を垂らしながら、後孔に指を差し込んで。羞恥のあまり首を振ると、鈴が激しく鳴り、後孔は指を食い締める。
 ――っだめ、また――っ!
 中でイった身体から力が抜け、樹はその場に膝を付いた。
 そのまま、くちくちと音を立てながら後孔を解す。
『樹が猫になるところ、見せて』
 颯真の台詞を追いかけながら、ディルドを口から引っ張り出す。鏡に映る顔は欲に溶けていて、口の端から唾液を垂らしていた。
 ――俺、こんな顔で……。
 くぷりとディルドの先端が後孔に埋まる。鈴を鳴らしながらそれを深く埋めると、身体が痙攣するように震えた。
「ほ、うこく……しなきゃ」
 緩く括ったはずの革紐がペニスに食い込み、吐精を伴わないままイくのに慣れた身体がふるふると震える。服を整えるためにゆっくり立ち上がれば、ディルドが中をぐりっと抉った。
「ぁ、っ……く!!」
 拳を口に当て、壁に縋るように手を付き。鏡に映る淫らな姿に、樹はまたイかされた。

◇◆◇◆◇

 仕事を終えた颯真が車を走らせていると、自宅付近でメッセージを着信した。玄関の鍵を開けながらスマホを確認する。
『お疲れ様です。今日は仕事が捗って、あまり残業せずに帰れました』
 普段は大分残業しているという事だったから、今日は本当に頑張ったのだろう、と颯真が微笑む。
「お疲れ様。仕事、かなり頑張ったみたいだね。もう帰宅できた?」
 返信しつつスーツを脱ぎ、ネクタイを緩める。ワイシャツのボタンを幾つか外せば見える、無数のキスマーク。
『ありがとうございます。今電車の中です。それで、えっと』
 躊躇う様子の樹に首を傾げながらベルトを緩める。とりあえず部屋着に着替えようかと寝室に向かう頃、再び着信があった。
『ディルド入れる時に、二回イってしまいました。ごめんなさい』
 ふは、と颯真が息を吐く。
 ――まさか本当に、律儀に報告してくるなんて。……って、あれ?
 落ち着いてメッセージを見返す。
 ――電車の中なのにもうディルドを入れていて、その時にイった……?
 いまいち状況が掴めない颯真はベッドに腰掛け、少し考えた後にやりと笑む。

『電車の中なのに、もう俺の入ってるんだ?どこで、どうやって入れたのか、どんな風にイったのか、詳しく教えてくれる?』
 颯真からのメッセージに、樹の顔が真っ赤に染まる。
 ――こんな、外で……?
 帰宅ラッシュという程の混雑のない路線。立っている人は疎らではあるけれど。
 戸惑う樹の、スマホが震える。
『ね、樹。職場までディルドを持って行ったの?』
 樹は思わず、周囲を窺った。誰も見ていないことに息を吐き、それでも後ろめたくて鞄の陰にスマホを隠す。

『はい。鞄に入れて持っていって、駅の近くのデパートのトイレで入れてきました』
 颯真は部屋着に着替えた後、飲んでいた水を吹き出しかけた。飲み込み損ねて噎せる呼吸を落ち着けながら、口元を拭った。
 ――デパートで、ねぇ。
『あ。チョーカーは職場を出る時に付けたんです。鈴はデパートで付けましたけど』
 ――真面目と言うか、従順と言うべきなのか。
 どんな顔で電車に乗っているのやらと、颯真が心配していることなど、樹は知る由もなかった。

『デパートのトイレ、俺のを入れるには狭くなかった?』
 颯真は面白がってか、ディルドと言わずにペニスを連想させる言葉を選んでいる。
「……っ!」
 返信していると不意に電車が揺れ、樹の後孔が刺激される。視線を走らせ、見られていないことを確かめていると、車内に到着駅のアナウンスが流れる。
 ――降りなきゃ。
 ドアが開く。スマホをポケットに仕舞い、颯真とのやり取りで勃ち上がったペニスを鞄で隠しながら、駅に降り立った。

『着替え用のボードがある場所だったので、そこを使わせて貰いました。最近のトイレって、個室の中に鏡まであるんですね。驚きました。』
 夕食の支度をしながら、颯真はほう、と呟く。
 ――これは、後で是非追及したいな。
 くくく、と喉の奥で笑いながら、夜に通話できるかと、樹にメッセージを送った。

◇◆◇◆◇

 樹が帰宅した頃には、後孔を刺激し続けるディルドに息が乱れていた。歩く度に鈴が小さく鳴り、ペニスの先が下着に擦れる。甘い責め苦が続く状況に、ソファに倒れ込んだ。
『そうなんだね。ね、樹。今日も通話して良いか?』
 颯真に訊ねられ、身体が反応する。
 ――通話なんてしたら、きっと、今日も……。
 乱れに乱れた昨日を思い返し、樹の顔が赤く染まる。
 ――声が聴けたら姿を見たくなる。姿を見たら、触れたくなる。のに。
 会えなくとも、昨日のように擬似的にセックスすることは可能なのだ。それを期待する浅ましい身体と心。
 ――それでもやっぱり、声だけでも聴きたい。

『夕食だけ先に済ませてしまいますね。一時間後なら多分大丈夫です』
 樹からの返信に、颯真の顔が綻んだ。そして、デパートでの件を詳しく説明してもらおうとほくそ笑む。
「一時間か。風呂は……多分、通話後のがいいだろうな」
 了承した旨の返信を済ませ、軽くシャワーで汗を流すことにした。
 部屋着を脱ぎ、浴室に入る。真正面の鏡に映る颯真は、既に欲にぎらついた目をしていた。身体の中心で反り返るペニスと、臙脂色の革紐。今日、何度吐精を耐えたか分からないそれは、先端をしとどに濡らして期待に震えていた。

◇◆◇◆◇

「ご馳走様でした。シャワーは……後でいいかな」
 食事を終えた樹は、片付けもそこそこにスマホを摂 手にする。いつでも大丈夫だとメッセージを送ると、すぐに着信音が鳴った。
「颯真さん、お疲れ様です」
 慌てた樹は仕事のような応対をしてしまい、颯真が吹き出すのが聴こえた。
『うん、樹もお疲れ様。連絡ありがとうね』
 穏やかに返され、樹も小さく頷いた。それから暫く、和やかに雑談を楽しんだ。樹が笑うと、首元の鈴が小さく鳴る。
『ね、樹。カメラに切り替えてくれる?』
 雑談の続きのような軽さで請われた樹は、イヤホンを付けてビデオ通話に切替える。何となく手を振ると、颯真の姿もすぐに画面に表示された。
 二人ともゆるっとした部屋着で、首筋もチョーカーもよく見える。
『ありがとう。そう言えば樹は、何も訊かれなかった?』
 颯真が自分の首筋を指して見せると、樹の頬が染まる。
「あぁ……、同期に訊かれました。ちゃんと飼い主恋人からだって、説明しましたよ」
 照れたようにはにかむ樹に、颯真は嬉しげな笑みを浮かべる。
「そういう颯真さんは……、隙が無さそうですよね」
 何となく、巧みに隠してしまえそうだから、と樹が苦笑すると、颯真の笑みが深くなる。
『そうでもないよ?俺も訊かれたし、ちゃんと答えたから』

 ――半ば、わざと知らせたようなものだけど。
 瞠目して絶句する樹を見ながら、颯真はくすくすと笑う。そして、隠そうと思えばいくらでも隠せただろう、と頷く。
「だって、隠す気も無かったし」
 意外だと呟く樹にそう言えば、樹の顔が真っ赤に染まる。それが颯真には何とも愛しくて、もっと見たいと思ってしまった。
「俺には可愛い恋人がいて、俺はその猫からのおねだりには滅法弱くて」
 画面越しの樹が、恥ずかしげに視線を彷徨わせる。それを見つめたまま、颯真は優しく目を眇めた。
「見えるところにキスマークを請われても、見えない場所に印を付けられても、俺は拒む気になれないからね?」
 甘く甘く囁けば、樹がふるりと震える。
 ――こんなに淫らになって。……本当にもう、手放せないな。
 颯真はゆったりと脚を組み替えるついでに、反り立つペニスに軽く指を這わせた。そこに絡みつく臙脂色の印を思い起こさせるために。
『っ、俺、だって。颯真さんが求めてくれるなら、もう……拒めないと、思います』
うっとりと呟いた樹に、颯真はそうか、と微笑んだ。

『まあ、俺が樹に付けている印の方が多いからね』
  画面に映る颯真の視線が、ゆっくりと動く。目線から少し下がった場所で止まり、画面の中ほどで目が細められる。
 ――辿られて、いる?
 そのまま再び見つめられ、樹のペニスがどくりと脈打った。
『仕事の時はお揃いなのかな。俺も樹も、革紐とキスマークしか付けていないし』
 ね、と首を傾げる颯真に、樹はこくりと頷く。
『それで、樹は会社で首輪を付けたんだよね?』
 愉しげに笑う颯真に、樹は頷きながら腹を括った。
『ねえ、樹。どこでどうやって俺のを入れて、どんな顔で猫になったのか……教えてくれるね?』
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