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第59話 ビスケットを捧げに
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クリストフがローゼン公爵の職場を見学し、ひと騒動起こしてから一週間後のこと。
クリストフとローゼン公爵はクリストフの侍女エレナとローゼン公爵の侍従アルベルト、護衛に近衛騎士三人を伴って神殿へと出発した。
イルザは財務部門にて重要な研修があるらしく、しばらくクリストフ達のもとに来られないとのことで不在だ。
ローゼン公爵の宰相補佐の部屋に対する文句がやっと下火になってきた頃合いを見計らって、クリストフはいつもの二人の夜の時間に、あの夢の中での約束事を説明した。
夢の中で母に会うことができた。そこで母の友人にも会えた。彼女にビスケットをあげようとすると神殿に持ってきてほしいと言われた。(第48話公爵様の花嫁修業~お料理~1参照)
何やら難しい顔をするローゼン公爵に、クリストフは眉尻を下げて懇願した。
「俺だって馬鹿みたいだなって思うよ。ただの夢の中のことだからさ。でも、それでも俺にとっては約束は約束なんだ。だからちゃんと守りたくて」
上目遣いで見上げると、ローゼン公爵は軽く左眉を持ち上げた。
「それは結構なことです。貴方様の数少ない真面目な一面を見ることができる幸運に恵まれたのも、幸いの女神様のおかげですな」
薄い唇に乗った笑みは嫌味のためだった。宰相補佐の部屋への不満の種火が消えることはないようだ。癇に障った物言いに、クリストフはむっとした。
だが、そんなクリストフを気にもせずローゼン公爵は偉そうに続ける。
「まあ、クリス様が望まれることを叶えるのは私の役目というもの。神殿へ寄進されたいということぐらいなんということもありません。……ですが」
ローゼン公爵の表情は真剣なものへと変わった。
「女神様らしき女性にお会いしたなどとは決して他言しないでください」
「そんなこと言わないよ。夢の中のことなんて馬鹿にされるだけだもん」
「それだけで済めばいいのですがね」
「何かあるの?」
「どんな事柄でも、都合の良いようにこじつけたい輩がいるのですよ。たとえば、貴方様が夢で女神様からの啓示を受けた、などと吹聴されかねない」
「ただの夢だよ??」
「ただの夢でも、です」
それから出発までの間、ローゼン公爵が口うるさく夢の件は誰にも話すなというのでクリストフは辟易した。すでに知っているエレナ以外には知られるなと、朝な夕なにクリストフに声をかけてくるのだ。だが、クリストフから言わせれば、こんなただの夢の話を大袈裟にとる者などいるはずもない。
市井で女神様の夢を見たなどと話したところで、周囲からはせいぜい「今日はいいことがあるかもしれないな」などと言われるぐらいでだろう。
下世話な連中からはいい女だったか聞かれたり、「あっちの方がご無沙汰なのか?」と馬鹿にされる可能性すらある。
ローゼン公爵の懸念を半ば馬鹿にしつつ、クリストフはこうして婚約の儀以来、久しぶりに神殿へとやってきたのだった。
さて、神殿よりだいぶ手前で一行は馬車から降りた。神殿の敷地内、建物へと続く道は馬車が乗り入れることはできないため歩く必要があるのだ。
あらかじめクリストフの訪れは告げられていたのだろう。
馬車を降りてすぐにその場で待機していたらしい聖騎士を名乗る男達が数名、神官だという男が一人、クリストフの前に跪いて案内を申し出た。
神殿の建物は少し向こうに見えているのだから案内など不要なのにとクリストフは思ったが、おそらくクリストフの警護も兼ねているのだろうと考え直した。一般の参拝客らしき人々の姿も見えない。人払いがされているのかもしれない。
ほどなくして、両脇に白く大きな柱が立ち、道を作っている場所に出た。奥に大きな女神像が見える。そこには知らせを受けた神官長が何人かの神官を従えてクリストフを待っていた。
クリストフは一歩後ろに立つローゼン公爵に促され挨拶をしようとしたが口上が思いつかず、今日も「こんにちは」と言った。
神官長達は深く一礼した。
「本日はお越しくださり誠にありがとうございます。こうしてまたお会いできる日を、我々は首を長くして待っておりました」
大事なことらしく聞こえたので、悪いことをしたものだとクリストフは思った。ほんの一週間前にこの場所に来たはずなのだが、それでもクリストフが来るのを待っていたらしい。
しかし、ローゼン公爵は無表情に話した。
「殿下は人々のために日々学んでおられ、なかなかお時間を取ることが難しいのです」
神官長は僅かに眉を寄せた。
「ですが、今後は祭事の折には祈りを捧げるようにいたします」
不服そうに頷く神殿の人間達を見もせずに、ローゼン公爵はクリストフを先へと促した。それから一同は大きな建物へ向かって歩き始めた。
「神殿にあまりに足繁く通いますと、クリス様が神殿派だと勘違いされてしまうので……」
エレナが小声で教えてくれた。
正面にどっしりと構える建物は神殿の本殿というものだと神官長が教えてくれた。
彼の説明によれば、真っ直ぐに進んで大きな扉の中へと入ると「祈りの間」、右へ行くと祝福の花嫁誕生の儀を行った「儀式の間」がある建物があり、左へ行くと巫女や神官達が祈りを捧げる「修行の間」や、儀式後の話し合いのための部屋や応接間のような部屋がいくつかあるとのことだ。
さらに、大神官や神官長の執務室、神殿で働く人達が住むための部屋まで用意されているらしい。
クリストフ達はビスケットと祈りを捧げるために来たので、真っ直ぐに進んで扉を開け、「祈りの間」へと入った。
白い石で造られたその広い部屋はかなり天井が高かった。
設置されている女神像のためなのだろう。奥に置かれている女神像は外の女神像よりも少し小さいが、それでもクリストフが見上げて首が痛くなるほどの大きさだ。
女神像の前には彼女を守るように幸いの女神に仕える他の女神達の像が並んでいる。少し小さく造られた彼女達の像は、祈りを捧げに来た人々が無断で女神像に触らぬよう柵の役目も果たしていると見えた。
長い木の椅子が女神像に向かう形でいくつかの列をつくっている。人々はこの椅子に座って祈りを捧げるのだろうか。
椅子と女神達の像の間には祭壇があり、その脇には燭台が置いてあって、周りには小さな蝋燭がいくつも灯りをともしていた。
祭壇の前には大神官が立っていた。クリストフの後見人を自称する彼は、自ら迎えに出てきたようだ。
「ようこそおいでくださいました!」
大神官は満面の笑みでクリストフを迎えた。
「こ、こんにちは」
クリストフの挨拶も大神官は気にならないらしかった。
彼はどうやら、クリストフを王族というよりは神殿所属の「聖女の息子」だと認識しているようだ。神殿に行きたいと話したクリストフに、ローゼン公爵はそう教えてくれた。
そして、特にこの大神官には夢の話は内緒にするようにとのことだ。
「よろしいですか、クリス様」
神殿へ行く前日の夜、いつもの調子でローゼン公爵は改めて夢の話をする危険性をクリストフに説いてくれた。
「歴代の王の中で、実際に女神様と言葉を交わしたのは初代の国王陛下だけなのです。そこに、クリス様が夢の中であっても女神様とお話をされたともなれば、神殿の関係者はこぞってクリス様を次代の王にすべきだと言うでしょう。
もちろん、本来であれば夢の中の話など信じる者はいません。夢を見た者の妄想だと思われるでしょう。ただ、クリス様のお母上はローナ様です。『聖女』と謳われたローナ様のお子であるからこそ、ただの夢でもそうとは取らない輩がいるのです。
そしてこの話が広まれば、王太子殿下を推す者達との間で諍いが起きてしまう。それは良いことではありません」
自分が国王になるなどとんでもない話だ。クリストフにはそんな気は一切ない。王族でいることさえ厭わしいというのに、王様なんて真っ平ごめんである。
だが、かといって王太子である異母兄レオンハルトが国王に相応しいかと言われるとクリストフは異を唱えたかった。
「あんたはあいつが国王になればいいって思ってるんでしょ?」
ふと、話の目的から逸れて、そんな問いかけがこぼれる。
ローゼン公爵はあの男が国王となることについてどう思っているのか。王太子派だと聞いてはいたが、直接聞いてみたい。
ローゼン公爵がクリストフのために刺繍してくれたハンカチを王家の炎で燃やし、その炎をエレナやクリストフにまで向けてきた。(第27話公爵様の花嫁修業~刺繍~4参照)
ベルモント公爵と一緒になってクリストフを馬鹿にした。
レオンハルトの傲慢さを見るにつけ、何故ローゼン公爵があの男を支持しているのか分からないのだ。
「ええ。あの方は幼い頃から国を統べるために非常に努力されてきました。私はそれを評価しています」
「でも、あいつはあのベルモント公爵とよく一緒にいるよ。それはいいの?」
ベルモント公爵は平民を馬鹿にしている。
ローゼン公爵の授業で学んだが、国を支える礎となっているのは平民達だ。貴族に比べて学がないかもしれないが、平民が日々作っているものが貴族の生活を支えているのは間違いのない事実だ。
ローゼン公爵は視線を落とした。
「……王太子殿下は、今、試練を受けておられる。私はそのように考えています」
「試練?」
「王族には力があります。それを自らの望みのために使いたいと謀って近づく輩は多い。ですから、己の力を高める以外にも御身に近寄る者の意図を見抜き、身近に置く人間を選別する能力も重要です。
ベルモント公爵を側に置くことがどのような意味を持つのか。それに気づくことができるようであれば、王族として一歩高みに登ることができたことになります。
こう申し上げては不敬ですが、御身の他の能力が不足していても、周りに置くべき人間を見極めることができれば、誤った道に進むことはないでしょう」
それならばクリストフは大丈夫だ。思いに沈むローゼン公爵を見つめながらクリストフは思った。
クリストフの周りには信頼できる人ばかりいる。
優しく厳しかった母を始め、孤児のクリストフを受け入れてくれた娼館の人々や街の皆。王宮での窮状を救ってくれたエレナ。お堅いけれど、そのエレナを助けてくれるイルザ。
アルベルトについてはよく分からないが、彼が悪辣なことを企むなど天地がひっくり返ってもなさそうだ。彼に対してはどうしても気が抜けてしまう。貴族とはとても思えなくて、まるで近所に住む男友達のようだ。
そして、目の前のローゼン公爵。
いつも嫌味を言うけれど、クリストフの弱くて愚かな部分を馬鹿にせず見守ってくれている。
「王太子殿下が……何をお考えなのか、お恥ずかしい話ですが今の私には掴めなくなってしまいました。ですが、以前の王太子殿下は国を思って真っ直ぐなお心で邁進されていました。今は誤った考えをお持ちの部分があっても……」
ローゼン公爵は言葉を切った。そして、少し間を置いてから続けた。
「必ずやこの試練を乗り越え、過ちを改めていただくことはできる。そう考えています。クリス様やエレナに王家の炎を向けたようなことはもう起こりますまい。いえ、起こさぬよう私も忠言する努力をしなければならない」
あの傲慢な男が考えを改めるなど。
そんなことはないだろうとクリストフは思ったが、ローゼン公爵が真剣な顔をしているので黙っておいた。
クリストフの母親もローゼン公爵も、どうもこういった人の善性を信じる面がある。だがクリストフは懐疑的だ。
クリストフがいた娼館の常連に働きもしない怠惰な男がいた。
その男に尽くした娼婦がいた。
彼女の慈愛と献身は驚くほどで、男はある日真っ当になり働き始めた。ところが、何かちょっとある度に男は元の怠けた男に戻った。
治っては戻り、治っては戻りの繰り返しだ。
ある日その娼婦が病に倒れた。男は今度こそ改心するかと思われた。だが、やっぱりそれは短い期間で、男はまたのらりくらりとした生活に戻った。
クリストフは頭にきて怒鳴りつけてやったことがある。男は「こんなガキに言われるなんて」と働きだしたが、数日後にはやっぱり仕事をやめて元に戻った。
要するに、それがその男の性分なのだ。生来のものなのだ。クリストフはそう判断した。
いつからこの男がこうなのかは分からないが、これから一生治ることはないのだ。例え「愛」というものがあろうとも。
「愛」の無力さを思い、そのときのクリストフは少しがっかりした。
王太子であるレオンハルトにも、どうもこの男と同じにおいがする。
あの男は、きっとローゼン公爵が思うよりずっと前から平民のことを馬鹿にしていたのだと感じるのだ。そして、それは彼が王族だからではなく彼という人間だからだ。
クリストフの勘がそう告げていた。
クリストフが昨夜のことを思い出している内に、ローゼン公爵は大神官に捧げ物がある旨を申し出た。
「さすがは聖女様のご子息だ。感心ですな!」
大神官は機嫌良く捧げ物の包みを解き、そして目の前の物体に表情を強張らせた。神官長や神官達もぎょっとしている。
「こ、この禍々しい物は一体……」
酷い言われようにローゼン公爵が顔をしかめた。
「これは」
「これはビスケットだよ」
クリストフが先に答えた。
「これがビスケットですか??」
神官長は震えながらビスケットに触れようとして、他の神官達に止められた。
「まさか……」
大神官は瞬き、それから得心したらしく大きく頷いた。
「呪いを解きたいのですね?」
「何を馬鹿な……!」
ローゼン公爵が思わず声を上げた。
「ビスケットを呪う者などいるものか!」
「しかしこのビスケットから禍々しい気配を感じますぞ!」
「そんなわけがない! これは私が真心をこめてクリス様にお作りしたビスケットで」
「閣下がビスケットを作った!?」
「花嫁様が作ったビスケットが呪われただと!!」
大神官とローゼン公爵と神官長の言葉が入り乱れ、場が紛糾しかけたのでクリストフは慌てて間に入った。
「ちょ、ちょっと待ってよ! これは本当にビスケットだよ! 見た目は怖いけど美味しいんだよ!」
今日はまだ一つも食べていないから大丈夫だ。クリストフは一つだけ食べてみせた。平然としているクリストフを見ても神官達は震えている。
「ローゼン公爵が俺のために作ってくれたんだよ! 花嫁の加護で魔力が増える効果もあって……」
「しかしこんな気味の悪い物を女神様に捧げられませんよ!」
神官長が言った。クリストフは焦った。大事な約束のためにここへ来たというのに、ただ物を捧げることもできないなんて。
「そんなこと言わないでよ! 俺、女神様と約束したんだから! これをあげるって言ったら、神殿に届けてって女神様が言って」
「クリス様っ……!」
エレナが慌ててクリストフの服の袖を引いたが遅かった。ローゼン公爵は額に手を当て、目を閉じた。大神官は目を見開いてクリストフを見つめ、神官長は神官達と顔を見合わせた。
「め……女神様のお言葉を聞いたのですか……?」
神官長の言葉に、クリストフはしまったと口を閉じたが遅かった。俄に神官達が騒ぎ出し、一人はどこかへ駆けて行ってしまった。
「そ、そういうわけじゃなくて、夢で母さんと女神様に会って」
「女神様に会った!!?」
神官長は大きな声を上げた。
「だ、だからただの夢で」
「ご説明いただけますか、ローゼン公爵」
大神官が低い声でローゼン公爵に言った。
それからしばらくクリストフとエレナは祈りの間で待たされた。
ローゼン公爵と大神官は場所を変えてどこかで話し込んでいるらしい。クリストフが応接間にも案内されないことにエレナは不満を隠さなかった。しかし、それを訴える神官達すらこの場から消えてしまったのだ。
木の長椅子に座ってぼんやりと女神像を眺めていると、やっとのことでローゼン公爵と大神官が戻ってきた。そして、許可されたとのことで、ようやくクリストフはビスケットを女神像に捧げることができた。
ビスケットの脇にそっと手紙も置いた。夢で会えた母に、少しでも自分の言葉が届けられはしないだろうかという期待を抱いて書いた手紙だ。
自分は元気にしている。白花の館では美味しいものを食べさせてもらっている。勉強に励んでいる。
母をほっとさせたくて、そんな言葉を並べた。
母への手紙の封筒の中には、幸いの女神に宛てた手紙も同封してある。
母の体は弱く、左目は見えないこと。こう言ってはおかしな話だが、死んだあとはそれが治ったのか。治っていないならなんとか治療できないか。また、母が生まれ変わる予定なら、今度はもっとましな男と結婚させてやってほしい。だが、クリストフが再び子どもとして生まれたいので、少し待ってほしい。
それから、ローゼン公爵とは何とか上手くやっているので、昔存在したどうしようもない花婿のように花婿の資格を剥奪してしまうのは様子見してくれないか。(第46話刺繍と花嫁の加護2内『セリストレムの悲劇』参照)
などなど。
それから、クリストフはローゼン公爵に教わったやり方で祈りの姿勢を取って、片膝をついた。背後でローゼン公爵とエレナも同じ姿勢を取っている。
クリストフは夢で会った母の姿を思った。幸いの女神は母と友達だと言っていた。だからきっと、女神は母に優しくしてくれるはずだ。もしかすると、二人でお茶でも飲んでいるかもしれない。テーブルでカップ片手に楽しげに微笑む母の姿を思い浮かべる。
王宮できっと辛い目にあっただろう母。娼館に行ってからも人助けばかりで自分のことを後回しにしていた母。女神は聖女だと言われた母よりずっとすごい力があるに違いないから、今度は母が自らを犠牲にしなくても済んでいるのではないか。そして、穏やかに過ごしていてほしい。
そう願いながら強く胸の前で手を組んだのだった。
クリストフとローゼン公爵はクリストフの侍女エレナとローゼン公爵の侍従アルベルト、護衛に近衛騎士三人を伴って神殿へと出発した。
イルザは財務部門にて重要な研修があるらしく、しばらくクリストフ達のもとに来られないとのことで不在だ。
ローゼン公爵の宰相補佐の部屋に対する文句がやっと下火になってきた頃合いを見計らって、クリストフはいつもの二人の夜の時間に、あの夢の中での約束事を説明した。
夢の中で母に会うことができた。そこで母の友人にも会えた。彼女にビスケットをあげようとすると神殿に持ってきてほしいと言われた。(第48話公爵様の花嫁修業~お料理~1参照)
何やら難しい顔をするローゼン公爵に、クリストフは眉尻を下げて懇願した。
「俺だって馬鹿みたいだなって思うよ。ただの夢の中のことだからさ。でも、それでも俺にとっては約束は約束なんだ。だからちゃんと守りたくて」
上目遣いで見上げると、ローゼン公爵は軽く左眉を持ち上げた。
「それは結構なことです。貴方様の数少ない真面目な一面を見ることができる幸運に恵まれたのも、幸いの女神様のおかげですな」
薄い唇に乗った笑みは嫌味のためだった。宰相補佐の部屋への不満の種火が消えることはないようだ。癇に障った物言いに、クリストフはむっとした。
だが、そんなクリストフを気にもせずローゼン公爵は偉そうに続ける。
「まあ、クリス様が望まれることを叶えるのは私の役目というもの。神殿へ寄進されたいということぐらいなんということもありません。……ですが」
ローゼン公爵の表情は真剣なものへと変わった。
「女神様らしき女性にお会いしたなどとは決して他言しないでください」
「そんなこと言わないよ。夢の中のことなんて馬鹿にされるだけだもん」
「それだけで済めばいいのですがね」
「何かあるの?」
「どんな事柄でも、都合の良いようにこじつけたい輩がいるのですよ。たとえば、貴方様が夢で女神様からの啓示を受けた、などと吹聴されかねない」
「ただの夢だよ??」
「ただの夢でも、です」
それから出発までの間、ローゼン公爵が口うるさく夢の件は誰にも話すなというのでクリストフは辟易した。すでに知っているエレナ以外には知られるなと、朝な夕なにクリストフに声をかけてくるのだ。だが、クリストフから言わせれば、こんなただの夢の話を大袈裟にとる者などいるはずもない。
市井で女神様の夢を見たなどと話したところで、周囲からはせいぜい「今日はいいことがあるかもしれないな」などと言われるぐらいでだろう。
下世話な連中からはいい女だったか聞かれたり、「あっちの方がご無沙汰なのか?」と馬鹿にされる可能性すらある。
ローゼン公爵の懸念を半ば馬鹿にしつつ、クリストフはこうして婚約の儀以来、久しぶりに神殿へとやってきたのだった。
さて、神殿よりだいぶ手前で一行は馬車から降りた。神殿の敷地内、建物へと続く道は馬車が乗り入れることはできないため歩く必要があるのだ。
あらかじめクリストフの訪れは告げられていたのだろう。
馬車を降りてすぐにその場で待機していたらしい聖騎士を名乗る男達が数名、神官だという男が一人、クリストフの前に跪いて案内を申し出た。
神殿の建物は少し向こうに見えているのだから案内など不要なのにとクリストフは思ったが、おそらくクリストフの警護も兼ねているのだろうと考え直した。一般の参拝客らしき人々の姿も見えない。人払いがされているのかもしれない。
ほどなくして、両脇に白く大きな柱が立ち、道を作っている場所に出た。奥に大きな女神像が見える。そこには知らせを受けた神官長が何人かの神官を従えてクリストフを待っていた。
クリストフは一歩後ろに立つローゼン公爵に促され挨拶をしようとしたが口上が思いつかず、今日も「こんにちは」と言った。
神官長達は深く一礼した。
「本日はお越しくださり誠にありがとうございます。こうしてまたお会いできる日を、我々は首を長くして待っておりました」
大事なことらしく聞こえたので、悪いことをしたものだとクリストフは思った。ほんの一週間前にこの場所に来たはずなのだが、それでもクリストフが来るのを待っていたらしい。
しかし、ローゼン公爵は無表情に話した。
「殿下は人々のために日々学んでおられ、なかなかお時間を取ることが難しいのです」
神官長は僅かに眉を寄せた。
「ですが、今後は祭事の折には祈りを捧げるようにいたします」
不服そうに頷く神殿の人間達を見もせずに、ローゼン公爵はクリストフを先へと促した。それから一同は大きな建物へ向かって歩き始めた。
「神殿にあまりに足繁く通いますと、クリス様が神殿派だと勘違いされてしまうので……」
エレナが小声で教えてくれた。
正面にどっしりと構える建物は神殿の本殿というものだと神官長が教えてくれた。
彼の説明によれば、真っ直ぐに進んで大きな扉の中へと入ると「祈りの間」、右へ行くと祝福の花嫁誕生の儀を行った「儀式の間」がある建物があり、左へ行くと巫女や神官達が祈りを捧げる「修行の間」や、儀式後の話し合いのための部屋や応接間のような部屋がいくつかあるとのことだ。
さらに、大神官や神官長の執務室、神殿で働く人達が住むための部屋まで用意されているらしい。
クリストフ達はビスケットと祈りを捧げるために来たので、真っ直ぐに進んで扉を開け、「祈りの間」へと入った。
白い石で造られたその広い部屋はかなり天井が高かった。
設置されている女神像のためなのだろう。奥に置かれている女神像は外の女神像よりも少し小さいが、それでもクリストフが見上げて首が痛くなるほどの大きさだ。
女神像の前には彼女を守るように幸いの女神に仕える他の女神達の像が並んでいる。少し小さく造られた彼女達の像は、祈りを捧げに来た人々が無断で女神像に触らぬよう柵の役目も果たしていると見えた。
長い木の椅子が女神像に向かう形でいくつかの列をつくっている。人々はこの椅子に座って祈りを捧げるのだろうか。
椅子と女神達の像の間には祭壇があり、その脇には燭台が置いてあって、周りには小さな蝋燭がいくつも灯りをともしていた。
祭壇の前には大神官が立っていた。クリストフの後見人を自称する彼は、自ら迎えに出てきたようだ。
「ようこそおいでくださいました!」
大神官は満面の笑みでクリストフを迎えた。
「こ、こんにちは」
クリストフの挨拶も大神官は気にならないらしかった。
彼はどうやら、クリストフを王族というよりは神殿所属の「聖女の息子」だと認識しているようだ。神殿に行きたいと話したクリストフに、ローゼン公爵はそう教えてくれた。
そして、特にこの大神官には夢の話は内緒にするようにとのことだ。
「よろしいですか、クリス様」
神殿へ行く前日の夜、いつもの調子でローゼン公爵は改めて夢の話をする危険性をクリストフに説いてくれた。
「歴代の王の中で、実際に女神様と言葉を交わしたのは初代の国王陛下だけなのです。そこに、クリス様が夢の中であっても女神様とお話をされたともなれば、神殿の関係者はこぞってクリス様を次代の王にすべきだと言うでしょう。
もちろん、本来であれば夢の中の話など信じる者はいません。夢を見た者の妄想だと思われるでしょう。ただ、クリス様のお母上はローナ様です。『聖女』と謳われたローナ様のお子であるからこそ、ただの夢でもそうとは取らない輩がいるのです。
そしてこの話が広まれば、王太子殿下を推す者達との間で諍いが起きてしまう。それは良いことではありません」
自分が国王になるなどとんでもない話だ。クリストフにはそんな気は一切ない。王族でいることさえ厭わしいというのに、王様なんて真っ平ごめんである。
だが、かといって王太子である異母兄レオンハルトが国王に相応しいかと言われるとクリストフは異を唱えたかった。
「あんたはあいつが国王になればいいって思ってるんでしょ?」
ふと、話の目的から逸れて、そんな問いかけがこぼれる。
ローゼン公爵はあの男が国王となることについてどう思っているのか。王太子派だと聞いてはいたが、直接聞いてみたい。
ローゼン公爵がクリストフのために刺繍してくれたハンカチを王家の炎で燃やし、その炎をエレナやクリストフにまで向けてきた。(第27話公爵様の花嫁修業~刺繍~4参照)
ベルモント公爵と一緒になってクリストフを馬鹿にした。
レオンハルトの傲慢さを見るにつけ、何故ローゼン公爵があの男を支持しているのか分からないのだ。
「ええ。あの方は幼い頃から国を統べるために非常に努力されてきました。私はそれを評価しています」
「でも、あいつはあのベルモント公爵とよく一緒にいるよ。それはいいの?」
ベルモント公爵は平民を馬鹿にしている。
ローゼン公爵の授業で学んだが、国を支える礎となっているのは平民達だ。貴族に比べて学がないかもしれないが、平民が日々作っているものが貴族の生活を支えているのは間違いのない事実だ。
ローゼン公爵は視線を落とした。
「……王太子殿下は、今、試練を受けておられる。私はそのように考えています」
「試練?」
「王族には力があります。それを自らの望みのために使いたいと謀って近づく輩は多い。ですから、己の力を高める以外にも御身に近寄る者の意図を見抜き、身近に置く人間を選別する能力も重要です。
ベルモント公爵を側に置くことがどのような意味を持つのか。それに気づくことができるようであれば、王族として一歩高みに登ることができたことになります。
こう申し上げては不敬ですが、御身の他の能力が不足していても、周りに置くべき人間を見極めることができれば、誤った道に進むことはないでしょう」
それならばクリストフは大丈夫だ。思いに沈むローゼン公爵を見つめながらクリストフは思った。
クリストフの周りには信頼できる人ばかりいる。
優しく厳しかった母を始め、孤児のクリストフを受け入れてくれた娼館の人々や街の皆。王宮での窮状を救ってくれたエレナ。お堅いけれど、そのエレナを助けてくれるイルザ。
アルベルトについてはよく分からないが、彼が悪辣なことを企むなど天地がひっくり返ってもなさそうだ。彼に対してはどうしても気が抜けてしまう。貴族とはとても思えなくて、まるで近所に住む男友達のようだ。
そして、目の前のローゼン公爵。
いつも嫌味を言うけれど、クリストフの弱くて愚かな部分を馬鹿にせず見守ってくれている。
「王太子殿下が……何をお考えなのか、お恥ずかしい話ですが今の私には掴めなくなってしまいました。ですが、以前の王太子殿下は国を思って真っ直ぐなお心で邁進されていました。今は誤った考えをお持ちの部分があっても……」
ローゼン公爵は言葉を切った。そして、少し間を置いてから続けた。
「必ずやこの試練を乗り越え、過ちを改めていただくことはできる。そう考えています。クリス様やエレナに王家の炎を向けたようなことはもう起こりますまい。いえ、起こさぬよう私も忠言する努力をしなければならない」
あの傲慢な男が考えを改めるなど。
そんなことはないだろうとクリストフは思ったが、ローゼン公爵が真剣な顔をしているので黙っておいた。
クリストフの母親もローゼン公爵も、どうもこういった人の善性を信じる面がある。だがクリストフは懐疑的だ。
クリストフがいた娼館の常連に働きもしない怠惰な男がいた。
その男に尽くした娼婦がいた。
彼女の慈愛と献身は驚くほどで、男はある日真っ当になり働き始めた。ところが、何かちょっとある度に男は元の怠けた男に戻った。
治っては戻り、治っては戻りの繰り返しだ。
ある日その娼婦が病に倒れた。男は今度こそ改心するかと思われた。だが、やっぱりそれは短い期間で、男はまたのらりくらりとした生活に戻った。
クリストフは頭にきて怒鳴りつけてやったことがある。男は「こんなガキに言われるなんて」と働きだしたが、数日後にはやっぱり仕事をやめて元に戻った。
要するに、それがその男の性分なのだ。生来のものなのだ。クリストフはそう判断した。
いつからこの男がこうなのかは分からないが、これから一生治ることはないのだ。例え「愛」というものがあろうとも。
「愛」の無力さを思い、そのときのクリストフは少しがっかりした。
王太子であるレオンハルトにも、どうもこの男と同じにおいがする。
あの男は、きっとローゼン公爵が思うよりずっと前から平民のことを馬鹿にしていたのだと感じるのだ。そして、それは彼が王族だからではなく彼という人間だからだ。
クリストフの勘がそう告げていた。
クリストフが昨夜のことを思い出している内に、ローゼン公爵は大神官に捧げ物がある旨を申し出た。
「さすがは聖女様のご子息だ。感心ですな!」
大神官は機嫌良く捧げ物の包みを解き、そして目の前の物体に表情を強張らせた。神官長や神官達もぎょっとしている。
「こ、この禍々しい物は一体……」
酷い言われようにローゼン公爵が顔をしかめた。
「これは」
「これはビスケットだよ」
クリストフが先に答えた。
「これがビスケットですか??」
神官長は震えながらビスケットに触れようとして、他の神官達に止められた。
「まさか……」
大神官は瞬き、それから得心したらしく大きく頷いた。
「呪いを解きたいのですね?」
「何を馬鹿な……!」
ローゼン公爵が思わず声を上げた。
「ビスケットを呪う者などいるものか!」
「しかしこのビスケットから禍々しい気配を感じますぞ!」
「そんなわけがない! これは私が真心をこめてクリス様にお作りしたビスケットで」
「閣下がビスケットを作った!?」
「花嫁様が作ったビスケットが呪われただと!!」
大神官とローゼン公爵と神官長の言葉が入り乱れ、場が紛糾しかけたのでクリストフは慌てて間に入った。
「ちょ、ちょっと待ってよ! これは本当にビスケットだよ! 見た目は怖いけど美味しいんだよ!」
今日はまだ一つも食べていないから大丈夫だ。クリストフは一つだけ食べてみせた。平然としているクリストフを見ても神官達は震えている。
「ローゼン公爵が俺のために作ってくれたんだよ! 花嫁の加護で魔力が増える効果もあって……」
「しかしこんな気味の悪い物を女神様に捧げられませんよ!」
神官長が言った。クリストフは焦った。大事な約束のためにここへ来たというのに、ただ物を捧げることもできないなんて。
「そんなこと言わないでよ! 俺、女神様と約束したんだから! これをあげるって言ったら、神殿に届けてって女神様が言って」
「クリス様っ……!」
エレナが慌ててクリストフの服の袖を引いたが遅かった。ローゼン公爵は額に手を当て、目を閉じた。大神官は目を見開いてクリストフを見つめ、神官長は神官達と顔を見合わせた。
「め……女神様のお言葉を聞いたのですか……?」
神官長の言葉に、クリストフはしまったと口を閉じたが遅かった。俄に神官達が騒ぎ出し、一人はどこかへ駆けて行ってしまった。
「そ、そういうわけじゃなくて、夢で母さんと女神様に会って」
「女神様に会った!!?」
神官長は大きな声を上げた。
「だ、だからただの夢で」
「ご説明いただけますか、ローゼン公爵」
大神官が低い声でローゼン公爵に言った。
それからしばらくクリストフとエレナは祈りの間で待たされた。
ローゼン公爵と大神官は場所を変えてどこかで話し込んでいるらしい。クリストフが応接間にも案内されないことにエレナは不満を隠さなかった。しかし、それを訴える神官達すらこの場から消えてしまったのだ。
木の長椅子に座ってぼんやりと女神像を眺めていると、やっとのことでローゼン公爵と大神官が戻ってきた。そして、許可されたとのことで、ようやくクリストフはビスケットを女神像に捧げることができた。
ビスケットの脇にそっと手紙も置いた。夢で会えた母に、少しでも自分の言葉が届けられはしないだろうかという期待を抱いて書いた手紙だ。
自分は元気にしている。白花の館では美味しいものを食べさせてもらっている。勉強に励んでいる。
母をほっとさせたくて、そんな言葉を並べた。
母への手紙の封筒の中には、幸いの女神に宛てた手紙も同封してある。
母の体は弱く、左目は見えないこと。こう言ってはおかしな話だが、死んだあとはそれが治ったのか。治っていないならなんとか治療できないか。また、母が生まれ変わる予定なら、今度はもっとましな男と結婚させてやってほしい。だが、クリストフが再び子どもとして生まれたいので、少し待ってほしい。
それから、ローゼン公爵とは何とか上手くやっているので、昔存在したどうしようもない花婿のように花婿の資格を剥奪してしまうのは様子見してくれないか。(第46話刺繍と花嫁の加護2内『セリストレムの悲劇』参照)
などなど。
それから、クリストフはローゼン公爵に教わったやり方で祈りの姿勢を取って、片膝をついた。背後でローゼン公爵とエレナも同じ姿勢を取っている。
クリストフは夢で会った母の姿を思った。幸いの女神は母と友達だと言っていた。だからきっと、女神は母に優しくしてくれるはずだ。もしかすると、二人でお茶でも飲んでいるかもしれない。テーブルでカップ片手に楽しげに微笑む母の姿を思い浮かべる。
王宮できっと辛い目にあっただろう母。娼館に行ってからも人助けばかりで自分のことを後回しにしていた母。女神は聖女だと言われた母よりずっとすごい力があるに違いないから、今度は母が自らを犠牲にしなくても済んでいるのではないか。そして、穏やかに過ごしていてほしい。
そう願いながら強く胸の前で手を組んだのだった。
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