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鉛筆とダイヤモンドの指輪
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「鉛筆の芯とダイヤモンドが同じって知ってる?」
「知ってる。結構有名だろ」
放課後の教室で、机を挟んで向かい合わせに座る二人の少年がいた。片方は元気そうな茶髪の少年で、もう片方は真面目そうな黒髪の少年だった。
茶髪の方は佐藤一、黒髪の方は嘉藤幸太と言う。
嘉藤は本日の日直であり、先生に頼まれたクラス全員分のノートが間違いなくあるかの確認と、日誌の記入をしていたのだ。そこに何故かやって来た別クラスの幼馴染みを容赦なくこき使っていれば、未提出者の確認に飽きた彼の思考は雑談に移行したらしい。
慣れたようにあしらう嘉藤に、くるりと持っていた嘉藤の鉛筆を回しながら佐藤は構わず続ける。
「つまり、鉛筆を贈るのはダイヤモンドの指輪を贈るのと同義ということに…」
「はいバカ~。そうはならないだろ」
「この鉛筆くれよ。俺の鉛筆やるから」
「なんでだよ……つか、持ってんなら初めから自分のやつ使えや」
今持ってないと言うから貸したのに、傍らのリュックからさらっと筆箱を取り出した佐藤にため息をつく。もはや鉛筆の交換は決定事項らしい。嘉藤の持っていたシンプルな鉛筆は、佐藤の持つ派手な柄の鉛筆に取り替えられた。
満足気にする佐藤に呆れながら、嘉藤はその鉛筆を傍らに置く。ニヤニヤする佐藤が何を考えてるかなんて簡単に察せられる。だがあえて突っ込むまいと素知らぬ顔で日誌に向き直った嘉藤だったが、目の前のバカがそれを察した上で気遣う…なんてことする訳がなく。
「さっきの理論で言えば、これは指輪の交換と同義ということになるんですが」
「鉛筆の芯がダイヤモンドと同じでも、それが指輪と同じかと言えば違うからノーカンだ」
「照れちゃって♡」
「はっ倒すぞ」
思わず手に力が入り、パキッと鉛筆の芯が折れる。尖っていた芯は見るも無惨に不揃いな断面へと変わり、筆箱から鉛筆削りを取り出した。
ガリガリと削りながら佐藤を睨むが、さっぱりダメージは入っていないらしい。むしろ愛しげに目を細められて、嘉藤はぐぅ…と喉の奥から声にならない音を出す。
「"今は"予約ってことでいいよ」
「おう、捨てていいかコレ」
「いつか芯がダイヤモンドの鉛筆贈るからね♡」
「それはもはや鉛筆ではないし、どう考えても指輪より高いし、まず俺の話を聞け」
完全に自分の世界に入った幼馴染みを現実に連れ戻すことは諦め、嘉藤はさっさと帰るために放置された日誌に取り掛かるのだった。
鉛筆とダイヤモンドの指輪
「…芯がダイヤモンドの鉛筆じゃない」
「まともな指輪贈ってガッカリされることある??」
「お前なら絶対にやらかすと思って身構えてたのに…」
「え、やれば良かった…」
「いや絶対にヤメロ」
登場人物
佐藤 一
幼い頃から幼馴染みに惚れている男。地味~にアプローチをしてきたが、あまりにも手応えがないので高校に入ってからさり気ないオープンになった。なんだかんだ幼馴染みが絆されてくれたのでしたり顔。抱く気満々。
元気いっぱいの陽キャで、成績は中の中。選択問題を勘で当てに行くタイプ。普段はおちゃらけたおバカだが、案外計算高い。なおたまたま拾ったヤバそうな魔導書を躊躇無く友人三人に使用するなどのバカをやる。
嘉藤 幸太
幼馴染みがオープンになるまで惚れられてることに気づいてなかった男。高校入ってから急に(急では無い)アプローチをかけられ、半ば絆された。多分あまり抵抗せずに抱かれることとなる。
真面目である意味純情な上、リアル幸運値がクソ高い。リアルでクリティカル連発とかを素でやってしまう。幼馴染みと友人にはあまりの引きの良さをドン引きされた。
「知ってる。結構有名だろ」
放課後の教室で、机を挟んで向かい合わせに座る二人の少年がいた。片方は元気そうな茶髪の少年で、もう片方は真面目そうな黒髪の少年だった。
茶髪の方は佐藤一、黒髪の方は嘉藤幸太と言う。
嘉藤は本日の日直であり、先生に頼まれたクラス全員分のノートが間違いなくあるかの確認と、日誌の記入をしていたのだ。そこに何故かやって来た別クラスの幼馴染みを容赦なくこき使っていれば、未提出者の確認に飽きた彼の思考は雑談に移行したらしい。
慣れたようにあしらう嘉藤に、くるりと持っていた嘉藤の鉛筆を回しながら佐藤は構わず続ける。
「つまり、鉛筆を贈るのはダイヤモンドの指輪を贈るのと同義ということに…」
「はいバカ~。そうはならないだろ」
「この鉛筆くれよ。俺の鉛筆やるから」
「なんでだよ……つか、持ってんなら初めから自分のやつ使えや」
今持ってないと言うから貸したのに、傍らのリュックからさらっと筆箱を取り出した佐藤にため息をつく。もはや鉛筆の交換は決定事項らしい。嘉藤の持っていたシンプルな鉛筆は、佐藤の持つ派手な柄の鉛筆に取り替えられた。
満足気にする佐藤に呆れながら、嘉藤はその鉛筆を傍らに置く。ニヤニヤする佐藤が何を考えてるかなんて簡単に察せられる。だがあえて突っ込むまいと素知らぬ顔で日誌に向き直った嘉藤だったが、目の前のバカがそれを察した上で気遣う…なんてことする訳がなく。
「さっきの理論で言えば、これは指輪の交換と同義ということになるんですが」
「鉛筆の芯がダイヤモンドと同じでも、それが指輪と同じかと言えば違うからノーカンだ」
「照れちゃって♡」
「はっ倒すぞ」
思わず手に力が入り、パキッと鉛筆の芯が折れる。尖っていた芯は見るも無惨に不揃いな断面へと変わり、筆箱から鉛筆削りを取り出した。
ガリガリと削りながら佐藤を睨むが、さっぱりダメージは入っていないらしい。むしろ愛しげに目を細められて、嘉藤はぐぅ…と喉の奥から声にならない音を出す。
「"今は"予約ってことでいいよ」
「おう、捨てていいかコレ」
「いつか芯がダイヤモンドの鉛筆贈るからね♡」
「それはもはや鉛筆ではないし、どう考えても指輪より高いし、まず俺の話を聞け」
完全に自分の世界に入った幼馴染みを現実に連れ戻すことは諦め、嘉藤はさっさと帰るために放置された日誌に取り掛かるのだった。
鉛筆とダイヤモンドの指輪
「…芯がダイヤモンドの鉛筆じゃない」
「まともな指輪贈ってガッカリされることある??」
「お前なら絶対にやらかすと思って身構えてたのに…」
「え、やれば良かった…」
「いや絶対にヤメロ」
登場人物
佐藤 一
幼い頃から幼馴染みに惚れている男。地味~にアプローチをしてきたが、あまりにも手応えがないので高校に入ってからさり気ないオープンになった。なんだかんだ幼馴染みが絆されてくれたのでしたり顔。抱く気満々。
元気いっぱいの陽キャで、成績は中の中。選択問題を勘で当てに行くタイプ。普段はおちゃらけたおバカだが、案外計算高い。なおたまたま拾ったヤバそうな魔導書を躊躇無く友人三人に使用するなどのバカをやる。
嘉藤 幸太
幼馴染みがオープンになるまで惚れられてることに気づいてなかった男。高校入ってから急に(急では無い)アプローチをかけられ、半ば絆された。多分あまり抵抗せずに抱かれることとなる。
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