【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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猟師と青年 1

猟師、先生に恋の相談をする

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「先生!どうしよう、ソラ君、泣いてた…」
「…見られちゃったね、ごめん」

先生は時々、ソラ君のいない日にオレの家に来る。

オレ、ソラ君の前ではただの猟師だけど…
実は国境で帝国を監視する係でもあって、山の頂上から西の砦を観察して、何か変わったことがあったら、先生に報告してるんだ。

いつもは使い魔で済ませるんだけど…
今日は、本当にたまたま、ソラ君が泊まりに来ない日だしいいだろうと思って…
先生を呼んだんだ。

ソラ君の「いつもの倍の薪を取ってこいって言われた」話が、今回の戦に全然関係なくて、だから戦が終わってからも何か帝国が企んでるんじゃないかって…
それで、他にも色々と聞きたかったし…その。

オレ、明日、ソラ君に告白しようと思って。

この前オレの腕の中でスヤスヤ寝てたし、おでこにチュウしたらウフフって笑ってたし。
だからもしかしたらって…。

一緒に、生きてくれませんかって。
オレと一緒に生きてくれませんか、って。

…こんな国捨てて、オレのとこおいでよって。

でもその前に、眷属のことを色々説明しないといけないし、そういうの、どこまで話していいのか分からないし…。

1日。
たった1日遅かっただけで…
こんなことになるなんて。

もう、駄目かもしれない。
オレ、ソラ君と一緒にいたくて、嘘ついた。

1人で寂しい者同士なんだって、同情を引くような嘘。
1人で寂しかったのはソラ君のほうなのに。
その孤独も分かったフリして…

ひどいこと、してしまった。
きっと裏切られたって思ってる。

「もう一回、ちゃんと会って、話さなきゃ」
「うん」
「好きだから、嘘ついてでも一緒にいたかったって、言わなきゃいけないのに」
「うん」

先生がオレの言葉をそうだねって言ってくれる。
だからそうするべきなんだと思う。
でも……。

「ソラ君、戦に出るって」
「そうだね、それは報告しないといけないね」
「先生!?」
「仕方ないだろう?それがロウの仕事だ」
「だけど!」

オレは悩む。
今まで自分の住んでる国のみんなの為になればって、やってきた仕事だけど…
こんなことになるなんて。

「ソラ君、その報告のせいで、死んじゃったら、どうしよう…」
「うん」
「ソラ君は、人間だもん…」
「うん」

なんで、ソラ君は帝国の兵隊さんなんだろう。
黒目黒髪だから、帝国臣民じゃないって、なのに…。


頭がぐちゃぐちゃになってるオレに、先生が言った。

「ぐずぐずしてても仕方ないよ。
 彼を取り返しに行かなきゃ、でしょ」


「…何かいい作戦、あるの?」
「それは…専門家に聞くしかないね」

オレは小屋を引き払った。
あの日、ソラ君を包んだ布だけ、持って。
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