【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

文字の大きさ
74 / 134
王子様と皇太子殿下 5

王子、ふたりきりの風呂

しおりを挟む
これは、あれ、ヤバイ、というやつじゃ。
せっかく温泉もあるのじゃし、健康に良いことをさせるつもりで、風呂の話をしただけなのじゃ、まさかその、風呂にふたりきりで入るなんて、思いつきというか流れでというか、儂、積極的すぎぬか?

「1~2ヶ月で結果をだせ」

と言われたし、積極的に攻めた方がいいじゃろうが、その、いかん。興奮してきた。
いや、そっちの意味じゃなくて、こっちの意味で…って、こっちとは何!?

ドキドキしながらクロエと2人、リリに跨って温泉に向かう。

「温泉は、初めてです。」
「…楽しみか?」
「はい、実際にどういうものかを知るのは大事ですし、自分にとって大きな喜びでもありますから」

大きな歓び…違う、喜び。
おちつけわし、おちつけ。

----------

ついに、温泉についてしまった。

儂ら以外のものは…おらんな。

猟犬には来るなと言っておいたし、ロウとソラにも釘を刺したしの。

クロエは不安定な足場を上手に降りていく。
すでに義足が普通になりつつあるようじゃ…
器用なのも善し悪しじゃな。

温泉を見てクロエが叫ぶ。

「うわ、すごい!湯が白い!」
「足元に気をつけるんじゃぞ。今日は月が出とるから多少明るいとはいえ…」
「あっ、地面が温かい!ここなら南の方で栽培されている植物も生きられるかも…」
「はは、クロエは仕事熱心じゃの」

こうしてみると、領地を治めるとか戦をするなどよりも植物相手に奮闘しているほうが向いている気がするの…
楽しそうじゃ。

「ここへ服を脱いでな」
「はい」

大きな布を広げて岩の上に置き、そこへ服を脱ぐ。
クロエが左手だけでえっちらおっちら服を脱ぐのを見ると、つい手を貸したくなる。

「…手伝うか?」
「いえ、1人でできるようにならないと…」
「…そうか」

慣れてもらうと困るのじゃが…仕方ない。
お互い裸になって、手ぬぐいを持って風呂に…となってから、気がつく。

「…そういえば、義足を外さねば入れんぞ」
「そうなのですか?」
「うむ、温泉に金具を浸けてはいかんからの」
「へえー!」

早速クロエが左手で義足を…
ああっ、危ない。

「儂がやるから、じっとしていろ」
「…はい、すみません」

義足を外すために、クロエの前にかがむ…と…。
目の前にクロエのかわいいナニが…いかん、見るな。

「よし、できた。岩場で足元が悪いからの、儂に抱っこされてくれるか」
「…はい」

ぐっ…かわいい…かわいいのう!
かわいい、そう、かわいいじゃ、色気など感じてはおらん…のだ…ぐっ。

裸になったクロエを横抱きにして、湯に向かう。
自然と左腕が首に回され…肌と肌が触れ合う。
いかん、さっさと浸かろう!

ちゃぷん。

「…あったかい…何か、変わった匂いがしますね」
「温泉には、川の水にはない変わった成分が入っとるそうじゃ。
 金具を浸けてはいかん、と言うたろ?
 あれはここの成分と金属が反応しあうから、なのじゃ。不思議じゃろ?」
「はい…。
 何か、味も変わってますね」

そう言って、ぺろりと指を舐めるクロエは…
その、色っぽくて、そのうえ

「…変な味」

といって、ふふ、と笑ったりするので

……いかん。

これはいかん。

しかしここが濁り湯で良かった、首まで浸かれば何にも見えんから、ナニがナニしても大丈夫、いや、何もナニもない!ないったらない!!

ぐう…この前のロウの、あの話が…おのれ…

左手で顔をぱしゃぱしゃして、
うーんと伸びをしたりして、
うっとり、目を閉じて…

「ここ、お湯が濁ってるから、その…見えないから、いいですね」
「そうじゃな」

顔を赤くして、
秘密めいたことを言って、
また控えめに笑って…

「来て良かった…ありがと、エースさん」
「……また、来ような」
「はい、是非」

にっこり。

もう、だめじゃ…

儂は、少し外の空気に当たってくるから、と言い残して温泉から上がり、急いで己を鎮めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定 (pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

処理中です...