【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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王子様と皇太子殿下 6

青年は親友の過去を知る

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カラス君が、相談したいことがあると言うので家に呼んだ。朝からロウさんは不機嫌そう。

「なんだよ、自分で解決しろよな!もうオトナなんだからさぁ!ソラのこと何だと思ってるんだよ、あいつ!」
「そりゃ、友だちだと思ってるんだよ」
「友だち!?あれが友だちの距離感なの!?
 どう考えたっておかしいだろ!!」

ずっとこの調子で、カラス君に怒ってる。
そして見当はずれなことばかり言ってる。

「友だちにしては近すぎるって言ってるの!!
 友だちとか、信用できない!」
「おれが友だちって言ってるじゃん!なんで信じてくれないの!?」

朝からこんな喧嘩、もうやだ。

「カラス君のそばにいる友だちは、おれだけなんだよ?
 あとの1人は東の辺境から離れられないしさ。
 他の人は……戦争で、死んだ」

ロウさんが気まずそうにする。

「おれしか、いないんだ。
 何でも話せるは、おれだけ、だからさ。
 知ってるでしょ?おれとカラス君の間に何があったかって…。
 それでも友だちでいようって、お互い決めたんだ。
 離れたほうがいいかもって何度も思ったけど…そうしたらカラス君を見殺しにすることになるから」

どうして分かってくれないんだろう。
カラス君がどんな思いをしてきたかなんて、今更説明なんてしたくもないのに。

「おれ、ロウさんに『先生やユーゴさんと会わないで』なんて言った事ある?
 『エースさんと仲良くしないで、縁を切って』なんて言った事ある?
 なのにおれにはカラス君と縁を切れって?
 だったら今すぐ学園を燃やして来てよ。
 学生も先生の研究成果も、全部灰にしてきてよ。
 出来ないんでしょ?
 それは、おれがロウさんにとっての1番じゃないからなの?」

俺がそう言うと、ロウさんは黙った。
黙って、黙って…それから、言った。

「…わかったよ。でも、今日はオレも一緒にいる。
 ……いい、かな?」
「…うん、カラス君がロウさんにも相談したいって言ってるから、いいよ」
「……えっ?」

だから昨日言ったじゃん!!
何で聞いてないの!?

----------

それで、今、相談に乗ってる…んだけど…その。

「精通がこないの」

って、それロウさんが聞いてていいやつなの?

ロウさんが珍しく気を利かせて
「お、オレ、あっち行ってるほうがいいよな?」
って言ったのに、カラス君は
「ううん、ロウさんにも、気づいたことあったら言ってほしいから…居てもらっていいですか?」
って言うんだ。

ロウさんも自分にいて欲しいなんて言われると思ってなかったみたいで、

「お、おう、じゃあ…聞く」

なんて神妙な顔で頷いて、椅子に座り直す。

聞くと、エースさんと毎日自慰してみるんだけど、どれだけ気持ちよくなっても出ないんだって。

毎日って…あのエロ王子、殺す。

「勃起はするけど…出なくて、やっぱり僕…不能なのかな…って、思って…やっぱり、あんなことばかりしてたから…その、だめになったのかな、って」
「……うん」

カラス君が、遠慮がちに、さらに言う。

「じつは、ね、借金、減らすのに、ああいうの、たくさん、してたこと、あって、それで…もう…ぼく、カラダを使いきってしまったのかなって…おもって、自分の、せいなの、自分が悪いの、分かってるんだけど、分かってるんだけど…」

おれたちは慌てて否定する。

「カラス君は何にも悪くないよ!」
「そうだぞ!悪いのは、そういうこと要求する奴らの方だ!お前は悪くなんかない!」

カラス君が俯きながら、涙を堪えて言う。

「でも、自分で、分かってて、アレごときですむならそれで…って、自分で自分のこと、利用したんだ、だから…きっと、男の機能、いらないだろって…神様が…怒ったんだ、だから…」

こんな話…今まで、してくれなかった。
きっと、1人で抱えて、死んでいくつもりだったんだ。

だって、カラス君は今まで、


もう……何度も。


「カラス君、そんなこと言うなら…借金って、税金払えなくて、北の村が作ったやつのことだろ?ならみんなが悪いよ、おれも…ううん、おれが1番悪いよ…だって、おれの村の借金返すのに…おれが褒賞金欲しさにカラス君のこと誘わなきゃ、今でも東の辺境で…楽しく暮らせてたかもしれないのに」

だから、カラス君は悪くないよ。
だのに、カラス君は、まだ言うんだ。

「違う!
 ぼくが、ソラ君のこと助けたいって思ったのは、ぼくだもん!
 だって元はと言えば…ぼく、の…「父上」のせい…だもん…だから、少しでも…役に立ちたくて、そうしたら、友だちでいられるって…!
 こんなぼくのこと、友だちって言ってくれるの…ソラ君しか、いないんだもん…それに、友だちは、助け合うもの、でしょ?」

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