孤独な屋敷の主人について[完]

なかあたま

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秘密は柑橘の匂い

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「ん、はぁ……、はっ、むくちくん、いじわる……」

 ムッとした兄が俺を見上げる。視線は交わらないが、そんな表情が可愛くて声を出さずに笑った。オイルに濡れた胸の突起を弄りながら、何度も唇同士を重ねる。はふはふと必死に呼吸をしながら口内を侵蝕される兄が、俺の肩を押し返した。

「ね、もう……いいから、むくちくん……」

 重なる快感に耐えきれないのか、兄が弱音を吐く。もう一度、指の腹で乳首を撫でるとカルベルが切なそうに眉を顰めた。

「だめ、あぅッ……もう、きもち、いいの、やだ……っ」

 彼のセリフに脳が破裂しそうなほど興奮する。心臓がバクバクと脈を打ち、脂汗が吹き出た。舌を伸ばし、突起を突く。唇で喰むと、両手で髪をクシャリと掴まれた。

「ぼ、ぼく……おかしく、なっちゃうよ……むくちくん……」

 上擦った声に、思わず爆ぜそうになる。鎮めるため、父のふてぶてしい面構えを脳内で必死に思い出した。兄の美しい喘ぎと脳内の男がミスマッチし、心を落ち着かせるため深呼吸をする。
 体を離し、カルベルを見下ろした。汗で額に張り付いた前髪と火照った頬、潤んだ瞳。肩で呼吸を繰り返し、首を横に振る兄は今すぐにでも挿入してしまいたくなるほど魅力的だった。

「あ、ぅ、……あー……っ!」

 後孔に指を滑り込ませ、折り曲げる。イヤだと泣きながら腕を突っぱねる兄が子供のようで、口元が緩んだ。弟にこんな一面を見せていると知ったら、彼はどんな反応をするのだろうか。
 グチュグチュと音を立て中を犯す。カルベルはやめて欲しそうに挿入していた指へ手を伸ばした。それをやんわりと払い除け、彼の善い部分をいじめる。

「あ゛、いやっ、いやだ、あ、……ぅ゛!」

 舌足らずな声で喘がれると、更に指先に力が籠る。

「ね、ぇ゛っ……、もう、だ、めっ、ゆるし、て、ごめんな、さぃ゛むぐち、ぐッぅ゛……!」

 ゆるして、ごめんなさい。兄に謝罪され眩暈がした。うまく呼吸ができず、酸欠に陥る。もっと追い詰めてみたくて、性器にも手を伸ばした。

「ッ~……!」

 腰が仰け反り、足がガクガクと震えた。鈴口から透明な液体が噴き出し、シーツへ散る。目を瞑り、唇を噛み締め、顔を真っ赤にした兄が、糸が切れたようにベッドへ横たわった。
 静かな部屋に二人分の乱れた呼吸音が漂う。兄の掠れた吐息が愛しくて、膝小僧にキスをする。

「ぅ……っ、ぼく……また、もらし、ちゃ、った……」

 兄がぐずぐずと泣き出す。以前、潮吹きをした時のことを思い出しているのだろう。あの時も羞恥に濡れた表情をしていた。
 彼の体を起こし、抱きしめる。

「う……ッ、いじわる、むくちくん……いや、きらい……」

 頬に擦り寄り、許しを請う。涙を舐めると、彼が肩を揺らした。

「くすぐったいよ」

 ふふ、と短く笑うカルベルが背中に手を回した。どうやら許してくれたらしい。慈悲深い彼の目元に吸い付いた。

「意地悪する無口くんは嫌だけど、ぬるぬるは、気持ちいいね」

 鼓膜を弾ける彼の声は、俺を酩酊させる媚薬のようだ。まだ発散できていない熱が腹の奥で蠢いているのに、それを声音で優しく愛撫する兄は、上出来な売女のようである。

「……けどね、これは手に使うものだから……こういうことに使っちゃダメなんだよ」

 優しく論され、ゆっくりと頷いた。
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