僕と君を絆ぐもの3(完結編)

はやしかわともえ

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第一話

試練の間

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シルヴァ寺院に足を踏み入れたレオと加那太は試練の間にやってきていた。
青い光が足元を照らしている。

「加那太、試練は自分を清めるためにする。そこに立つんだ」

「分かった」

足元に紋章の描かれたパネルが置いてある。加那太は言われた通り、そこに立った。

「目を閉じて」

レオに言われたとおりにする。
何故か暗闇に千尋が見えた気がした。


(千尋?)


変なざわめきを覚えるがこれがなんなのかは分からない。
その瞬間、建物が揺れ始める。

「なんだ?!加那太、来るんだ!」

「うん!」

レオの後を加那太は走って追い掛ける。
そこで千尋の姿を見た。
加那太は無意識に叫んでいた。
千尋が一瞬こちらを見る。
それは普段見る千尋の表情とはかけ離れていた。冷たい表情。
大きな太刀で巨大な神を切り裂いていく。その動きに全く無駄はなかった。
トレントはあっという間に切り裂かれた。
加那太はしばらく呆然としていた。

(千尋…なんで?)

千尋が目の前で太刀を納めている。
加那太は思わず彼に駆け寄っていた。

「千尋!!なんで?何をしているの?どうして神様を?」

千尋は何も答えてくれなかった。
だが彼は、自分を軽く抱き締めてくれた。

(千尋は僕のことが分かっている、元の千尋もちゃんといる…きっとなにかされたんだ。ハルカさんかな)

それが分かっただけでも十分だった。ハルカが絡んでいるのは間違いないはずだ。

「大丈夫か?加那太!!」

レオが駆け寄ってくる。
加那太は頷いた。

「神様は死んじゃったの?」

「俺にも分からない。神を傷付けられる武器なんて初めて見た…って、んん??」


レオにもようやくわかったようだ。

「もしかして、ハルカの論文に書いてあった特別な鉱石で作られた武器か?」

「多分ね。その武器は人間にも扱えたってことみたい」

「ハルカはそのことを知っていて書かなかったのか…」

レオがしょんぼりしている。
加那太は彼の肩を叩いた。
今は落ち込んでいる時間はない。

「ハルカさんは他の神様たちも倒しに行くかも」

「そんな!!まさか…まさかな」

レオは加那太の言葉をようやく理解したようだ。

「ハルカは本気で?!」

加那太は頷いた。

「ハルカさんは千尋を使って神殺しをしようとしている。
僕たちで止めなくちゃ!」

「で、でもどうやって?」

加那太にも何も思いつかなかった。

「レオ様!!」

オサが駆け寄ってくる。そして残骸となったトレントの前に跪いた。

「トレント!!どうして!!トレント!!」

オサが泣いている。見ているだけで心が傷んだ。

「すまない、オサ。俺達じゃ止められなくて」

「いいえ。レオ様とそのお連れ様が無事でよかった」

「オサさん、本当にごめんなさい」

加那太が頭を下げると、オサは首を振った。彼が言う。

「私はトレントを神としてだけではなく愛していました。
彼は概念化した。言葉を交わすことはもう出来ませんが、彼は私と共にあります」

「オサさん…」

(なんて強い絆だろう)

加那太はそれを愛しく想った。

寺院を出ると強い雨が降っていた。
オサに傘を借りて、二人は屋敷に戻ったのだった。
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