僕と君を絆ぐもの3(完結編)

第三話

日常

(あれ？)

加那太はふと気が付いた。目の前にあるのは見慣れた本棚である。

(あ、そっか。僕、蔵書整理してたんだった)

時計を見るとちょうど正午を指している。加那太は最後の本棚を確認した。
これで今日やるべきことは終わりだ。

(僕、随分ぼーっとしていたような？
もしかして熱中症？)

慌てて準備室に置いてある水筒から温くなったお茶を飲む。
少し落ち着いたが先程からある違和感は消えなかった。
ふと、スマホが振動しているのに気が付いて、加那太はスマホを手に取った。
千尋からだ。

「もしもし？千尋？」

「加那！大丈夫か？」

「え？大丈夫って、何も無いけど…」

千尋が慌てているのが不思議だ。加那太は聞き返すことにしてみる。

「千尋、なにかあった？」

千尋は困っているのか、唸ったあとこう言った。

「いや、わりぃ。多分白昼夢だ。
なんかよくわからないけど」

「そっか」

それから少し話して加那太は通話を切った。

(千尋にもこの違和感があったのかな)

だが、それがなにかは二人共分からなかった。

「加那、ハンバーグ食べる？」

「うん！」

加那太は母親が経営する喫茶店に来ていた。さすがにもう腹ぺこである。
今は休憩のため、店は閉まっている。

「いただきまぁす」

たっぷりチーズの載った大きなハンバーグにかぶりつく。
山盛りのライスが嬉しい。

「美味しい？加那」

「うん、おいひいよ」

お昼をしっかり食べて、加那太はお礼に店の掃除を手伝うことにした。
夕方からここはスナックになる。
時々だが、加那太は今でもこの店を手伝っている。
小さな頃から常連の客には可愛がってもらったものだ。

(お客様に笑顔になってもらわないとね)

テーブルをピカピカになるまで磨いて、外の掃き掃除をする。
もともとこういう作業は嫌いじゃない。

「加那ー！」

「千尋？！どうして？」

「いや、なんか妙にお前が心配になっちまって」

「仕事は？」

「前倒しで切り上げてきた。
帰ったら他のもやらないとだけど」

「とりあえず中でコーヒーでも飲んでてよ。
僕、掃除終わらせちゃうからさ」

「あぁ、そうさせてもらう」

(なんだか千尋に久しぶりに会ったみたい。この気持ちなんだろう。
わかんないことだらけだ！)

加那太は勢いのまま掃除を終わらせたのだった。