SARAという名の店と恋のお話

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第29話 唯一

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連休明けのSARA定休日。

二人が愛を確かめ合ってから初めてのデートです。

今まで何度もこうして食事をしたりしていたのに身体を重ね合って恋人同士なったら貴史の顔がまともに見れないでいる香織。
食事を終え少し歩き夜景が綺麗なバーラウンジに移動した。

お酒が入り緊張が解けた香織に

「やっと、いつもの笑顔になったね」

「いい大人が情けないですよね。店でも顔は見ているのに、二人きりになったらなんか緊張して恥ずかしくなって」

「照れてる香織も初々しくて可愛い」

「貴史さんはあのパーティーの時もそうだったけど、そういう事をさらっと言うから。
 言われた方はめちゃくちゃ恥ずかしいんです」

香織は照れを隠すようにカクテルに口を付けると一口飲んだ。
その横顔を見ながら貴史は

「やっぱり可愛いな」

と微笑む。

「もうっ」香織はと小さく漏らすと頬を赤らめた。

貴史は香織がやっと自分のものになって嬉しくて堪らないのだ。

香織はふっと思いだしたように

「そういえばあの指輪、わざわざ買ったんでしょう、どうしたらいい?」

「あれはそんなに高いものではないから普段使いに使って」

「でも・・・」

「じゃあ記念にとって置いてもいいよ。そうだ、新しいのを今度二人で買いに行こう」

「えっ、買うの?」

「そうだよ、結婚指輪。あっ、その前に婚約指輪!                                                                     うん、これから行く?いやもう遅いか」

浮かれているのはどうやら貴史の方なのかもしれません。

「あっ、そんな。あたし・・・」    

貴史は香織の左手を取り薬指を触ると

「本物で僕のものだと知らしめたいんだ。実のところ自分でこんなに独占欲が強いとは思っていなかった。
 前にも話したけど、今まで去る者は追わずで別れ話が出ても理由を聞くことも無かったし、聞いてもそれじゃあ仕方ないねって、追いかける事も無かった。今から思うと冷たい酷い男だったと思う」

「奥様と離婚するときも?」

「ああ、急に別れ話をされて『そう君が望むなら』と、」

「普通は理由を聞きますよね?」

「でも自分と別れると決めた人に何を言っても無駄たと思っていたし、ヨリを戻しても正直次の日から今まで通りに一緒には生活出来ないと思った」

「でもその時はまだ奥様を愛していたんでしょう?」

「たぶんね」

「最後に言われたよ。『貴方は優しくて紳士で私を尊重して自由もくれる。散々無駄使いしても怒らなかった。何をしても軽く窘める程度、それって私の事に対して無関心に等しいのよ』と」

「奥様はもっと貴史さんに構って欲しかったのよ」

「そうだったのかもしれない。当時仕事がめちゃくちゃ忙しく殆ど午前様で泊まりも当たり前だった。彼女も仕事をしていたからすれ違いだったし、飯を一緒に食べるのも月に2,3度だったな。
 たまの食事も僕としては彼女が大変だろうと思って、家ではなく外で待ち合わせて外食にしたり。
 でも家庭ってものが無かったというのが彼女の離婚の理由だった」

「寂しかったんでしょうね。今まで付き合った女性にもそうだったんでしょう?」

「貴方の事は好きだけど、と言われて去って行くのが多かった気がする」

「わかる気がする。女としてはもっと関心を持って欲しいし、やきもちだって妬いて欲しいもん」

「うん、だから今は香織のすべてが気になるし、誰かと親し気に話していれば間に割って入りたくなる。腕の中でめちゃくちゃ甘やかしてあげたいそう思っている自分がいる事が信じられないくらいなんだ。この独占欲も香織だからこそだという事を分かって欲しい」

「貴史さん。。。」

貴史の言葉が香織は嬉しかった。
自分をこんなにも欲してくれる人に巡り逢えるなんて6年間思ってもいなかったのだから。

「嬉しい、ありがとうございます」

それしか言葉に出せなかった。



「香」

そう呼ばれて冷めた頬がまた赤らむ。

「その呼び方・・・」

「だって、本当に親しいひとは香(かお)って呼んでるって、松ちゃんがいってたでしょう?僕も香織の親しい人になったんだからそう呼ぶ権利はあるよね?」

貴史の少し拗ねた表情を見て

「貴史さん、もしかしておじさんに対抗してるだけでしょう?うふふ、やきもち妬いてる」

上目使いにクスッと笑う香織の頭を抱え込み

「こら、大人をからかうな」

そいう言うと額にキスを落とした。

「こんな所でまたそいう事を、、、それに私は十分オトナです!」

真っ赤になる香織を見て貴史はまた『可愛い』そして、唯一無二の存在だと改めて思うのでありました。



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