呑気な薬師と領主さま

アキノナツ

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続編

精霊たちの騒めき(4)

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前半エミル視点、後半ヴィクトル視点です。
よろしくお願いします。


==============

 
「ドラゴンの鱗には興味ある?」

 茶器を落としそうになったよ。
 なったけど、高そうな茶器と高そうな敷物を汚す訳にはいかないと頑張りましたッ。
 これ絶対高いヤツだからッ!

「ドラゴン?」

 ひと呼吸して、久々に聞いた単語を返した。

 温泉にヴィクトルさまを誘ってるから、あの火山島に行く事になるだろうと思ってましたけど…。
 ドラゴンの話題だったらその時だろうと勝手に思っていたから、完全に油断していました。何故ここでドラゴンの話題ですか? それも鱗とは…。

「そう、ドラゴン。もう少し…うん、もう少ししたら、届くんじゃないかなぁてね。ドラゴンの鱗って、薬の材料とかになる?」

 目がキラキラしてる。これは単純に好奇心な気がします。この辺りが風の精霊さんに気に入られたのではないでしょうか。

 遠く離れた国の事だから、この国ではドラゴンなんて話でしか知らないと思うのですよね。僕がそうでしたから。S級の冒険者から買い物ついでチラッと聞いたぐらいです…。

「武器とか防具の材料がメジャーですけど…。手に入るんでしたら、試してみたいですね…」

 ちょっと歯切れの悪い殿下に素直に答えます。答えながら、頭の中はお薬の事でいっぱいです…。
 夢は広がります…。僕にとっては未知の素材です。削って、溶けるかな…混ぜるのは何にしようかなぁ…。

「そうか、そうか。来たら教えるよ」

 揉み手の殿下は楽しそうにしている。
 殿下の様子に妄想の海から帰って来ました。

 教えてくれるって…本当に来るんですか???

「実を言うと、どうしようかと思ってたんだよね。内容は分かんないんだけど、少しずつこっちに向かってるんだよ。何だか焦らされてる感じが、こう…なんというか、ワクワクしてきてね。この焦ったい感覚を誰かと共有したかったんだ。あっ、コレ、ヴィーには内緒ね」

 殿下は内緒がお好きなようだ。
 もしかすると内緒は内緒にしなくてもいいのかも…。違ったら怖いのでしないけど。

 そばで熱い風がそよっと吹いて、僕の頬を撫でていきました。
 びっくりしたッ。

「只今、戻りました」

 ヴィクトルさまが立ってます。

「え~ーーーッ、は、や、いぃィィ」

 殿下が、嫌そうに嘯いて、クッキーを齧ってます。
 これ美味しいので、僕ももうひとつもらいましょうか…。

「エミル、何もされてないですか?」

 森の匂いがするヴィクトルさまが抱きついてきます。僕はもぐもぐです。

 そういえば、オアシスでは一緒にいれる時は、膝の上に乗ってるか、常に身体のどこかが接触してましたね。
 とは言え、ここでもしなくても…。
 久々に気恥ずかしい気分を味わってしまいましたよ。殿下の視線が…。

「楽しいお茶会だったよ。ね? 殿下」

 気恥ずかしいのを何とかしたくて、必要以上にフレンドリーになってしまいましたぁ~。

「仲良くなってるぅぅ」

 ヴィクトルさまが嘆いてる。
 困りました。近くにある頭を撫でます。機嫌を直して下さい。

 殿下を見れば不敬は不問のようで、腹を抱えて笑ってます。楽しそうでなによりです。僕は恥ずかしいですが。

「面白いものを見せて貰った。また来てよ、エミル」

 サムズアップの殿下。
 フレンドリー過ぎないですか???
 いいのだろうか?

 恐る恐るサムズアップを返してみます……。

 ニッコリの殿下に正解だったと胸を撫で下ろした。

 ヴィクトルさまがスリスリしてくるので帰った方がいいようです。お暇しようとしたら殿下が僕にくっついてるヴィクトルさまを剥がして「エミル、彼を少し借りるね」と連れて行ってしまいました。

 仕方がないので、ソファに座り直して、帰り支度をします。

 大判の正方形の布を頭からすっぽり被り巻き巻き。
 砂漠の国では男も女も巻き方は色々だが普通のファッションです。これは理に適ったアイテムです。
 それに色抜けの髪とか気にする事なく過ごせて、日差しを緩和してくれる便利アイテム。気に入ってるのです。



 ++++



 殿下に腕を掴まれると、隣の仮眠室に連れ込まれた。恋人なら嬉しい行動なんですが、悪友では全然嬉しくない。

 狭くはないんだが、なんとも言えない気まずい空気などなんのそので、殿下は私の耳に口を寄せて話し始めた。

 エミルに聞かせたくない事?
 部屋を移動したのに近いな。

「彼は自分にあまり興味がないだけだ」

 興味がない?

「周りにも興味が無いかもと思ったら、世の中は好きなようだね。特に動植物が好きなんだね」

 チラリと表情を見れば、にこやかだ。

「光が強くなれば闇が深く濃くなるが、お前が死なない限り大丈夫だ。だから、死ぬな」

 死ぬ気はないが。エミルをおいては尚更だ。

「死ぬのは彼を見送ってからにしてくれ。もし死ぬ事があったら彼も連れていって欲しい」

 ???

「国の為、否、世界の為に」

 強い語気に頷いていた。

「光が強過ぎる。抑えの印は早めに考える。入れ墨を提案されたが、お前も考えてくれ」

 急がないと不味いのか?

「それから、前に相談されてたアレは、思いっきりがいいのは、……性格だから仕方がない。以上ッ」

 怒涛の言葉に、暫く頭で反芻した。
 要は私が死ななければいいんだな。

 ん?
 ーーー性格? セイカク?
 性格なの???
 あのスパッととか、性格なのか?!

 ……色々と危ない気がする。そばで見てないと…。

 部屋を出ると、ソファで帰り支度を終わらせた彼がうつらうつらしながら待っていた。無理をさせたか。

 遠出は初めてだったな。人とこうして過ごすのも。温泉に行こうと言われてるが、中々実現しない。

 そっと抱き上げると、寝ぼけてるのか、胸にスリっとくっついてくる。
 クンと重くなった。本格的に眠りに入ったらしい。可愛いなぁ…。

「お前、愛されてるのな」

 殿下がポツリと言った。布で隠れてるエミルを覗き見てる。

「お前たちの想いが光りを大きくしてるのだろうな。愛ってヤツだな。羨ましい…」

 エミルの顔を覗き込んでくる。
 あまり見せたくない。

 今恥ずかしい台詞を聞いたような……。愛? 大きく?

 ーーーえ?

「えっ?! えー?!」

 声が出てしまった。
 今日は色々驚かされる。キャパオーバーだ。愛し合ってるからなのか? 愛しちゃダメなのか????

「んー」

 腕の中で身動ぐ。
 慌てて口を噤むが、口元が緩む…。
 愛せずにはいられないじゃないか…。

「ニヤけるな」

 殿下がついっと離れた。

 愛されてるのか……という事は、やはりあの頃から愛されてたって事ではないか
 ニヤけるだろうよ!!!!!

「魔石は…あと1つぐらいかな? 頑張って探すか。じゃ、仕事に戻るよ」

 殿下が出ていった。

 あとひとつ。

 私には、精霊を見たり感じたり出来ないが、魔力は操り易くなってきていた。
 枷が外れていく気分だ。

 起こさないように魔法を展開して移動する。

 オアシスに着くと、周りに少し暖かい風が吹いた気がした。この気配が精霊なのか? オアシスの風だろうか…。

 戒めからの解放の喜びだといいのだが。すまない事をした。
 私への非難かもしれないな。

 この精霊は、戒めから解放されたら、離れていってしまうのだろうか……。
 離れられても当然か。

 深く反省してる。精霊をこんな状態にさせてしまって、申し訳なく思ってるが、伝わるだろうか…。

 目覚めたエミルがニコニコして嬉しそうに抱きついてきた。

「キラキラしたのが、嬉しいそうにたくさん舞ってるね」

 ん?

 何の事かとぼんやり考えてると唇に柔らかいものが重なった。
 積極的な薬師さまです。
 そっと腰に手を回した。
 愛してくれてありがとう。




 窓辺に白い小鳥が現れた。
 指を出せば、無視されて、エミルの手に乗った。

 ん????

 覗き込むと、『来たよ。来て』と書いてあった。

 暗号か? 分からん。

 出掛ける準備が始まった。ウキウキ気分は分かるんだが、私は蚊帳の外の気分で釈然としない。

「行こ?」

 可愛く言われたが、意味が分からぬまま転移魔法を展開する。

 手紙とアイテムのようなモノを手に殿下が待っていた。

「コレが例ので、コレは、読んで」

 エミルに、手のある二つとも渡した。『来た』物だろうが、誰から?

「ーーーーすごい! グランさんが僕の荷物を保管してくれてる! 取りに行こう!」

 懐かしい名を聞く事になった。
 荷物?

「もーーーーッ! 五月蝿い!」

 殿下が急に耳を塞いで叫んだ。眉間の皺がひどい。いつにも増して酷い奇行だ。

「すみません」

 エミルが萎縮して謝っている。エミルの所為じゃないと言おうとしたら遮られた。

「違う違うッ。精霊が急に怒鳴り出すから。初めてだ。風のじゃない…。コレは、火の精霊か? 聞き取れない。直接干渉してくるとは…。火のは騒音なんだな。すまぬが、静かにしてくれ…」

 殿下がげっそりしている。耳をクリクリしてる。相当な騒音らしい。

「どうやら、その男と魔石が関係してるらしい。ありがとう。風の…」

 北の国に行く事になった。




================


繋がりましたね。
ギルド便、何年掛かってるんでしょうね~。

RPG系ゲームとかで、バックの中に覚えのない手紙アイテムが入ってるのを見て首傾げた事ないですか?
頼まれてたの忘れてるんだなぁ~。あはは…


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