呑気な薬師と領主さま

アキノナツ

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続編

後日談】殿下の日常(王太子殿下のお話)

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今回は王太子殿下ともうお一人のところへ。



==============


 
「これは、これは……。やっと連れてきたら、また…随分と…様変わりしましたね」

 ヴィーが連れてきたエミルの様変わりに、なんと言えばいいか、言葉が見つからない。

 白く輝くような気配が消えている。加護はそのままのようだが、コレでは光属性を持ってるのかどうか怪しくなってくる。
 髪は茶。目だって。これは平々凡々…もの凄く平凡なんですけど…。

 エミルの入れ墨の提案から、改善案件でもあったので、なる早でと研究院に丸投げしたが急ぐ必要もなかったか? 否、焼印は辞めたいんだから急いで良かったんですよ。

 研究院から図案が幾つか上げてきたので、ヴィーの報告でも落ち着いたようだから、それを見せようと呼び出したのだ。でも、やってきた彼を見て、手にしていた図案を落としかける程、驚いた。

「なんやかやあってですね、えーと、そうッ! 元に戻りました。あっ、でも、背は縮んでたんですよ。身体は軽くて、よく動きますよ。急に眠ったりも殆どないですよ」

 エミルが驚く俺を見て、驚いてたようだ。慌てて、気不味さをなんとかしようと言葉を並べている。不満げな口調のところもあったが、手もバタバタさせて身振り手振りで話してる。なんだろう…可愛いな。年齢的にはおじさんだった気がするんだが。

 自分の容姿の変化にそれほど困っていないようだ。むしろ、こちらの方が本来の自分なのだと主張している。

 しかし、これは、再鑑定が必要なようだ。益々、研究院から隠さねばなるまい。

 あーーーーー、面倒臭ッ!

「報告はざっくり聞いてたが、エミルからも聴くとするか」

 面倒臭いが致し方ない。
 研究院が関われば、確実に二人が一緒にいるのは無理だ。然すれば、ヴィーが悲しむ。否、荒ぶる。あの件で懲りた。

 ん? エミルが研究対象としてココにいる事になれば、ヴィーがココにいる事になるのか?
 それは、いいなぁ……。イカンイカン!

 そんな事になれば、精霊付きの火力で城がマズイ事になるのが目に見えてるだろう。しっかりしろ、俺!
 先程、自分でも『荒ぶる』と言ってただろう。懲りただろう?

 危なかった。私欲で危機を招くところであった。

 茶の用意をしながら、考え事をしてたら、ちょっと渋めになってしまった。まぁ…いいかッ。

 図案を渡して、再鑑定の器材を取りに部屋を出る。機材の貸し出し理由は……適当にするか。

 なんだって、あの平々凡々なおっさんがヴィーを虜にするんだ。小柄なだけで、童顔のただの地味面のおっさんではないか。釈然としない。
 ちょいと小さくなって外見が幼さくなって、おじさん要素が薄れたが…。
 光属性だって、今のアレでは、ほぼないのではないか?
 癒し効果もなかろう?
 薬師としての腕は確かなものの様だが、特筆すべき事柄でもない。

 何がいいんだか……。常々の不満がフツフツと顔を出す。

 ヴィーは、三男坊だったんだぞ。領主など継ぐ事にならなければ、近衛としてココに居たはずなのに。
 俺も一人っきりでストレスに晒される事なく、ヴィーを揶揄って過ごせたのになぁ。

 アイツは、そこそこ優秀なのにサボり癖が玉に瑕。剣の腕ももっと真剣にすれば、学院トップも夢ではなかったはずだ。魔法も。

 剣技と魔法を合わせるなどという事を、事も無げにやるものだから、俺が評価基準を設ける様に手を回したな。単体評価だとアイツの評価は出来んのだよ。

 本人は皆が出来るものだと思っていた様だが……。

 アレも面倒臭かった。
 アレで、騎士団への就職もすんなりなるはずだったんだよなぁ……。

 領主なんてものになりやがって。
 呼びつけるにも、気を使う。
 家の事だから、仕方がない事だ。

 ゴネても致し方ないではないか。
 しかも、あの領地は隣国との防壁だから、腕の立つ彼の着任は丁度良いというのが、父の言い分だったな。
 兄たちも亡くなって、三男にお鉢が回ってくるとはな…。
 アイツに領主など向いてないのだ。

 なんでもやれそうだがな。ポテンシャルは高いんだよなぁ…。

 色々してくれて、部下から上がってくる報告書を読むのは楽しかった。
 あの時は風のが慌てて知らせてくれたな。荒ぶりやがって何をしてくれるってのもあった。

 見てて飽きないんだよなぁ。
 揶揄い甲斐のある男を…取られてしまったよ…。

 取られた…な。

 持ってきた機材をセットする。クッキーを食べてるエミルはおっさんに見えないな…。リスみたいに食べやがって。
 図案は持ち帰っていいかと尋ねてきた。じっくり見たいらしい。急がなくなったし、俺もひと目見て図案の出来に悩んでたから、そちらで悩んでもらおうと快く許可した。

「やはり、光属性は無し」

 思った通り、面倒臭い事になった。
 エミルは自分の手を裏表と返してじっと見てる。光属性は消えたって訳ではないんだが…。持ってるはずなのに…。悩ましい。

「エミルは、成人の時もコレと同じ結果だったんだね?」

 だから、見落とされて、後発発現で見つかった。
 石板に表示されてる属性割合に光属性は無いと示している。

「そうです」

 石板を見つめてるエミルが答える。

「どうしたものか………。放出が原因か? 以前は何で放出したんだ?」

「僕、成人前に死にかけました」

 明るく何か言った。呑気に渋めの茶を飲んでる。菓子を摘んでいる。その仕草のなんというか…のんびりとした空気が漂ってる。

 ん??? 今なんと言った?

 言葉と表情が噛み合ってないような。ニッコリ笑って言ったよな。

「エミル、さっきのを、もう一度」

 キョトンとしてる彼に、プリーズと手を向ける。

「ん? さっきの? あー、死にかけました」

「死にかけたの?」

 聞き間違いじゃなかった。

「流行病で。両親は死んでしまいました。僕はなんとか持ち直して。教会のお陰で、学校も出れたし、仕事も出来て、死ななくて良かったです」

「あ……」

 明るく言ってくれてるが、軽い口調だが、内容重いんですけど!

「そうか…」

 資料にもあったな。忘れてた。両親を殺した病気を憎んだのか…? 病気を殺した? そう言えば、彼の村は全滅はしてなかったな…。
 両親は救えなかったという事か……。コレは伝えない方がいいな。

 こちらの反応に不思議そうに見遣ってくる。
 ヴィーは全て知ってるという澄まし顔で、彼の頭を撫でてる。よく言えたねって感じか?
 イラッとしてしまった。
 おっさんだぞ。童顔だけど、子供じゃないぞ。小さいけど、おっさんだ!

 エミルが撫でる彼を見上げてる。お前、なんちゅ甘い顔してやがる。
 見た事ないよ、そんな顔…。

 そうか…。ヴィー…お前は、分かったんだな。

「また発現してくるのかね…。入れ墨はその時でいいか。この調子なら魔道具でもいいし、考えといてくれ」

「分かりました」

 元気にニッコリ応えてくれた。ふわっと暖かな何かを感じた。

 嗚呼、コレか。

 俺も時々お茶に呼んでいいかな……。

 癒しはしっかりあるよ。
 呑気なのが玉に瑕だ。

 お似合いの二人じゃないかね。

 あーーーーッ、俺もパートナー欲しいなぁぁぁああ!
 癒してくれるのを所望!

 政略結婚の話しかないけどな!

 仲睦まじい二人を見送って、仕事に戻った。





おまけ》》》


 
 火山島の片隅で草木の汁でお客さまの肌に草花の模様を施してる店。
 店には草木染めの布や小物も置かれていた。

「お姉さん! お久しぶりですぅ」

「おや? アンタ変わらないね。なんかいい薬でもあるのかい?」

「覚えてくれてたんですか? 嬉しいですね」

「あんだけ話に花が咲いたお客さま忘れる訳ないだろ? で? 今日は何を描こうか?」

「それはまた今度で。お仕事の話です。この図案どう思います?」

「仕事? 入れ墨の図案かい? なにこれ、ダッサ」

「ですよね~」

「アタシならこうするねッ」

 赤鉛筆でガリガリ書き加えられていく。何枚も修正が加えられた。二人楽しそうに笑ったりしてあれこれ話して進めていった。

「ありがとう! 採用されたら、デザイン料たんと出して貰うから」

 小さいけど透明度も輝きも素晴らしい裸石が図案の紙束を回収した後に置かれた。

「この宝石貰えただけで十分だが、期待せずに待ってるよ」

 その後、たんと入ったデザイン料でお店を改装しましたとさ。




==============


次回はちょっと回収回となります。

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