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番外編:『エミルの日常』
1)露店開業
しおりを挟むあー、あー、聞こえてるでしょうか?
只今僕はダンジョン近くで露店を開いて、商い中です。
冒険者さん達がいい感じで覗いて行ってくれてます。
ポーションもついでに民間薬も売れています。そこそこの稼ぎです。
今日は何か美味しい物を食べに行きたいですね。ここの名物って何なのでしょうねぇ。
そんな事を考えながら、近くの町での美味しいお店を訪れる冒険者さん相手にリサーチなどしています。
うーーーーー。
こんな実況妄想でもしないとやってられません。
ヴィクトルさまがこの上級ダンジョンに潜られて、まだ出て来てくれません。
『出てこなかったら、冒険者と一緒に町に戻って』なんて言ってダンジョンパーティの方へ駆けて行きました。
S級の冒険者さまですから、心配なんてしてませんよッ。モンスター相手にはね。
僕のヴィクトルさまなんですから。
強いんですから!
サクッと行ってくるって言ってたもんッ。
ーーーーー日が暮れそうです。
朝早くにパーティ組んで入ったんだよね。
ヴィクトルさまはソロが基本なんだけど、パーティを組む事もあるのだそうです。ギルドからも依頼されるのだとか…。これもお仕事です。
自分都合で動けないんだろうなと思うんだけど、オアシスでは定時に帰ってくるのが当たり前なので、この残業ちっくな時間が……なんだか……嫌です。
組んだパーティのメンバーも魅力的な方々なのも、モヤモヤします。
僕のヴィクトルさまはもっと魅力的です。
あの魅力と実力にメンバーさまがキュンとされては、僕に勝ち目がないように思うのです。
こんな茶色の冴えない髪色におめめもぱっちりしてる訳でもなく、色も茶色……。
童顔でちんちくりんのおっさんです。縮んだからね。若く見られると言うより幼く見られてる気がするんですが…。
あ、愛、愛されてる(恥ずかしいッ!)自覚はあるんですが、(あつ~)
ヴィクトルさまに送られる秋波を阻止する事は出来ないじゃないですかぁぁ…。
あー、まだ起こってない事に嫉妬しそうです。
ううぅぅ……胸がチクチク、もやもやします。
日が暮れる前に町に戻らないと戦闘能力のない薬師は危険です。
この冒険者さんを最後にしましょうか。
町に帰るか訊いて、同行がお願いできたら、ご一緒しましょう。
商品を品定めしている間、僕はダンジョンの方向を見てしまいます。
帰ってこないね……。
もうここに野営しちゃおうかな……。
「ねぇ、夜は流石に居ないよね?」
帰るかどうかを訊く前にそんな事を言われてしまいました。
「開いているとイイですか?」
僕も言い出せません。この様子では、ダンジョンに潜るんですね。
「そりゃね。でも、夜はこの辺りも様変わりだからな。無理はしない方がいいよ。ーーーーコレちょうだい」
品物をお渡しして、帰るタイミングを逃してしまいました。
次に来た冒険者さんと帰りましょう。
片付けながら、お客さまを待ちます。
森は日が翳るのが早いですね。
ブルっと震えが走ります。
慌てて片付け、周りを伺います。
入っていく冒険者さんは居ても、帰る方はおられないようで。
完全にタイミングを逃したッ。
とりあえず、帰りましょう。
リュックを背負って、小走りにダンジョンを後にしました。
…道、コレで、合ってますか?
闇が迫ってます。
身体が冷えます。
嫌な汗が噴き出て来ます。
体感温度がバグってます。
もうダメかも…。
何が?
道に迷ったんですよ…。
大木がある時点で道から外れてます。
行きにこんなのなかったです。
木の周りをぐるっとしてみたら、裏に大きな洞が開いてました。
さっきから霧のような小雨が煙るように漂うように降っています。
町に行くのは諦めて、ここで一晩お世話になる事にしました。
中を整えて、ひと息。外からの雨風は十分に防げます。縮んで良かった点ですかね。すっぽり入れてます。
リュックを漁ったら、焼き菓子が少し、お店をしながら摘んでた残りです。無いよりマシですね。
モキュモキュ食べて、リュックを抱え、『隠匿の布』を被りました。適度に温度と音を遮断してくれ、快適温度と静けさです。
ダンジョンから離れたと思ってたけど、本当に離れられてるんだろうかが不安です。
外の脅威は匂い消しとこの布でたぶん大丈夫。元々、魔獣は人を無闇に襲いたくない動物だし。獣はダンジョン近くには居ない。ここが離れたところだとしたら、匂い消しで大丈夫。
問題はダンジョンモンスター。
アレは確実に人を襲う。
出会ったら、出会わなくても接近で積極的にぐわっと来ます。ダンジョンから離れてる事を祈るしかない…。
寝れないね…。
実際は、スーッと寝そうにというか寝てました。ちょっとだと思いたいですが、自分でも呆れちゃいましたよ…えへへ…。
目が覚めたのは、木の周りを地面が擦れるような引き摺るような音が断続的起こってるのに気づいたからです。
魔力を意識して使います。
コレでこちらの気配は消えたも同然でしょう。
ーーーー早く朝になって……。
心細いのは変わりありません。
「エミル? そこにいるんだろ?」
眠いです。もう少し寝ていたいです…。
いつも起こしてくれる声。
もうそんな時間ですか?
布からもそもそと出ます。
「頭?! 人?!」
別の声に驚いてまた潜ってしまいました。
な、何なの?!
寝ぼけ眼もぱっちり開きましたよッ。えーと、僕寝てましたッ。
「ありがとう。もう大丈夫だ」
ヴィクトルさまの気配だけになった。
こそーっと顔を出します。
言いつけを守らず、野宿をしてて、しかも、危険かも知れない場所で寝てましたからね…。
えへへ…と笑ってみたけど、赤い目が吊り上がってます。
怖いぃぃッ!
射竦められて動けない。布も被れず、ぷるぷる震えるだけです。
動けない僕は、ヴィクトルさまに何もかも一緒くたに、ごっそり抱き抱えられました。
「帰る」
彼の温もりに安心してしまいます。怒り心頭の人に抱えられても…。
転移魔法で宿屋へ。今の拠点にしてる部屋です。
「何故、ダンジョン近くで野営してた?」
身綺麗にされて、ヴィクトルさまのお膝の上です。お風呂でホコホコです。
「町に向かったはずですよ。迷ったみたいだけど…」
ダンジョンの近くだったんですね。
「ーーーーー無事でよかった」
抱き締められました。
言いたい事はいっぱいおありのようですが、怒りはどうやらおさめてくれたようです。
僕はモンスターに誘われたらしいのです。それで道に迷ったとか…。本当かな…自分で迷った気がします。
使っていた薬草類が守ってくれたのか。
でも、僕寝ちゃったんだよね。
もしかしたら、そんなに危機感感じなかったのかな?
木の周りにスライムが円陣組んでたらしいです。
ーーーースライム?
木の周りにスライムくん達がぷにぷにと… ちょっと可愛いと思ってしまいました。
ぷにぷにしたのが、木の周りをぐーるぐると…ぷにぷに…プニョプニョ…と動いてたんですよね…。
うふふ…可愛い。
ヴィクトルさまに頬っぺた引っ張られました。
「エミルッ、笑い事じゃないです!」
赤い目がつり上がってます。お怒り再びです。えーと…怒らないで? 『反省してます』と上目遣いに見つめます。
おじさんは時々ズルいのです。
ベッドにお誘いしてしまいましょうか?
……寂しかったんです。一緒に帰りたくて…待ってたんです。言わないけど、ぎゅっと抱きしめてくれました。僕も抱きしめ返します。一緒がいいんです…。
「本当に心配したんですからね…」
============
次は、露店の様子などを…続きます。
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