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理解
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だからなのかとアリシアは納得した。
ジェイデンとロウエンは互いに想い合っているが、同性同士のため婚姻関係にはなれない。
さらにジェイデンは血の暴走による苦痛に悩まされている。
これを解消するためには、どうしてもアリシアを抱かなくてはならない。
(そういうことなのね。大公様が私を抱くとき以外、お屋敷に帰られない理由もこれでわかったわ。お二人がそんな仲だったなんて……)
ジムのせいで同性同士の仲に偏見を持っていた。
大公と皇帝。
世間的にも注目される二人は、こういった形でしか一緒にいることができない。しかも症状のために、嫌でも定期的にアリシアを抱く必要がある。
そう思うと、ジェイデンが可哀想に思えてきた。
これだけ人が羨むほどの多くのものを持っていながら、運命の伴侶などという呪いのせいでアリシアを抱かなくてはならない。
(結局は大公様も被害者なのね。男性がお好きな方なのに、私を抱かなくてはならないなんて。だから今まで仕方なく娼婦で済ませていたのね……)
アリシアの中で、全ての物事が繋がった。
「さぁ、アリシアさん。貴女も怪我をしてますよね? 治療してもらいましょう」
ロウエンと話していたジェイデンが、アリシアに話し掛けてきた。
「……大したことはないので、治療など必要ありません」
眠っているローの手をそっと離すと、その手を布団に入れて肩まで掛けた。
立ち上がって改めて並んでいる二人を見る。
二人共タイプは違うが、恐ろしいほど美しい容姿をしていて高い地位に君臨している。
こうして並んでいると、とてもお似合いに見える。
思い返せばアリシアが知る限り、ジェイデンとロウエンは常に共に行動していた。
自分だけが被害者だと思っていたことが恥ずかしい。
人は見かけで判断してはいけないのだと反省した。
「貴女から血の匂いがします。どこか怪我をされているのでしょう」
「少し転んで擦りむいただけです。大したことではありません」
「転んで擦りむいたっ! 大変ですっ、すぐに治療をしましょう!」
「私は平気です。このくらいなんともありません。放っておけば治ります」
怪我をしているアリシアよりもジェイデンのほうが慌てている。
普通の貴族の女性ならば、少しのかすり傷でも慌てふためき、体に傷が付くことを極端に嫌う。
しかし夫に暴力を振るわれ続けていたアリシアは、こういったことに慣れてしまい、なぜジェイデンがここまで慌てているのかわからなかった。
「平気ではありません! 少しの怪我でも放っておけば大変なことになります。きちんと治療してもらいましょう!」
なせジェイデンがここまで焦っているのかわからなかった。
たしかに膝の傷はずっとズキズキしていたが、こんな痛みなど日常茶飯事だったので、アリシアにとってとくに気にすることでもないのだ。
「怪我をした箇所をお見せくださいっ」
「いえ、結構です……」
怒ったように言われ、アリシアは戸惑った。
どうして擦りむいただけで、こんな風に言われるのかわからなかった。
アリシアが怪我をしても叩かれても病気になっても、心配してくれると者などここ何年もいなかった。
まるで他人事のように不思議そうな顔をしているアリシアを見て、ジェイデンは眉間を揉みながら疲れたように呟く。
「ふぅ……、貴女は私が思っているよりも中々に曲者です」
「――えぇ。おそらく、そうだと思います」
アリシアは自分でも自分が変わっていると思っていたので、ジェイデンの意見に素直に賛同した。
「ブッ、ワハハハハハッ……!!」
ここで後ろでやり取りを聞いていたロウエンが、また腹を抱えて笑い出した。
「――陛下っ!」
「クククッ……! はっ、ハハッ! 悪い、ジェイよ! お前の伴侶は実に愉快な人だっ! 俺をここまで笑わせる女人は中々おらんぞっ。気に入った!!」
今度はジェイデンが呆れたようにため息をついていた。
ジェイデンとロウエンは互いに想い合っているが、同性同士のため婚姻関係にはなれない。
さらにジェイデンは血の暴走による苦痛に悩まされている。
これを解消するためには、どうしてもアリシアを抱かなくてはならない。
(そういうことなのね。大公様が私を抱くとき以外、お屋敷に帰られない理由もこれでわかったわ。お二人がそんな仲だったなんて……)
ジムのせいで同性同士の仲に偏見を持っていた。
大公と皇帝。
世間的にも注目される二人は、こういった形でしか一緒にいることができない。しかも症状のために、嫌でも定期的にアリシアを抱く必要がある。
そう思うと、ジェイデンが可哀想に思えてきた。
これだけ人が羨むほどの多くのものを持っていながら、運命の伴侶などという呪いのせいでアリシアを抱かなくてはならない。
(結局は大公様も被害者なのね。男性がお好きな方なのに、私を抱かなくてはならないなんて。だから今まで仕方なく娼婦で済ませていたのね……)
アリシアの中で、全ての物事が繋がった。
「さぁ、アリシアさん。貴女も怪我をしてますよね? 治療してもらいましょう」
ロウエンと話していたジェイデンが、アリシアに話し掛けてきた。
「……大したことはないので、治療など必要ありません」
眠っているローの手をそっと離すと、その手を布団に入れて肩まで掛けた。
立ち上がって改めて並んでいる二人を見る。
二人共タイプは違うが、恐ろしいほど美しい容姿をしていて高い地位に君臨している。
こうして並んでいると、とてもお似合いに見える。
思い返せばアリシアが知る限り、ジェイデンとロウエンは常に共に行動していた。
自分だけが被害者だと思っていたことが恥ずかしい。
人は見かけで判断してはいけないのだと反省した。
「貴女から血の匂いがします。どこか怪我をされているのでしょう」
「少し転んで擦りむいただけです。大したことではありません」
「転んで擦りむいたっ! 大変ですっ、すぐに治療をしましょう!」
「私は平気です。このくらいなんともありません。放っておけば治ります」
怪我をしているアリシアよりもジェイデンのほうが慌てている。
普通の貴族の女性ならば、少しのかすり傷でも慌てふためき、体に傷が付くことを極端に嫌う。
しかし夫に暴力を振るわれ続けていたアリシアは、こういったことに慣れてしまい、なぜジェイデンがここまで慌てているのかわからなかった。
「平気ではありません! 少しの怪我でも放っておけば大変なことになります。きちんと治療してもらいましょう!」
なせジェイデンがここまで焦っているのかわからなかった。
たしかに膝の傷はずっとズキズキしていたが、こんな痛みなど日常茶飯事だったので、アリシアにとってとくに気にすることでもないのだ。
「怪我をした箇所をお見せくださいっ」
「いえ、結構です……」
怒ったように言われ、アリシアは戸惑った。
どうして擦りむいただけで、こんな風に言われるのかわからなかった。
アリシアが怪我をしても叩かれても病気になっても、心配してくれると者などここ何年もいなかった。
まるで他人事のように不思議そうな顔をしているアリシアを見て、ジェイデンは眉間を揉みながら疲れたように呟く。
「ふぅ……、貴女は私が思っているよりも中々に曲者です」
「――えぇ。おそらく、そうだと思います」
アリシアは自分でも自分が変わっていると思っていたので、ジェイデンの意見に素直に賛同した。
「ブッ、ワハハハハハッ……!!」
ここで後ろでやり取りを聞いていたロウエンが、また腹を抱えて笑い出した。
「――陛下っ!」
「クククッ……! はっ、ハハッ! 悪い、ジェイよ! お前の伴侶は実に愉快な人だっ! 俺をここまで笑わせる女人は中々おらんぞっ。気に入った!!」
今度はジェイデンが呆れたようにため息をついていた。
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