変身HERO異世界へ征く!

加賀林檎

文字の大きさ
10 / 111
グラード王国王都ヴェーテル

……火事、だと?

しおりを挟む
怒声は、昼食を済ませたカフェの方向から聞こえた。
それは、次第にエスカレートし、男達はどつきあい、喧嘩へと発展していく。
これは穏やかでないなと、信達は駆け付ける間、カフェの店主は妻に騎士を呼んでくる様に頼み、自らは仲裁に入るも殴られ、地面に叩きつけられる。
そして、喧嘩が続いた結果、殴り跳ばされた男の1人がカフェのキッチンまで吹き飛ばされ、キッチンの火は木造2階建てに燃え移ってしまう。

「!?、火の回りが早い!」

信は言葉の通りの異変に気が付いた。
キッチンに転がった男は頬を抑えながら、

「ヤバい!油がひっくり返って引火した!」

フラフラと歩きながら、逃げて来た。
殴った男も

「やべぇっ」

と言って逃げようとしたが、駆け付けた騎士達に抑えられ捕まった。

だが、問題はここからであった。

「あぁっ!?店が、家が!」

後からやって来た店主の妻が、悲鳴をあげながら火の中へと飛び込もうとする。

慌てて、信は店主の妻を羽交い締めにし制止させる。

「ダメだ。火の回りが早い。家具等も回収が出来ない。」

信がそう言いながら、サラに介抱されている店主の元へと、引き摺って連れていく。

すると、店主も慌てながら大声で信に告げる。

「違うんです!中の2階には、娘が取り残されてるんですっ!」

「な、何ぃっ!?」

ごうごうと燃え盛る店を見て、泣き叫ぶ夫婦。

サラは騎士に火消しを連れて来るように指示を出し、騎士も慌てて要請の為に走りだした。

「……ダメだ。間に合わない。」

信がポツリと呟く。
夫婦は抱き合いながら、号泣をして絶望していた。

「そんなぁ………間に合わないなんて。」

誰しも無力感に打ちひしがれている中、信だけは違った。

「違う!火消しを待っていては、救出が間に合わない!!」

決意ある眼をした信が夫婦を見下ろしながら、強い口調で言葉を吐く。

「俺が助けに行く。」

サラが、夫婦が、騎士が、その場に居る誰しもが、信を凝視する。

「それでは、あなた様まで焼け死んでしまいます!」

店主が、そう言うも夫婦の涙が信の胸を打つ。

「……っ!時間が無い!!」

信は変身ポーズを取り、コマンドワードを叫ぶ。

変神へんしん着装ちゃくそう!」

すると、眩い光が信の体を包むと、ミッドナイトブルーの機械鎧の姿の男が、そこに現れた。

「2階だな。いくぞ!とうっ!」

メタルバトラーになった信は、ジャンプして2階の窓を突き破って侵入した。

窓を破った瞬間、爆発音と共に炎が巻き上がる。
加熱された、火の精霊石が新鮮な酸素に触れ、軽い爆発、バックドラフトを引き起こした為であった。

メタルバトラーが突入した燃え盛る窓際を凝視しながら、人々は無事を唯々願うばかりだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...