28 / 111
暗雲たちこめる王国と公国
一方、その頃。な敵と夫婦とHEROの存在。
しおりを挟む
グレイと敵に本人の知らぬ所で付けられた名前の男が、薄暗い謁見の間にて、玉座に座る者に対し、うやうやしく片膝を着いて、報告を済ませていた。
「…………で、ございます。して、次の一手は如何なさいましょうか?……我が主。」
主と呼ばれた者は、黒い影を少し揺らして、何かをグレイに伝える。
「……………………………………。」
グレイは、それを聴くと、
「……はっ、畏まりました。しかと、遂行致します。」
一層、深々と頭を下げた。
グレイは退出する際、フードの奥から、鋭い眼光がキラリと一瞬光らせて去った。
その頃のヴェーラング城での
とある夫婦の会話。
サイが少し、興奮気味に話をしていた。
「ネーネリア。本当に余は驚いたぞ。シンが、あそこまで敵の動きを予測するなんてな。」
ネーネリアと呼ばれたのは、サイの妻、王妃の事である。
「まぁ?そうですの?シン様は、深謀の殿方でしたのね。」
「うむ。余も、『武』の一面しか見抜けなかった。これで、シンの予想があたれば、余の友は素晴らしい人財でもあると言う事だ。」
ネーネリアは少し考えてから、
「ならば、陛下は何故、シン様を臣下にお加えされなかったのですか?」
すると、サイは答える。
「あやつを観ていると、ふと、臣下としては勿体無いと思うたのよ。」
「勿体無い?」
ネーネリアの言葉に頷くサイ。
「うむ。勿体無いぞ。ただ忠誠を尽くすのではなく、余の本当の力となって、国を良くして貰う者が必要なのだ。シンとは、単なる忠臣ではなく、余に言うべき事を言える、そんな対等を期待してるのよ。」
陛下は幼少より、文武両道の教育を受け、その対等なる者は居なかった。
作る暇も無かった。
初めてのシンの謁見で、サイは何かを感じたのだろう。
サイ自身も口から「友」と、あの場において、すんなりと出てきた。
何かとは、それは判らない。
だが、サイはシンに心を王室の者以外で、初めて開いた人間と言える。
会議の場においても、シンには『武力』のみの人間と誰しも思っていたのを、『知略』の面を披露した時のサイの慌てた態度や、豪快に笑いとばす在り方は、以前には見られないものだった。
シンの存在は、サイのみに影響を留めなかった。
サラに対してもである。
どんな異性に対しても、無関心であり、健気に兄達を支えようと、武の方面で鍛え上げていた。
前国王による政略結婚の為の縁談も踏み倒すほどの、じゃじゃ馬ぶりであった。
しかし、シンと出会ってから、何故かそれは影を潜め、彼に惹かれているのは、誰しもが認め疑う事は無い。
人たらしと言うのだろうか。
何か、特別なオーラを人々は本能で感じている様であった。
術法の『魅了』とは違う魅了。
彼には、それが備わっている様にも思えた。
「…………で、ございます。して、次の一手は如何なさいましょうか?……我が主。」
主と呼ばれた者は、黒い影を少し揺らして、何かをグレイに伝える。
「……………………………………。」
グレイは、それを聴くと、
「……はっ、畏まりました。しかと、遂行致します。」
一層、深々と頭を下げた。
グレイは退出する際、フードの奥から、鋭い眼光がキラリと一瞬光らせて去った。
その頃のヴェーラング城での
とある夫婦の会話。
サイが少し、興奮気味に話をしていた。
「ネーネリア。本当に余は驚いたぞ。シンが、あそこまで敵の動きを予測するなんてな。」
ネーネリアと呼ばれたのは、サイの妻、王妃の事である。
「まぁ?そうですの?シン様は、深謀の殿方でしたのね。」
「うむ。余も、『武』の一面しか見抜けなかった。これで、シンの予想があたれば、余の友は素晴らしい人財でもあると言う事だ。」
ネーネリアは少し考えてから、
「ならば、陛下は何故、シン様を臣下にお加えされなかったのですか?」
すると、サイは答える。
「あやつを観ていると、ふと、臣下としては勿体無いと思うたのよ。」
「勿体無い?」
ネーネリアの言葉に頷くサイ。
「うむ。勿体無いぞ。ただ忠誠を尽くすのではなく、余の本当の力となって、国を良くして貰う者が必要なのだ。シンとは、単なる忠臣ではなく、余に言うべき事を言える、そんな対等を期待してるのよ。」
陛下は幼少より、文武両道の教育を受け、その対等なる者は居なかった。
作る暇も無かった。
初めてのシンの謁見で、サイは何かを感じたのだろう。
サイ自身も口から「友」と、あの場において、すんなりと出てきた。
何かとは、それは判らない。
だが、サイはシンに心を王室の者以外で、初めて開いた人間と言える。
会議の場においても、シンには『武力』のみの人間と誰しも思っていたのを、『知略』の面を披露した時のサイの慌てた態度や、豪快に笑いとばす在り方は、以前には見られないものだった。
シンの存在は、サイのみに影響を留めなかった。
サラに対してもである。
どんな異性に対しても、無関心であり、健気に兄達を支えようと、武の方面で鍛え上げていた。
前国王による政略結婚の為の縁談も踏み倒すほどの、じゃじゃ馬ぶりであった。
しかし、シンと出会ってから、何故かそれは影を潜め、彼に惹かれているのは、誰しもが認め疑う事は無い。
人たらしと言うのだろうか。
何か、特別なオーラを人々は本能で感じている様であった。
術法の『魅了』とは違う魅了。
彼には、それが備わっている様にも思えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる