43 / 111
暗雲たちこめる王国と公国
真犯人
しおりを挟む
「………………すまない。陛下が身罷かられた。俺の落ち度だ。」
シンは俯いて、サイの亡骸に向かい呟く。
「貴様っ!あれ程、危険な博打だと、俺は言った筈だ!だから反対したんだ!」
ヤースキーの怒声が、寝所内に響く。
今にもシンに斬りかからんとする剣幕で。
それを抑えているのが、ブレイブとギルバルト。
ゴンザレスは、陛下の脈を触り、
「確かに、身罷られておりますな。……無念にござります。」
と一言述べるに留めた。
ネーネリアも太后も子供達も、悲痛な表情で顔を伏せている。
誰も口を開かない。
ただ嗚咽だけが聞こえる、この場において、口を開いたのは、サラであった。
「宰相……後継者は如何しましょうか。」
「………そうですね。正式にご子息様であられる、ヘンリー王太子殿下が継がれるのが、筋かと思われます。………しかし、」
「しかし、何ですの?」
ネーネリアが言葉の先を促す。
「殿下様は、まだ6歳と幼のうござります。後見人が必要でありますな。」
「なら、義姉様かシンが後見人として……」
サラがそう言おうとした時、ゴンザレスは言葉を遮る。
「恐れいりますが、ネーネリア妃様は、政治に疎く、シン殿に関しましては、今回の作戦の失敗の責任を取って頂く必要があります。また、後見人としては、政治に通じた私めが補佐をするのが宜しいかと。」
「責任?どうするのだ?」
ブレイブはゴンザレスに質問した。
「………………打ち首か、北の国へ所払いが妥当かと。そして、対策室は閉鎖する方針で………」
そこまで言うと、ノックをせずに発言をしながら入って来た者がいた。
「それでは困るな?ゴンザレス。」
一同は、入室した者の顔を見て驚いた。
「へ、へへ、陛下!?」
「うむ。余である。」
ベッドに横たわるサイと、入室したサイを交互に見やる一同。
それをしなかったのは、シンとサラだけである。
「ふむ。ゴンザレスよ。それでは、余が困るなよな?失敗は誰しもがするもの。ただ、余が死んだだけで、そこまでする必要性はあるまい?」
まるで幽霊を見るかの様に、一同はサイを見る。
ネーネリアや子供達は、喜びの表情に変わっていた。
「それに、だ。それ以前に、またそれ以上に重い罪を犯し、シラを切っている裏切り者に厳罰を与えねばならん。」
ブレイブも、ギルバルトやヤースキーも「まさか」と言う顔をしていた。
「のう?ゴンザレスよ?」
サイの視線は、どこまでも冷たくもあり、憎しみを込めたものだった。
シンは俯いて、サイの亡骸に向かい呟く。
「貴様っ!あれ程、危険な博打だと、俺は言った筈だ!だから反対したんだ!」
ヤースキーの怒声が、寝所内に響く。
今にもシンに斬りかからんとする剣幕で。
それを抑えているのが、ブレイブとギルバルト。
ゴンザレスは、陛下の脈を触り、
「確かに、身罷られておりますな。……無念にござります。」
と一言述べるに留めた。
ネーネリアも太后も子供達も、悲痛な表情で顔を伏せている。
誰も口を開かない。
ただ嗚咽だけが聞こえる、この場において、口を開いたのは、サラであった。
「宰相……後継者は如何しましょうか。」
「………そうですね。正式にご子息様であられる、ヘンリー王太子殿下が継がれるのが、筋かと思われます。………しかし、」
「しかし、何ですの?」
ネーネリアが言葉の先を促す。
「殿下様は、まだ6歳と幼のうござります。後見人が必要でありますな。」
「なら、義姉様かシンが後見人として……」
サラがそう言おうとした時、ゴンザレスは言葉を遮る。
「恐れいりますが、ネーネリア妃様は、政治に疎く、シン殿に関しましては、今回の作戦の失敗の責任を取って頂く必要があります。また、後見人としては、政治に通じた私めが補佐をするのが宜しいかと。」
「責任?どうするのだ?」
ブレイブはゴンザレスに質問した。
「………………打ち首か、北の国へ所払いが妥当かと。そして、対策室は閉鎖する方針で………」
そこまで言うと、ノックをせずに発言をしながら入って来た者がいた。
「それでは困るな?ゴンザレス。」
一同は、入室した者の顔を見て驚いた。
「へ、へへ、陛下!?」
「うむ。余である。」
ベッドに横たわるサイと、入室したサイを交互に見やる一同。
それをしなかったのは、シンとサラだけである。
「ふむ。ゴンザレスよ。それでは、余が困るなよな?失敗は誰しもがするもの。ただ、余が死んだだけで、そこまでする必要性はあるまい?」
まるで幽霊を見るかの様に、一同はサイを見る。
ネーネリアや子供達は、喜びの表情に変わっていた。
「それに、だ。それ以前に、またそれ以上に重い罪を犯し、シラを切っている裏切り者に厳罰を与えねばならん。」
ブレイブも、ギルバルトやヤースキーも「まさか」と言う顔をしていた。
「のう?ゴンザレスよ?」
サイの視線は、どこまでも冷たくもあり、憎しみを込めたものだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる