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ハンサーラ公国と亡国の思惑
サラとフォルクハルト
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サラ達はロベルタの報告を受け、合流を果たす。
その間、ロベルタ達はフォルクハルトの公国への思い等を聞き出すのに成功していた。
フォルクハルトは、祖国に対しての忠誠心はあれども、日に日に狂気に満ちて行く現大公に対しての忠誠心は希薄であった。
『祖国を護る。』
その一点の信念の為に、彼は理不尽であろうと、命令を受けていただけであったのだ。
しかしオスカーの報告に、祖国の在り方自体に疑念を持ってしまったのだ。
そこにサラ達、アルファチームと合流した。
フォルクハルトの祖国への疑念と不信を、ロベルタから報告を受けたサラはフォルクハルトと対面する決意をする。
「失礼します。フォルクハルト様。兼ねてから、お噂は聴き及んでます。」
「こちらこそ、我が祖国が貴国に多大な迷惑を掛けている。申し訳無い事、この上ありません。」
サラの挨拶に、フォルクハルトは深々と頭を下げた。
「あっ……頭を上げて下さい!フォルクハルト様は、悪くはないです。寧ろ、大公のやり方に疑念を持ち、公国のこれからの行く末を真剣に考えていらっしゃります。……それをどうして責められましょうか?」
フォルクハルトは真剣に悩んでいた。
人権。外交。
その他の様々な問題に。
その事をサラは見抜いていたのだ。
「……恐縮です。ロベルタ様より、我が国がゾンビに対する兵器研究を行っていると、聞き及び、私の決意が固まりました。」
フォルクハルトの表情は、最初は迷いが見られていたが、やがて意を決した顔つきに変わった。
「我ら、シュナイダー家と、家臣全ては王国に力を貸す事を誓いましょう。狂った祖国は、一度壊さねばなりませぬ。で、無ければ、人権や正気は戻らないでしょう。」
憂国の将軍は、他国の力を借りようとも、現状の変化を選んだ。
王国の働きかけならば、同盟である帝国でも、一時期は占領されても、必ず公国領に戻ると計算していた。
仮に、永久的に占領になろうとも、昔の統治国家である王国に戻るだけである。
フォルクハルトの年齢に近い、王国の若き君主に委ねるのも悪くない。
と、判断したのだ。
「……それは、大公に対する反逆者になりますが、宜しいのですか?」
ロベルタは愚問と知りつつも、フォルクハルトに尋ねた。
「構いません。」
キッパリと、間髪入れずに即答した。
「逆賊、売国奴と呼ばれようとも、国が正常に戻り、人々に希望が戻るならば、悪名の一つ二つ、喜んで受けましょう。」
覚悟を見届けたサラは、現在、公国首都の研究所に対する作戦にフォルクハルトの協力が必要だ、と言う事を述べた。
フォルクハルトは顎に手を当て、少し考えてから提案をする。
「この件は、私だけでは難しいでしょう。ならば、私と同じ様な考えを持つ同志の協力が必要不可欠です。心当たりはあるのですが、首都に戻る必要があります。私が首都に戻ると言う事は、事が公になる危険性は高くなりますが、そこは何とかしましょう。取り敢えず、善は急げです。明日には出立しましょう。」
すると、リーチェは尋ねた。
「ここの封印は大丈夫なんスか?あと、ここの駐屯兵に対しては、どうするんスか?」
「ここの駐屯兵は、口外の恐れがある為、拘束させて頂きました。また封印に関しては、応急的ではありますが、施しは完了です。ただ、いつまで持つのか?と言う不安材料がありますので、私の配下を若干数、駐屯させます。」
「……わかりました。では、明日に出立すると言う事で。」
サラの一言で、密談が解散した。
研究所対策と、大公に対する謀叛が成功するのか否か。
今後の行く末は、フォルクハルトの頭脳と、運に掛かっていた。
その間、ロベルタ達はフォルクハルトの公国への思い等を聞き出すのに成功していた。
フォルクハルトは、祖国に対しての忠誠心はあれども、日に日に狂気に満ちて行く現大公に対しての忠誠心は希薄であった。
『祖国を護る。』
その一点の信念の為に、彼は理不尽であろうと、命令を受けていただけであったのだ。
しかしオスカーの報告に、祖国の在り方自体に疑念を持ってしまったのだ。
そこにサラ達、アルファチームと合流した。
フォルクハルトの祖国への疑念と不信を、ロベルタから報告を受けたサラはフォルクハルトと対面する決意をする。
「失礼します。フォルクハルト様。兼ねてから、お噂は聴き及んでます。」
「こちらこそ、我が祖国が貴国に多大な迷惑を掛けている。申し訳無い事、この上ありません。」
サラの挨拶に、フォルクハルトは深々と頭を下げた。
「あっ……頭を上げて下さい!フォルクハルト様は、悪くはないです。寧ろ、大公のやり方に疑念を持ち、公国のこれからの行く末を真剣に考えていらっしゃります。……それをどうして責められましょうか?」
フォルクハルトは真剣に悩んでいた。
人権。外交。
その他の様々な問題に。
その事をサラは見抜いていたのだ。
「……恐縮です。ロベルタ様より、我が国がゾンビに対する兵器研究を行っていると、聞き及び、私の決意が固まりました。」
フォルクハルトの表情は、最初は迷いが見られていたが、やがて意を決した顔つきに変わった。
「我ら、シュナイダー家と、家臣全ては王国に力を貸す事を誓いましょう。狂った祖国は、一度壊さねばなりませぬ。で、無ければ、人権や正気は戻らないでしょう。」
憂国の将軍は、他国の力を借りようとも、現状の変化を選んだ。
王国の働きかけならば、同盟である帝国でも、一時期は占領されても、必ず公国領に戻ると計算していた。
仮に、永久的に占領になろうとも、昔の統治国家である王国に戻るだけである。
フォルクハルトの年齢に近い、王国の若き君主に委ねるのも悪くない。
と、判断したのだ。
「……それは、大公に対する反逆者になりますが、宜しいのですか?」
ロベルタは愚問と知りつつも、フォルクハルトに尋ねた。
「構いません。」
キッパリと、間髪入れずに即答した。
「逆賊、売国奴と呼ばれようとも、国が正常に戻り、人々に希望が戻るならば、悪名の一つ二つ、喜んで受けましょう。」
覚悟を見届けたサラは、現在、公国首都の研究所に対する作戦にフォルクハルトの協力が必要だ、と言う事を述べた。
フォルクハルトは顎に手を当て、少し考えてから提案をする。
「この件は、私だけでは難しいでしょう。ならば、私と同じ様な考えを持つ同志の協力が必要不可欠です。心当たりはあるのですが、首都に戻る必要があります。私が首都に戻ると言う事は、事が公になる危険性は高くなりますが、そこは何とかしましょう。取り敢えず、善は急げです。明日には出立しましょう。」
すると、リーチェは尋ねた。
「ここの封印は大丈夫なんスか?あと、ここの駐屯兵に対しては、どうするんスか?」
「ここの駐屯兵は、口外の恐れがある為、拘束させて頂きました。また封印に関しては、応急的ではありますが、施しは完了です。ただ、いつまで持つのか?と言う不安材料がありますので、私の配下を若干数、駐屯させます。」
「……わかりました。では、明日に出立すると言う事で。」
サラの一言で、密談が解散した。
研究所対策と、大公に対する謀叛が成功するのか否か。
今後の行く末は、フォルクハルトの頭脳と、運に掛かっていた。
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