変身HERO異世界へ征く!

加賀林檎

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大乱と統一

反乱。

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翌日の午後21時頃。
街中は静寂の中にある。
闇夜の中、蠢く軍勢あり。
城まで、あとわずか。

先頭に2騎の騎士あり。
その騎士のうち、先頭に立つ馬上の男。

その名を
アルフォンス・フォン・ヴィルヘルム。

その男の斜め後ろにて、同じく馬上にて、付き従う男。

フォルクハルト・フォン・ヴィルヘルム。

『わたしは兄上の騎士団と共に城を攻める。お前は、王国対策室の者達の援護を、私の騎士団と共に事に当たれ。頼んだぞ、オスカー』

先程、別れたオスカーへの言葉がフォルクハルトの脳裏に浮かぶ。

どちらかが失敗しても、敗北となる。
抜かるなよ。オスカー。
フォルクハルトは、信頼する部下を案じつつ、これから向かう城を見つめた。

「我が軍の旗を掲げよ。全ての松明に火を灯せ。」

静かなる声で、フォルクハルトは指示を出す。

全ての準備が終わった時、アルフォンスは馬ごと振り返り、大声で激を飛ばす。

「敵はダリス城にあり!我が公国の興廃は、この一戦にあり!全ての公国国民の黎明をもたらすは、我等にあり!臆する事無く奮戦し、光明を示せ!全軍前進!!」

その言葉を聴いた将兵は、最初は反旗を翻す事に躊躇ためらう者も居たが、全身の毛が総立ちし、ブルッと身を一回震わせた後、鬨の声を上げる。

『おぉおぉーーーっ!!』

反乱軍リベリオン
の士気は嫌でも上がった。

反乱軍は素早く行動を開始し、城を囲む様に動く。

深い闇の中、松明に照らされる軍旗が、バタバタと足音と共にはためく。

兄弟の主力はくつわを並べて、城門前まで、やって来た。

「な、何者か!!」

門番がアルフォンスに問い掛けると、アルフォンスは堂々と名乗りを上げる。

「……アルフォンス・フォン・ヴィルヘルムである。天下の義の為、不義のやからである、我が父のアヒムを討ち果たさんが為に参上つかまつった!」

「……えっ?……な、何っ?む、むむっ、謀叛だー!」

一瞬、困惑した門番だが、
アルフォンスはズブリと、門番の胸に槍が貫いた。

「工兵隊、城門を破れ!梯子はしごを掛けよ!」

おぉーーーっ!

兵士達は一気に門を突き破る為、丸太を打ち付け始めたり、梯子を二階の窓近くにたて掛けたりと攻城を開始した。


一方、その頃の城内では、慌ただしく廊下を走り、アヒム大公の寝室のドアを乱暴に開き、臣下が入る。
臣下はアヒム大公のベッドの近くで片膝を着き、頭を下げ、「申し上げます!」と、興奮しながら大声を張り上げる。

「……うるさいぞ。こんな夜更けにどうしたのだ?……儂の眠りをさまたげたのだ。事と次第では、貴様の命は無いぞ?」

アヒム大公は、寝惚けた顔しながら、臣下に問う。

「た、大変で御座います!アルフォンス様、御謀叛!」

その言葉を聞き、惚けた顔のアヒム大公の顔が、一気に眠気から醒める。

「な、何ぃっ!!?」



城門が破壊され、一気呵成に城内に将兵達が雪崩込む。

「城に火を掛けよ!徹底的に燃やせ!アヒムの退路を絶やせ!」

フォルクハルトの指示に、松明で燃える物、全てに火を着ける。

次第に火の勢いが増し、街を、天を煌々こうこうと照らし始めた。

「狂公、アヒムの首を討ち取った者、金10与える!生きて捕らえ、我が前に差し出した者は、金100与える!皆の者、励め!」

アルフォンスが恩賞で、部下達のヤル気に拍車を掛ける。


「アルフォンスに、フォルクハルトめ。親の恩を仇で返すか、親不孝者共めが。」

アヒム大公の元にアルフォンスの兵士達が、こぞって襲い掛かる。

アヒム大公の護衛の兵士も奮戦するも、アルフォンスの兵の士気は高く、更に多勢に無勢。
次々と討ち取られる。

アヒム大公は乱戦で混乱に乗じ、燃え盛る城の中を必死になって逃げまどっていた。

「ひっ、ひいぃっ、わ……儂は殺されんぞ!こんな事で死んでなるものかっ!」

アヒム大公は、上の階へ上の階へと逃げて行く。

そこで声が聞こえて来る。

『大公は居たか?』

『いや、まだ見つからぬ。』

『探せ!探し出せ!』

アヒム大公は、声のした方の反対側へ逃げ出す。
すると、そこでも

『……しかし、お前は、まだ大公なんて言っているのか?あんな暴君、我等の主君ではない。アヒムで充分だ。』

『そうか?いや、そうだな。我等を苦しめた奴だ!必ず見つけ出してやるっ!待ってろ!アヒム!!』

ひいぃっ!!
アヒム大公は戦慄を覚える。
今迄の悪政のツケが、今に表面化したのだ。

他に逃げ場は無いのか、と辺りを見回していた時に。

「居たぞーーっ!アヒムだーーっ!」

と、言う声が聞こえた。

すると周囲は、アルフォンスの将兵達に囲まれていた。

兵士達の槍先をアヒム大公に突き付けられる。

「大人しく、縛につけ!この悪党!」

と、将らしき男に言われ、ヘナヘナと、その場にアヒム大公は座り込んでしまった。

「わ、儂の味方に願えらぬか?お主ら。恩賞は思うがままだぞ?」

そんなアヒムの懇願をアルフォンスの将兵等は、鼻で笑った。

「恩賞が思うがまま、だとよ?お前、どうする?」

「確かに魅力的な話だなぁ。」

その言葉にアヒム大公は、ぱぁっと顔をほころばせる。

「で……では、逆賊、アルフォンスを討つのじゃ!」

しかし、アルフォンスの部下達は顔をしかめながら、

「……なぁ、アンスガー。お前のとこの、姪っ子は今年、幾つになる?」

アンスガーと呼ばれた兵士は答える。

「……今年で17になる……予定でした。兄者はアヒムの不興を買い、俺の助命嘆願も聞き入れられず、俺以外の一族は無惨にも……今から10年前の事ですが……」

アンスガーの表情は怒りと哀しみが入り雑じり、悲痛な心の叫びが聴こえた。

その言葉を聴いていた他の兵士達は、アヒム大公を睨み武器を向けながら、はらりはらりと涙を流す者、この場で八つ裂きにしてやる、と言う気迫が表れる者等、アヒム大公に対し、恭順や配下になる意思は微塵も無い事をハッキリと表れ出ていた。

「残念ですが、我等にとって、逆賊は貴方です。アヒム。」

そうして、アヒム大公に縄を打ち、アルフォンスの元へと連行されたのだった。


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