シャドウドラゴン〜漆黒の勇者

序章

新しい環境と、出会いと始まり。

　それから数日後、少年は、里親に育てられる。
　その里親は親身になり、少年を育ててくれたが、来たばかりの少年は、口をつぐみ語らず、笑顔を決して見せなかった。

　だが、義母と義姉は辛抱強く、彼に寄り添い続けた。

　少年は16歳になり、ある程度明るく前向きになった。
　義姉である大和（はるか）が血相を変えていたのだ。
　一つ下の義妹の飛鳥（あすか）が義父に性的虐待を受けていたのだ。

　あの優しかった義父が何故？
　義母の寂白（せきしろ）母さんと義父の関係は悪化。
　流石の少年も弱る寂白母さんに、混乱する大和に義憤が湧いた。

　真夜中の布団の中、少年は悶々としていた。
　一体何故？
　疑問と義父への怒りが胸中で混ざり合っていた。
　眠れない。
　そんな時、頭にこんな声が響く。

『そなたの義父はヤツらに取り憑かれたようじゃ。』

『？誰だ？』

　少年は謎の声に問う。
　すると、暗闇から光が集まって人の形を成していく。
　見る見るうちに、それは美しい少女の形へと変貌する。
　見た目は18歳位だろうか？
　頭には角がある。
　眼は紅く、髪は黒。
　スタイルは、抜群。
　言うなら、絶世の美少女、と言うべきか？

『妾の名は、ティア。汝の名は？』

　暫く唖然としていた少年。
　が、我に返り
　ティアの問いに答える。

『俺は凛（りん）、八州　凛（やしま　りん）』

『…凛か。良い名じゃ。』

　ティアと名乗った少女は、凛を通して何かを見ているような、そして少し寂しさを纏う瞳だった。

（ティアと言った？なんだろ、どこかで？）

　そう凛は思っていたら、

『凛や、汝は寂白と言う女子についててやるのじゃ。』

『？、ティア、君は？何をするんだ？』

『すまぬ、な。あの義父なるもの、手遅れじゃ。侵食が深い。』

　凛は混乱していた。
（侵食が深い？何の事だ。）

『とりあえず、寂白を抱いてやるのじゃ、あのままだと、彼女も壊れるのじゃ。急いげ！』

　ティアは、そう言うと、凛に背を向けて、義父の元へ赴く。

　残された凛は、ティアの言葉を信じるしかないと思い、寂白のもとへ早歩きで行く。