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シーズン8-エミド最終決戦編
173-例え、どんな結末でも...
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バクタラートへの攻撃戦準備は素早く進められた。
まずは兵站の確保。
エネルギーブロックを、それぞれ一週間分確保する。
これ自体はそこまで困難な事ではないが、素材のスペースを確保するためアロウトが変形し、演習モードへと変化する。
タッティラがスミス=ノクティラノスをスリープモードから解除して動員するほど忙しい状況である。
何故タッティラ自身がやらないかと言えば、「宝物殿」に入って居た超大型の――――そもそもVe’zの艦船が大型だが――――母艦を動かすためである。
『こちらタッティラ、ミランダ=セスティラノス第一から第四番艦の改装完了!』
「分かった、カサンドラ。ミランダ=セスティラノスにノクティラノスを載せ始めろ」
『はい』
ミランダ=セスティラノス。
宝物殿のあの廃墟惑星に記録されていた座標に放置されていた、十二世代前の超大型艦である。
超技術で保護されているために劣化はないが、装備が文字通り中古なので換装する必要があった。
ちなみに、「ミランダ」とは十二世代前にいたらしいアルティノス...つまりエリアスの先祖だ。
恐らく、宝物殿に惑星を放り込んでいた時代の名残であり、内部の超大型艦船ドックが現行のノクティラノスと互換性がある。
一から作るよりよほどコストパフォーマンスがいい。
ミランダ=セスティラノスは、エリガードと同じ役割を持っていたようで、ワームホール制御デバイスを積んでいる。
戦闘能力は、現行のエクスティラノスより低いが......
「どうだ? 新兵の”育成”は」
『順調です』
僕はシーシャのもとを訪れる。
”新兵”というのは、アップグレード中の戦闘AIである。
今までの戦い全てを再度コーディングし、それに対するシミュレーションを無限に繰り返していた。
今回の戦いでは、エミドも自律制御を取り戻しており、隊列を組みつつランダムに攻撃してくる。
ならばこちらも、一定程度の自律行動が可能でなければならない。
これを全ノクティラノス、クイスティラスに適用し、決戦行動下での最適行動をとれるようにする。
「さて、グレゴル.....」
『.......』
「.....グレゴル」
『はい』
人格をエリアスに譲り、エリアスは仕方なくといった様子でグレゴルに命じる。
「システムリソースと、キャッシュデータの整理を要請する」
『はい』
「重要なデータと、”書庫”区画は宝物殿内部に分離する。それ故に保管を頼む。戦闘開始とともに宝物殿ゲートは遮蔽状態に入る、内部の制御を任せる」
『はい』
グレゴルは相変わらずの勤勉な様子を崩さずに、そう応えたのであった。
エリアスは去っていくグレゴルを見ながら、心の中で僕に尋ねてくる。
『この戦いの終わりに、Ve’zにとって何かが変わるのだろうか』
『既にVe’zは変わり始めている。例え――――例え、終わりが必ず来るとしても、エリアス。.....僕は』
『....いいや、この問いは無価値なものだ.....私は未来を諦めたのだから。エリアスにして、アラタ....お前はこれからどうする?』
『どうする....と言われてもな。Ve’zが失ったものを取り返すだけだ』
『そうか』
エリアスはそれだけ言うと、再び意識の底に沈んでいく。
気付くと僕は、後ろに誰かが立っているのを認識した。
振り向くと、エリスがいた。
「みんな、忙しいのね」
「ああ」
「私にも何かできればいいんだけど」
「....出来ないわけじゃない、皆、エリスに会って変わった。僕がエリスの為に永遠の平穏を創ろうとしていることは、皆知っている。だから――――信じてほしい」
「ええ、分かったわ」
僕には、決まり切った文句しか言えない。
だけど、エリスは言葉足らずの僕を受け入れてくれた。
「それにね、エリアス。私.....今すごく幸せだから。子供は出来ないけれど、貴方に会えてよかった」
「....ああ」
そろそろ挙式しようかと思ったが、そういえばと、前世で見た戦争映画を思い出した。
ここで告白すると、僕かエリスが死ぬことになるに違いない。
それは避けなければならない。
「僕も、会えてよかったよ。それに......」
僕は、エリワンステップの前哨基地に向け発進していくミランダを見た。
「きっと、何百億回と繰り広げられてきた僕たちの先祖の思考も、この結果を高く評価してくれるはずだ」
「....ええ、分かってるわ」
僕たちは、それとなく――――本当にそれとなく。
顔を見合わせて、口づけを交わした。
まずは兵站の確保。
エネルギーブロックを、それぞれ一週間分確保する。
これ自体はそこまで困難な事ではないが、素材のスペースを確保するためアロウトが変形し、演習モードへと変化する。
タッティラがスミス=ノクティラノスをスリープモードから解除して動員するほど忙しい状況である。
何故タッティラ自身がやらないかと言えば、「宝物殿」に入って居た超大型の――――そもそもVe’zの艦船が大型だが――――母艦を動かすためである。
『こちらタッティラ、ミランダ=セスティラノス第一から第四番艦の改装完了!』
「分かった、カサンドラ。ミランダ=セスティラノスにノクティラノスを載せ始めろ」
『はい』
ミランダ=セスティラノス。
宝物殿のあの廃墟惑星に記録されていた座標に放置されていた、十二世代前の超大型艦である。
超技術で保護されているために劣化はないが、装備が文字通り中古なので換装する必要があった。
ちなみに、「ミランダ」とは十二世代前にいたらしいアルティノス...つまりエリアスの先祖だ。
恐らく、宝物殿に惑星を放り込んでいた時代の名残であり、内部の超大型艦船ドックが現行のノクティラノスと互換性がある。
一から作るよりよほどコストパフォーマンスがいい。
ミランダ=セスティラノスは、エリガードと同じ役割を持っていたようで、ワームホール制御デバイスを積んでいる。
戦闘能力は、現行のエクスティラノスより低いが......
「どうだ? 新兵の”育成”は」
『順調です』
僕はシーシャのもとを訪れる。
”新兵”というのは、アップグレード中の戦闘AIである。
今までの戦い全てを再度コーディングし、それに対するシミュレーションを無限に繰り返していた。
今回の戦いでは、エミドも自律制御を取り戻しており、隊列を組みつつランダムに攻撃してくる。
ならばこちらも、一定程度の自律行動が可能でなければならない。
これを全ノクティラノス、クイスティラスに適用し、決戦行動下での最適行動をとれるようにする。
「さて、グレゴル.....」
『.......』
「.....グレゴル」
『はい』
人格をエリアスに譲り、エリアスは仕方なくといった様子でグレゴルに命じる。
「システムリソースと、キャッシュデータの整理を要請する」
『はい』
「重要なデータと、”書庫”区画は宝物殿内部に分離する。それ故に保管を頼む。戦闘開始とともに宝物殿ゲートは遮蔽状態に入る、内部の制御を任せる」
『はい』
グレゴルは相変わらずの勤勉な様子を崩さずに、そう応えたのであった。
エリアスは去っていくグレゴルを見ながら、心の中で僕に尋ねてくる。
『この戦いの終わりに、Ve’zにとって何かが変わるのだろうか』
『既にVe’zは変わり始めている。例え――――例え、終わりが必ず来るとしても、エリアス。.....僕は』
『....いいや、この問いは無価値なものだ.....私は未来を諦めたのだから。エリアスにして、アラタ....お前はこれからどうする?』
『どうする....と言われてもな。Ve’zが失ったものを取り返すだけだ』
『そうか』
エリアスはそれだけ言うと、再び意識の底に沈んでいく。
気付くと僕は、後ろに誰かが立っているのを認識した。
振り向くと、エリスがいた。
「みんな、忙しいのね」
「ああ」
「私にも何かできればいいんだけど」
「....出来ないわけじゃない、皆、エリスに会って変わった。僕がエリスの為に永遠の平穏を創ろうとしていることは、皆知っている。だから――――信じてほしい」
「ええ、分かったわ」
僕には、決まり切った文句しか言えない。
だけど、エリスは言葉足らずの僕を受け入れてくれた。
「それにね、エリアス。私.....今すごく幸せだから。子供は出来ないけれど、貴方に会えてよかった」
「....ああ」
そろそろ挙式しようかと思ったが、そういえばと、前世で見た戦争映画を思い出した。
ここで告白すると、僕かエリスが死ぬことになるに違いない。
それは避けなければならない。
「僕も、会えてよかったよ。それに......」
僕は、エリワンステップの前哨基地に向け発進していくミランダを見た。
「きっと、何百億回と繰り広げられてきた僕たちの先祖の思考も、この結果を高く評価してくれるはずだ」
「....ええ、分かってるわ」
僕たちは、それとなく――――本当にそれとなく。
顔を見合わせて、口づけを交わした。
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