217 / 295
終章(1/3)-『探求』編
217-ハッキング対決
しおりを挟む
ガイレン星系の戦いから数日後。
唐突にそれは起こった。
『システムにバックドア形成! ウイルスです!』
ヴェリアノス・アロウトの中央コンピューターに、ハッキングが仕掛けられたのである。
恐るべき速度で防御システムを突破したそれは、一区画から接続を遮断する暇もなく侵攻し、アロウトの対ハッキングシステムによって一時的に食い止められた。
だが、長くは持たない。
『アロウトの中央コンピューターに侵入あり。シーシャは書庫のアクセスを遮断、タッティラは工業区画をオフライン化してください。メッティーラ、防衛システムへのアクセスをネットワークごと遮断、ケルビスは中央コンピューターの緊急遮蔽プロトコルを実行!』
カサンドラの対応は速かった。
ハッキングが止められてから0.2秒以内に対処を行ったのだ。
『アロウト防衛コール:脅威度中、脅威度中。管理者クラスは作業を中断しコンピューター防衛に協力せよ』
緊急コールが発信されるものの、現在アロウトにいる管理者クラスはエリアスのみ。
エリアスはアロウトを不在にしているため、船を修理中のケルビスとポラノル、グレゴルが防衛に参加する。
哨戒中のメッティーラは艦隊を停止させ、アロウトの火器管制システムと防衛システムを自身の権限でアクセス遮断を実行する。
『このタイミングでやってくるとはね.....』
ケルビスはエリアスの腹心である。
それ故に、管理者一歩手前の権限を持っており、同じく権限を持つカサンドラがリソースを割いている現状、ケルビスのみがアロウトの中央コンピューターを緊急遮蔽できるのだ。
『サブコンピューター、アルヴ、スクトン、ラトゥムを起動する、演算支援を実行。アドラス、ジェネラス! どうせ暇だろう、代わりに哨戒したまえ!』
『承知した』
『きーっ! 言い方!』
ケルビスは高速言語でシステムに干渉する。
通常の何百倍ものプロセスを短縮し、本来一時間程度かかる作業を15分で完了する。
中央コンピューターが思考干渉でのみアクセスできる経路を残して完全に遮断され、敵はこれでアロウトの掌握を困難とした。
『奴らのバックドアを辿って逆侵攻するよ、リソースはこのままサブコンピューターに委託する』
『お任せします』
ケルビスは暇を持て余し、外部侵入経路を辿って敵のハッカーに対して攻撃を仕掛ける。
積層上に構築されたシステムに対して侵攻を開始し、恐るべき速度で上書きを繰り返す。
『成程、敵もリソースを無制限に使えるわけではないようですね』
アロウトのシステムを構築したのは先代。
そして、カサンドラとグレゴルは先代の時代からいるエクスティラノスである。
瞬く間にシステムの緊急分離を完了し、敵は侵攻する場所を失い、データの送受信を繰り返すだけになった。
重要なデータの退避は済んでおり、敵が盗めるのはノクティラノス達が収集し、明瞭化されて集積される前の暗号化データのみとなった。
解析したとしても、既に向こうも知っている情報しか得られないだろう。
『とはいえ、毎回この規模のクラッキングを仕掛けられてはたまったものではありませんから、外部への接続系統を複線化せず、外付けのシステムで複線化するべきかと』
グレゴルはそう提案した。
数秒前まで危機を迎えていたアロウトは、復旧とシステム改築を開始していた。
『第六スレッド、汚染されました!』
『切り離し出来ません、上位権限をオーバーライドされました!』
その頃。
連邦側は大騒ぎであった。
試験的にAI『AURORA』を使用しないハッキングを行おうとしていたのだが、意外にうまく行ったと思われた矢先に対処され、逆に情報を奪われていた。
ハッキング艦隊の持つ情報は限定的だが、兵器関連や通信の暗号化方法などを奪われたため、今後は作戦行動に対して慎重になる必要があった。
『敵艦隊ワープアウト! 射程圏内です!』
『交戦は避けろ、総司令官! 救援を!』
王国人で構成された艦隊は、司令部に救援を求める。
しかし返ってきたのは冷徹な返事だけだった。
『交戦規定を守らず、勝手に艦隊を動かしたのはそちらです。本来であれば艦隊リーダーの処罰ですが、あなた方を救助する為のコストを支払う必要はないと総司令官は判断しました』
『そ、そんな!』
『しゅ、出撃すると言ったのは情報士官の意見で!』
『救援は出せませんので、悪しからず』
そして。
エクスタミネーターノクティラノスと交戦した艦隊は、即座に全滅したのであった。
唐突にそれは起こった。
『システムにバックドア形成! ウイルスです!』
ヴェリアノス・アロウトの中央コンピューターに、ハッキングが仕掛けられたのである。
恐るべき速度で防御システムを突破したそれは、一区画から接続を遮断する暇もなく侵攻し、アロウトの対ハッキングシステムによって一時的に食い止められた。
だが、長くは持たない。
『アロウトの中央コンピューターに侵入あり。シーシャは書庫のアクセスを遮断、タッティラは工業区画をオフライン化してください。メッティーラ、防衛システムへのアクセスをネットワークごと遮断、ケルビスは中央コンピューターの緊急遮蔽プロトコルを実行!』
カサンドラの対応は速かった。
ハッキングが止められてから0.2秒以内に対処を行ったのだ。
『アロウト防衛コール:脅威度中、脅威度中。管理者クラスは作業を中断しコンピューター防衛に協力せよ』
緊急コールが発信されるものの、現在アロウトにいる管理者クラスはエリアスのみ。
エリアスはアロウトを不在にしているため、船を修理中のケルビスとポラノル、グレゴルが防衛に参加する。
哨戒中のメッティーラは艦隊を停止させ、アロウトの火器管制システムと防衛システムを自身の権限でアクセス遮断を実行する。
『このタイミングでやってくるとはね.....』
ケルビスはエリアスの腹心である。
それ故に、管理者一歩手前の権限を持っており、同じく権限を持つカサンドラがリソースを割いている現状、ケルビスのみがアロウトの中央コンピューターを緊急遮蔽できるのだ。
『サブコンピューター、アルヴ、スクトン、ラトゥムを起動する、演算支援を実行。アドラス、ジェネラス! どうせ暇だろう、代わりに哨戒したまえ!』
『承知した』
『きーっ! 言い方!』
ケルビスは高速言語でシステムに干渉する。
通常の何百倍ものプロセスを短縮し、本来一時間程度かかる作業を15分で完了する。
中央コンピューターが思考干渉でのみアクセスできる経路を残して完全に遮断され、敵はこれでアロウトの掌握を困難とした。
『奴らのバックドアを辿って逆侵攻するよ、リソースはこのままサブコンピューターに委託する』
『お任せします』
ケルビスは暇を持て余し、外部侵入経路を辿って敵のハッカーに対して攻撃を仕掛ける。
積層上に構築されたシステムに対して侵攻を開始し、恐るべき速度で上書きを繰り返す。
『成程、敵もリソースを無制限に使えるわけではないようですね』
アロウトのシステムを構築したのは先代。
そして、カサンドラとグレゴルは先代の時代からいるエクスティラノスである。
瞬く間にシステムの緊急分離を完了し、敵は侵攻する場所を失い、データの送受信を繰り返すだけになった。
重要なデータの退避は済んでおり、敵が盗めるのはノクティラノス達が収集し、明瞭化されて集積される前の暗号化データのみとなった。
解析したとしても、既に向こうも知っている情報しか得られないだろう。
『とはいえ、毎回この規模のクラッキングを仕掛けられてはたまったものではありませんから、外部への接続系統を複線化せず、外付けのシステムで複線化するべきかと』
グレゴルはそう提案した。
数秒前まで危機を迎えていたアロウトは、復旧とシステム改築を開始していた。
『第六スレッド、汚染されました!』
『切り離し出来ません、上位権限をオーバーライドされました!』
その頃。
連邦側は大騒ぎであった。
試験的にAI『AURORA』を使用しないハッキングを行おうとしていたのだが、意外にうまく行ったと思われた矢先に対処され、逆に情報を奪われていた。
ハッキング艦隊の持つ情報は限定的だが、兵器関連や通信の暗号化方法などを奪われたため、今後は作戦行動に対して慎重になる必要があった。
『敵艦隊ワープアウト! 射程圏内です!』
『交戦は避けろ、総司令官! 救援を!』
王国人で構成された艦隊は、司令部に救援を求める。
しかし返ってきたのは冷徹な返事だけだった。
『交戦規定を守らず、勝手に艦隊を動かしたのはそちらです。本来であれば艦隊リーダーの処罰ですが、あなた方を救助する為のコストを支払う必要はないと総司令官は判断しました』
『そ、そんな!』
『しゅ、出撃すると言ったのは情報士官の意見で!』
『救援は出せませんので、悪しからず』
そして。
エクスタミネーターノクティラノスと交戦した艦隊は、即座に全滅したのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜
妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。
男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。
現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。
そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。
しかし、ただの転生では終わらなかった――
彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。
無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。
護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、
毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく……
個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。
――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。
そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。
「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」
恋も戦場も、手加減なんてしてられない。
逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる