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終章(2/3)-『真実』編
222-接待戦
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その頃。
Ve‘z首都『ヴェリアノス』を囲む七つの入り口、七つの星系群であるうちの一つ。
『ラジュリアナ』に属するパレオ星系では。
Ve’zの旧ロット艦隊と、連邦軍の主力艦隊が交戦していた。
「敵艦隊の構成が不明です、ただし被害は拡大中」
「妙ですね...?」
部下の報告にブリッジで首を傾げるのは、Noa-Tun連邦第一指揮官であるアインスであった。
下ろした金髪の上に指揮官帽を被った彼女は、芸術のような美しさを湛えた双眸で、戦況を観察する。
Ve‘z艦隊は、旧ロット艦隊の寄せ集めである。
だが、連邦側にはそれが分からない。
ただ、乱雑な構成の艦隊としか見れないのだ。
「敵の主力が左翼に偏っています。右翼を狙うと見せかけての左翼への打撃に集中。メルクリウスのスクアッドを前へ」
『了解、ランスロット艦隊を付帯させます』
巨大なダイオウグソクムシのような形状の主力艦――――メルクリウス級戦略護衛旗艦が、V字の編隊を形成し前へと進み出た。
その周囲を円周上に取り囲むのは、横に長く剣のような船体を持つランスロット級襲撃型戦艦である。
メルクリウス級には無数の小・中型機用タレットが搭載されており、それによりアナテマを撃墜し手数を減らしていく。
「敵の量産型特攻艦を確認」
「左舷に布陣させている対小型艦艦隊に攻撃指令」
『軽戦闘機隊に発艦命令を出します。トヨタマヒメ級編隊、散開せよ』
Ve’z側から、ラエリス=クイスティラスの艦隊が飛び出す。
だが、自爆特攻を目的とした攻撃を何度もかけられた連邦艦隊は、その対処法も分かっている。
艦載機母艦が密集陣形からスフィア陣形へと動き、その甲板から軽戦闘機隊が次々と発進していく。
戦闘機隊を出していない母艦もあるが、それは着艦用である。
回収用と発艦用を分けることで、より効率的な戦力展開を可能としているのである。
『ディアスⅢ、上に回り込む!』
『了解!』
上に回り込んだ艦載機編隊が、近接融合ミサイルによりラエリス艦隊を吹っ飛ばした。
『しかし慣れないね、接待行動は』
『慣れてください、内側に引き込まなければならないのですから』
『総力戦を演じるのは、ポラノルの方が適役だと思うんだがね....』
その風景を俯瞰しているのはケルビス、そしてカサンドラである。
ここ数日の戦闘において行われているのは、盛大な在庫処分であった。
連邦側は何故か進軍速度が遅い為、持てる全てをぶつける形でケルビスは行動を行っている。
『右翼に動きあり。崩れていますよ』
『分かっているとも、わざだとも、わざと。』
ケルビスは呟く。
内側に誘い込むためには、敵の目をごまかさなければならない。
事実、連邦が補給線を確保している領域はすでに、改良型の偵察艦により完全に掌握されており、行動を起こすと同時に全ての移動手段を断つ準備は出来ていた。
『敵はこちらがわざと手薄にした誘いに乗らず、右に戦力を集中させるだろう』
『では、どのように?』
『決まっているだろう?』
ケルビスは嗤う。
それは、愉悦からではない。
溢れ出る悔しさからのものだ。
『左翼を更に右に展開させるんだよ、今までの右翼を左翼にしてしまうんだ』
『ですが、旋回中の隙を狙われれば....』
『そうでもしないと減らないだろう』
『そうでしたね』
Ve’zは今、その総力を結集して演劇に勤しんでいた。
敵が、Ve’z側に余裕がないと思わせるための全てを実行しており、ハッキング攻撃に対しても時間をかけることでリソースが少ないように見せかけていた。
『アロウトの修復さえ終われば、歓迎の準備は終わりなんだがね』
『タッティラが頑張っているのですから、気長に待ちましょう』
『気長に、ね......我々が時間を気にする時が来るとは思わなかったね』
旋回中のVe’z艦隊は、そこに集中した光の束によって真横から殴られる形になり、次々と撃沈されていく。
「何か妙ですね.....」
『はい、ですが指揮系統の混乱が見られます。その影響の範囲内であるかと』
「強引な陣形変更で身を持ち崩しましたか」
連邦側もすっかり騙されていた。
だが、後方にいる旗艦アバターでは.....
「罠だな」
シンと呼ばれた男が、艦長席に座りながらそれを見抜く。
『お兄ちゃん? なんでそう思ったの?』
「今までの戦術パターンからして、少し”誘い”の気が強い。力押しだけではない何かを感じるな」
『やっぱりお兄ちゃんは凄いね!』
「油断するな、罠という事は分かったが、どこに何があるか分からない。オーロラ! 艦隊行動は精密に行え! 決して油断するな」
『了解、各指揮官に通達!』
総指揮官であるシンの言葉は絶対である。
たった一瞬で、第十指揮官までの全員がそれに頷いたのであった。
Ve‘z首都『ヴェリアノス』を囲む七つの入り口、七つの星系群であるうちの一つ。
『ラジュリアナ』に属するパレオ星系では。
Ve’zの旧ロット艦隊と、連邦軍の主力艦隊が交戦していた。
「敵艦隊の構成が不明です、ただし被害は拡大中」
「妙ですね...?」
部下の報告にブリッジで首を傾げるのは、Noa-Tun連邦第一指揮官であるアインスであった。
下ろした金髪の上に指揮官帽を被った彼女は、芸術のような美しさを湛えた双眸で、戦況を観察する。
Ve‘z艦隊は、旧ロット艦隊の寄せ集めである。
だが、連邦側にはそれが分からない。
ただ、乱雑な構成の艦隊としか見れないのだ。
「敵の主力が左翼に偏っています。右翼を狙うと見せかけての左翼への打撃に集中。メルクリウスのスクアッドを前へ」
『了解、ランスロット艦隊を付帯させます』
巨大なダイオウグソクムシのような形状の主力艦――――メルクリウス級戦略護衛旗艦が、V字の編隊を形成し前へと進み出た。
その周囲を円周上に取り囲むのは、横に長く剣のような船体を持つランスロット級襲撃型戦艦である。
メルクリウス級には無数の小・中型機用タレットが搭載されており、それによりアナテマを撃墜し手数を減らしていく。
「敵の量産型特攻艦を確認」
「左舷に布陣させている対小型艦艦隊に攻撃指令」
『軽戦闘機隊に発艦命令を出します。トヨタマヒメ級編隊、散開せよ』
Ve’z側から、ラエリス=クイスティラスの艦隊が飛び出す。
だが、自爆特攻を目的とした攻撃を何度もかけられた連邦艦隊は、その対処法も分かっている。
艦載機母艦が密集陣形からスフィア陣形へと動き、その甲板から軽戦闘機隊が次々と発進していく。
戦闘機隊を出していない母艦もあるが、それは着艦用である。
回収用と発艦用を分けることで、より効率的な戦力展開を可能としているのである。
『ディアスⅢ、上に回り込む!』
『了解!』
上に回り込んだ艦載機編隊が、近接融合ミサイルによりラエリス艦隊を吹っ飛ばした。
『しかし慣れないね、接待行動は』
『慣れてください、内側に引き込まなければならないのですから』
『総力戦を演じるのは、ポラノルの方が適役だと思うんだがね....』
その風景を俯瞰しているのはケルビス、そしてカサンドラである。
ここ数日の戦闘において行われているのは、盛大な在庫処分であった。
連邦側は何故か進軍速度が遅い為、持てる全てをぶつける形でケルビスは行動を行っている。
『右翼に動きあり。崩れていますよ』
『分かっているとも、わざだとも、わざと。』
ケルビスは呟く。
内側に誘い込むためには、敵の目をごまかさなければならない。
事実、連邦が補給線を確保している領域はすでに、改良型の偵察艦により完全に掌握されており、行動を起こすと同時に全ての移動手段を断つ準備は出来ていた。
『敵はこちらがわざと手薄にした誘いに乗らず、右に戦力を集中させるだろう』
『では、どのように?』
『決まっているだろう?』
ケルビスは嗤う。
それは、愉悦からではない。
溢れ出る悔しさからのものだ。
『左翼を更に右に展開させるんだよ、今までの右翼を左翼にしてしまうんだ』
『ですが、旋回中の隙を狙われれば....』
『そうでもしないと減らないだろう』
『そうでしたね』
Ve’zは今、その総力を結集して演劇に勤しんでいた。
敵が、Ve’z側に余裕がないと思わせるための全てを実行しており、ハッキング攻撃に対しても時間をかけることでリソースが少ないように見せかけていた。
『アロウトの修復さえ終われば、歓迎の準備は終わりなんだがね』
『タッティラが頑張っているのですから、気長に待ちましょう』
『気長に、ね......我々が時間を気にする時が来るとは思わなかったね』
旋回中のVe’z艦隊は、そこに集中した光の束によって真横から殴られる形になり、次々と撃沈されていく。
「何か妙ですね.....」
『はい、ですが指揮系統の混乱が見られます。その影響の範囲内であるかと』
「強引な陣形変更で身を持ち崩しましたか」
連邦側もすっかり騙されていた。
だが、後方にいる旗艦アバターでは.....
「罠だな」
シンと呼ばれた男が、艦長席に座りながらそれを見抜く。
『お兄ちゃん? なんでそう思ったの?』
「今までの戦術パターンからして、少し”誘い”の気が強い。力押しだけではない何かを感じるな」
『やっぱりお兄ちゃんは凄いね!』
「油断するな、罠という事は分かったが、どこに何があるか分からない。オーロラ! 艦隊行動は精密に行え! 決して油断するな」
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