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終章(2/3)-『真実』編
232-キネス
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「神とはそもそも、吾輩たちの技術の結晶である」
「極端に発達した科学は...というわけか」
極端に発達した科学は、魔法と変わらない。
アルケーシアは持てる技術の全てを、その神に注いだのだ。
その結果生まれたのが...
「人工の神、というわけか」
「そうである」
その神に意思はなく、人間の願いを叶える存在である。
人間では難しい、物理法則の改変を、神は自動でやってくれる。
「神を構成する、現象の....そうだな、現象回路としておくか。それが、キネスである」
「わざわざ分割する必要はあったのか?」
「ある。現象同士の干渉は複雑であり、その制御の為に制御板に五つの現象回路が埋め込まれているのだ」
精神交感によって、僕の脳内にイメージが転送されてくる。
ありとあらゆる現象をオンオフし、奇跡を実現させるために、神の体内には無数の制御板が埋め込まれていたらしい。
「恐らく、神は崩壊した。器が砕け散り、現象回路はその物質を失い飛散した――――エリアス、君の中にもそれがあるな」
「そうなのか」
「感じる。何の力かは見なければわからない」
「今は解説を先にして欲しい」
「ああ」
ニトの解説は続く。
キネスというものの性質についてである。
「本来、現象回路とは人の魂魄に似た性質を持つのだ」
「魂を観測できているのか?」
「いいや。これは神秘学という領域の学説である」
科学で説明のできない要素を、神秘学と呼び、アルケーシアはそれを極めた文明という事だ。
現象を回路によって再現する技術もまた、神秘学の一環なのだそうだ。
「キネスとは、失われた名だ。事故で制御板から外れ、人の精神、もしくは魂魄と同化してしまい取り出しがきかなくなった現象回路によって引き起こされる病名なのである」
「病気なのか?」
「治せず、患者に不利益を与える物こそ病気と言って遜色なかろう?」
「そうだな」
直後、ニトの左目に菱形に似た紋様が現れる。
ただし一つの角は欠けており、アルファベットのCのようにも見えた。
「吾輩にもそれは宿ったようだ」
「何の力か分かるのか?」
「都合の良い事に、他人のキネスを測る力のようだ」
「都合がいいな」
「まだ神は生きているのかもしれぬ、吾輩にもそれは分からぬが」
その後も説明を受けた僕は、神の性質を理解した。
アルケーシアの中央部に安置されていた神は、祭壇にて人の祈りを聞き、言葉ではなくその願望を読み取って多重現象回路を起動。
奇跡的事象を発動し、エネルギーや既存の理論を無視した願望の行使を行う。
「だが、それは無制限の願いの行使に繋がらないか?」
「そうはならない。神は最低限のインターフェース処理を施されており、禁則事項に引っかかる願いの行使は行えない。誰かを消せ、殺すための道具を手に入れさせろ、確実な未来を予測せよ――――そう言った願いは願った時点で排除され、第二希望の願いが選択されるからだ」
「そうか」
どっちにしろ、神は消えた。
今僕らに残されたのは、アルケーシアの技術遺産とキネスだけである。
「.....それと、現象回路については少し覚えがあるな」
僕はラー・ゼソルについて語った。
彼らが行使する科学は極限まで進化しており、魔法とそう変わらなかった。
キネスもまた、その技術の一端なのではないかと。
「かもしれぬな。もともと神秘学の大躍進は、古代文明技術のリバースエンジニアリングだったと聞く」
「それを早く言え......」
僕はそういうと、席を立った。
何となく、そうした方がいいと思ったからだ。
「さぁ、僕のキネスとやらを詳らかにしてくれ」
「いいだろう、自然体で付き合うのだ」
ニトの目に紋様が再び浮かんだ。
それと同時に、僕の体の中で何かが震えた。
「極端に発達した科学は...というわけか」
極端に発達した科学は、魔法と変わらない。
アルケーシアは持てる技術の全てを、その神に注いだのだ。
その結果生まれたのが...
「人工の神、というわけか」
「そうである」
その神に意思はなく、人間の願いを叶える存在である。
人間では難しい、物理法則の改変を、神は自動でやってくれる。
「神を構成する、現象の....そうだな、現象回路としておくか。それが、キネスである」
「わざわざ分割する必要はあったのか?」
「ある。現象同士の干渉は複雑であり、その制御の為に制御板に五つの現象回路が埋め込まれているのだ」
精神交感によって、僕の脳内にイメージが転送されてくる。
ありとあらゆる現象をオンオフし、奇跡を実現させるために、神の体内には無数の制御板が埋め込まれていたらしい。
「恐らく、神は崩壊した。器が砕け散り、現象回路はその物質を失い飛散した――――エリアス、君の中にもそれがあるな」
「そうなのか」
「感じる。何の力かは見なければわからない」
「今は解説を先にして欲しい」
「ああ」
ニトの解説は続く。
キネスというものの性質についてである。
「本来、現象回路とは人の魂魄に似た性質を持つのだ」
「魂を観測できているのか?」
「いいや。これは神秘学という領域の学説である」
科学で説明のできない要素を、神秘学と呼び、アルケーシアはそれを極めた文明という事だ。
現象を回路によって再現する技術もまた、神秘学の一環なのだそうだ。
「キネスとは、失われた名だ。事故で制御板から外れ、人の精神、もしくは魂魄と同化してしまい取り出しがきかなくなった現象回路によって引き起こされる病名なのである」
「病気なのか?」
「治せず、患者に不利益を与える物こそ病気と言って遜色なかろう?」
「そうだな」
直後、ニトの左目に菱形に似た紋様が現れる。
ただし一つの角は欠けており、アルファベットのCのようにも見えた。
「吾輩にもそれは宿ったようだ」
「何の力か分かるのか?」
「都合の良い事に、他人のキネスを測る力のようだ」
「都合がいいな」
「まだ神は生きているのかもしれぬ、吾輩にもそれは分からぬが」
その後も説明を受けた僕は、神の性質を理解した。
アルケーシアの中央部に安置されていた神は、祭壇にて人の祈りを聞き、言葉ではなくその願望を読み取って多重現象回路を起動。
奇跡的事象を発動し、エネルギーや既存の理論を無視した願望の行使を行う。
「だが、それは無制限の願いの行使に繋がらないか?」
「そうはならない。神は最低限のインターフェース処理を施されており、禁則事項に引っかかる願いの行使は行えない。誰かを消せ、殺すための道具を手に入れさせろ、確実な未来を予測せよ――――そう言った願いは願った時点で排除され、第二希望の願いが選択されるからだ」
「そうか」
どっちにしろ、神は消えた。
今僕らに残されたのは、アルケーシアの技術遺産とキネスだけである。
「.....それと、現象回路については少し覚えがあるな」
僕はラー・ゼソルについて語った。
彼らが行使する科学は極限まで進化しており、魔法とそう変わらなかった。
キネスもまた、その技術の一端なのではないかと。
「かもしれぬな。もともと神秘学の大躍進は、古代文明技術のリバースエンジニアリングだったと聞く」
「それを早く言え......」
僕はそういうと、席を立った。
何となく、そうした方がいいと思ったからだ。
「さぁ、僕のキネスとやらを詳らかにしてくれ」
「いいだろう、自然体で付き合うのだ」
ニトの目に紋様が再び浮かんだ。
それと同時に、僕の体の中で何かが震えた。
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