【完結】SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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終章(2/3)-『真実』編

238-今はただ・・・

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僕はその後、順番に皆を抱きしめた。
ニトは背丈が足りず、僕は背を低くして彼女を抱く。

「あ...」
「どうした?」
「...昔、母に抱いてもらったことを思い出した。とても昔のことだ」
「そうか」
「柔らかいな、そして温かい。小生は...この温もりを、長く知ることはなかった」
「これからだ」

僕はニトの耳元で、宣言する。

「これからは、ずっとお前に温もりを与えてやる。お前の妹達にもだ」
「ああ」

僕はニトから手を離した。
ニトは赤面し、目を潤わせていた。
僕はニトに背を向け、次はアディナへ向かう。

「私は大丈夫、キシナ様を抱きしめてあげて欲しいです」
「分かった」

アディナは顔を真っ赤にして断ったため、僕はキシナを抱きしめてやる。
あの憎たらしい男、ジェキドが僕に託した少女は、僕が抱きしめると、手を回してきた。
自我はまだ希薄だが、反応はするらしい。
すぐに離れると、キシナは僕に視線を向けた。
その視線の意味はわからなかった。

「なんだか恥ずかしいな、改めてこういうことをするのは...」
「生娘のような反応だな」
「生娘だからっ! 変態っ!」

騒ぐティニアを、僕は優しく両腕で抱擁する。
身長はほとんど変わりないため、肩に息がかかる。
それに...何だか、果物のような香りもする。

「...エリアスって、何だか...」
「なんだ?」
「セメントみたいな匂いがする...!」
「褒めてるのか...?」

困惑しつつ、僕はティニアを離す。
すると、今度はティニアの方から抱きついてきた。

「全部終わったら、クロペルに来て。エリスと...ね!」
「勿論だ」

ティニアは僕を離すと、強引にディオナの方へ向かせた。
だがディオナは、手をヒラヒラと振ると、

「アタシは抱擁なんざしないさ、戦場に出る家族を送り出すのは、昔からこれって決まってんのさ」

僕に素早く近づくと、僕の頬に口付けした。

「さ、行って来な。アタシを殴んのも、罵るのも、それともキスし返すのも...全部生きて帰ってからさ!」
「あ、ああ」

どうも慣れない。
だが、ディオナは...

「お前は、いい女だな」
「よしな、女同士の趣味はないよ」

そう言いつつ、ディオナは少し赤くなっていた。
それが、雪国で育った彼女の常なのかは、僕には分からなかった。

「サーシャ...」
「私より、お姉さまに...とは言いません、私も、貴女を信じたいのです」
「ああ」

僕はサーシャを抱きしめた。
ああ....
今になって、僕は自分が後悔していたことを思い出した。
当時は勢いで決めたことだが、結果としてヴァンデッタ帝国は滅びた。
それを反省する気も、後悔する気もない。
ただ、サーシャの家族を、つまりは皇族を殺した事だけは、後悔している。
身勝手なものだが......きっと。

「それが人間というものだ」
「....? どうしましたか?」
「何でもない」

僕はサーシャを離してやった。
きっと彼女は、現実主義に目覚めたのだろう。
僕を殺せないから、復讐が出来ないから諦めたに過ぎない。
憎悪の上に薄く乗った愛情を信じれば、足元をすくわれる。

「もしアロウトが滅びることがあれば、エリスを守れ。僕と共に死ななくていい、エリスを....お前が”今”守りたいと思うものを守れ」
「......はい」

僕はサーシャから視線を外し、エリスの方を見た。
エリスは、僕の視線に合わせるようにぎこちなく目を動かした。

「.....行ってくる」
「ええ」

僕とエリスは暫く抱擁し合った。
それは、戦いに赴く者への祈りか、それとも死地へ向かう者と生きる者の別れか――――どちらにせよ。

「エリス、僕は撃墜されても死ぬわけではない。次のクローンに移るだけだが、僕の機体に予備機はない。――――つまり、墜とされても死なないが、同時に負けはする。だから」
「負けないで。エリアス、絶対に勝つこと」
「.....分かった」

他でもないエリスにそう言われたら、仕方ない。
僕は頷く。
必ず勝利してみせる。
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