【完結】SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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終章(2/3)-『真実』編

246-警備隊長の戦い

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舞台はヴェリアノス第四惑星の残骸アステロイドへと移る。
メッティーラは小隊を率いて単独行動を行うポラノルの代わりに全戦力を率いて、敵艦隊と交戦していた。

『厄介ですね』

指揮官自らが突撃してきた第三、第六指揮艦隊とは異なり、この第二・第八指揮艦隊はあくまでも遠距離からの迎撃を好むようであり、常にワープの準備を整えてから撃ち、メッティーラらが接近するとワープで逃げるという戦術を繰り返していた。
艦隊を二分してのクロスファイアも高度な連携のもと可能とするものであり、その練度と運用知識の深さにメッティーラは驚いていた。

『しかし、やはり人間が運用する以上...付け入る隙は多分にあります』

艦隊指揮の僅かな乱れ。
一糸乱れぬ連携を可能とするVe‘z艦隊とは違い、連邦艦隊はその動きに僅かなラグがある。
それを見逃すメッティーラではない。

『大型艦は回頭に時間がかかるようですね』

短距離ワープを繰り返し行った場合の一斉ワープへの移行の際、小型艦が一斉に追従するのに対して、戦艦や主力艦がついて来れていない弱点に、メッティーラはいち早く気付く。

『ポラノル、貴方も少しは手伝っては如何ですか?』
『アハハ! ゴメンよ、だけどボクも大変大変、大変さ! なにしろ敵の指揮官を二人も追いかけっこさせてるんだからさ!』
『ハァ...』

ポラノルは、逃走艦隊のフリをして敵の指揮官二人を連れた小規模艦隊を追撃として割かせていた。
それを追求するのは酷だと断じたメッティーラは、自らの艦隊に目を向ける。
そして即座に、ルナティラノスの数個体に副指揮権を委譲し、これからの高速艦隊行動に耐えられるようにした。

『ワープ開始』

メッティーラ艦隊がワープを開始したのに合わせ、連邦艦隊もワープに入る。
ワープが終了した時には、艦隊は全てワープに入っていた。

『更にワープ』

間髪入れず、メッティーラは即時ワープを実行した。
当然、ついて来れない艦も出る。
それらを副指揮権を持つルナティラノスに任せ、メッティーラは回頭が間に合った艦だけを連れてワープに入った。

『嘘!? もうワープしてきましたわ!』

それに動揺したのは、連邦の第八指揮官アハトだった。
彼女の機体は指揮用艦フェアリーウィングに移設されており、防御力が高められているものの、メッティーラらに撃たれれば一網打尽にされてしまうというのが、アハトの考えであった。

『ツヴァイ! どうなっていますの!?』
『想定の範囲内です、アハト。コンパクト・ジャンプフィールド・ジェネレーターを使用せよ』
『了解っ!』

ジャンプフィールドを生成し、短距離を一瞬で跳躍したアハト艦隊だったが、後尾がメッティーラに捕縛された。
メッティーラの下部から放たれた超兵器『キャプチャーボルト』が、範囲内の次元を固着させ、ワープもジャンプも出来ない状態にした上で、位相が可変しない...つまり動けない状態へと変えているのだ。
それらは、メッティーラの座乗するブロール=エクスティラノスによる集中砲火を浴びて宇宙の藻屑と化す。

『これは...!?』

その時。
爆風と共に、メッティーラの背後にいた艦隊が蒸発する。
そしてすぐに復元したものの、続けて起こった爆風によって今度こそ消し飛んだ。

『成程、隠し玉ですか』

遮蔽して逃げようとしていた艦隊を、到着が間に合ったルナティラノス艦隊が撃滅する。
即座にメッティーラは広域スキャンを行い、遮蔽していると思われる艦影を撃墜する。

『っ、爆撃艦が落とされた? どうやら遮蔽は無意味なようですね』

それを仕掛けた主犯は、連邦第二指揮官のツヴァイ。
ワープの繰り返しで、遮蔽した艦を置き去りに。
その上で各所に隠して、適宜爆弾を打ち込んで吹き飛ばす。
そういう作戦だったのだが...一瞬で打ち破られたのだ。

『どうしますの!? もう手がありませんわよ!』
『インフォモーフ・リーダーは使用できないのですか?』
『敵が生物じゃないみたいですわ、思考が暗号化されていて、こちらではどうにも解読できませんのよ』

アハトの乗艦、エンジェルウィングにはインフォモーフ・リーダーという、限定された範囲内の他者の意識を読み取る装備が搭載されている。
これは高度に半機械化されたアハトにしか使用できない装備だが、精神関連の技術に関してはVe‘zの方が一枚上手である。
精神リンクによる超高速感応通信には暗号化が施されており、古代Ve‘z語という誰も知らないような方式であるために、連邦ではそれを解読できないのだ。

『ならば、短期決戦あるのみです』
『もとより、そのつもりでしょう?』

連邦艦隊が動き出す。
メッティーラ艦隊を包囲するつもりのようだ。

『それが無謀であることは、これまでの戦いで知ったはずですが?』

メッティーラは呟く。
それと同時に、周囲のビットが別々の方向を向く。
同時に放たれた光の束が、包囲展開中の艦隊を一隻ずつ始末していく。
だがその時、メッティーラのセンサーが、高速で接近してくる機体を捉えた。
戦闘機隊十六機と、その中央に未確認の機体があった。

『愚かな』

メッティーラは本体武装を稼働させ、エクリプスレイの上位互換であるルインレーザーでそれらを薙ぎ払う。
接触しなくとも問題ない。
熱だけで周辺が焼き払われ、艦載機隊はその半数を失う。
一瞬で散開し、そしてメッティーラの修正射に撃ち落とされる。
だが、中央の一機だけは、攻撃を回避していた。
そして。

『これが狙いでしたか』

メッティーラの周囲から、先ほどは捕捉していなかった艦が現れ、一斉に爆弾を投射した。
メッティーラはそれを、テンタクルインテグレーターで撃ち落とし、味方のビットをその一機へと向かわせる。

『はぁ...はぁ...アハト! やりなさい!』
『承知ですわ!』

その機体の名はイェソド、全身砲台のような機体だが、凄まじい数のスラスターを搭載しており、転進に難があるものの高機動を実現していた。
そして、ツヴァイの号令に合わせて、本体の艦隊に動きが見られた。
後方に並んだ主力艦が、一斉にエネルギー光を収束させ始めたのだ。
敵の決戦兵器を撃つ用意が出来ている。

『好機!』

メッティーラはその機を逃さず、艦隊に指令を飛ばす。
メッティーラと距離を離していた艦隊が隊列を高速で組み直し、射線が重ならないようにして超兵器を充填し始めたのだ。
当然ながら、充填速度はVe‘zの方が早い。

『なっ!? ぐぅっ!?』
『貴女の相手は私ですよ』

それを見て、転進しようとしたイェソドだったが、メッティーラが超兵器「アンカーボルト」を撃ち込み、空間ごと固定して引っ張る。
正にチェーンデスマッチ、ただしイェソドの攻撃はメッティーラには通用しないというおまけ付きではあるが。

『消えなさい』
『無念...』

メッティーラの一斉砲撃がイェソドを消し飛ばすのと同時に、ルナティラノス艦隊から発射された超兵器の光の束が、連邦の艦隊を突っ切り、主力艦を次々と貫いた。
続いて、イェソドの残骸をビットの砲撃が蹂躙し引き裂いていく。

『砲撃開始』
『まだですわ、全艦退避...』

艦隊を逃がそうとしたアハトだったが、超遠距離からメッティーラが撃った射撃でフェアリーウィングが轟沈、それに巻き込まれて死亡した。
指揮官を失った艦隊に、ルナティラノス艦隊の集中砲火が突き刺さり、その数を毎秒数百単位で減らしていく。
勝負は完全に決していた。
ポラノルがやられたとして、最早連邦艦隊に勝機は残されてはいない。
...のだが。

『!』

メッティーラが、衝撃波を感知してそちらを振り返った。
シールドトランスファーアレイが、爆弾によって半壊していた。
まだ壊れてはいないが、機能を喪失している。

『全く、厄介な』

ポラノルがいれば対処も楽だったのに、と機械らしからぬ悪態を述べつつ、メッティーラはシールドトランスファーアレイを修理するために艦隊を動かし始めるのであった。
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