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終章(2/3)-『真実』編
249-データ記録『Cait'Lian』
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私の名前はケイトリン・エクスティラノス。
といっても、私を知らない者の方が多いだろうか?
Ve’zの歴史において、私程顔を出さない者はいない。
『人の王を知りたい、尊大に振舞え』
『エリアス様の前で、命令とはいえそのようなことはできません』
『そうか』
私の始まりは、そこからだ。
高貴であるために設計された私は、最初の三百年間を特に役割もなく過ごした。
だが、エリアス様に与えられた指令を実行するために、私は学習を繰り返し、王に対する知識を付けた。
当時はまだ、多くの未熟な文明が惑星の中で息づいていたため、学ぶことは多くあった。
『ケイトリン、上位権限を渡す』
『感謝します』
そして、三百年後のある日。
私は、カサンドラ様と同じレベルの権限を与えられ、アロウトのほぼ全てに干渉できるようになった。
その理由は、エクスティラノスの自我育成過程における造反防止。
王としての見地を身に着けた私であれば、その権限を預けるに相応しいとエリアス様は判断したようだ。
『この秘密は、守られるだろう』
私がアロウトの反乱防止システムの基幹である事は、エリアス様とカサンドラ様、グレゴル、そして私自身の四人の共通の秘密となり、他のエクスティラノスからは隠匿された。
『エリアス様、王とはどのような存在なのでしょうか?』
ある時。
私は自分の存在意義に疑念を抱いた。
ただ知識を集積し、その全てを研究するだけであれば、私の先輩にあたるシーシャもやっていることである。
自分の存在意義とは?
リソースを無駄にしている自分の存在は、ノクティラノスにも務まるのではないのか。
『わからない。私では.....ありきたりな答えしか用意できないだろう』
『エリアス様にも、御分かりにならない事があるのですか?』
『ああ。私も人間だ』
『では、私はどのようにあるべきですか?』
『私の鏡になれ、私がどう変わろうと、今この場における私だけの鏡になるがいい』
自分こそが王である。
王を名乗るなら自らを模倣せよ。
エリアス様はそう言われた。
『へぇ、アナタがケイトリンですカ?』
それから幾千年。
私の後輩が生まれた。
名はポラノル、今度は道化師だという。
『そうである』
『私は、ポラノル。滑稽で、アル』
『滑稽には見えぬ』
私は、新しく生まれた後輩に対してそう断じた。
...正確には、エリアス様からそう言われていたのだ。
『ポラノルは途上故、決して認めるな』
と。
なので、私はあくまで尊大に振る舞う。
『滑稽には見えぬ、全てが足りぬ。それ故に、より高めることができよう』
『そうですか...精進します』
ポラノルはそのうち、外部への積極的な侵略に乗り出し、私もポラノルに関わることは無くなった。
その代わり、薄い自我を獲得し始めたエクスティラノス達と、私は積極的に関わることになっていった。
『ケイトリン様、エリアス様に力で自らを示すには、どうすれば良いでしょうか』
『それは忠誠と人間は呼ぶぞ、ジェネラス』
『忠誠...興味深いです』
ジェネラス。
そして、
『あなたは王の知識を集めているのでしたね? ならば、エリアス様の前で密偵らしく振る舞う術を教えてください』
『問題ない、そのままで』
『はい、ありがとうございます』
シュマル。
最後に、
『ガハハハハ! 余の前に王を名乗るとは! 命が惜しいとは思えぬぞ、ケイトリン』
『そちらこそ...剣をちらつかせ、脅しで迫るのは愚者のする事であると知るがいい』
ナル・ラストティラノスとも。
私は、多くの彼ら彼女らと関わり、そして王としての知識を活用するようになった。
多くの戦いにおいて、私とナルは双璧を為して戦った。
Ve’zに戦争を仕掛け、領土内に立ち入って壊滅しなかった艦隊はなく、多くの国がVe’zを攻撃することをタブーとしていった。
そんな中。
エリアス様が御隠れになられた。
『あなたは何を思ったのですか?』
眠るエリアス様のクローンを前にして、当時の私は呟いた。
私に王道を、ポラノルに道化を。
それぞれ求めていたあの御方が、ただ無意味にそうしろと言ったわけではないのは重々承知である。
だからこそ、何を思い、意図的にシステムを断ち切られたのか。
カサンドラ様と違い、ログを閲覧できてしまう身だからこそ、理解できなかった。
『人間らしくあれ、王道を忘れるな』
それから幾千年。
私は崩壊した重力星雲の中で、終わりなき考証に身を沈めていた。
自壊することは、命令がなければできない。
しかし、主なくして存在しているのは奇妙なことだ。
それ故に、シールドを徐々に削り、装甲を破壊することで自壊しようとしていたのだが.....
もう少しで装甲に届く、といったタイミングで、懐かしい声での指示が届いた。
『どういう事でしょうか!?』
思念で叫ぶも、答えは帰ってくることはない。
慌てて私は、重力星雲から脱する試みに出た。
しかしながら、少し時間がかかってしまい、辿り着いたときには、多くのエクスティラノスが戻ってきている状態にあった。
困惑の中、エリアス様は私に尋ねた。
『Ve’zは今、大変革の時期にある。お前たちは、今までと違うVe’zを受け入れられるか?』
『度合いによりますが...我は、その...以前とは何かが変わったのを感じております。例えそれがどのような変化であろうと、我は問題なく受け止められるかと存じます』
私は、そう答えた。
エリアス様がどう変わろうと重要ではない。
私がエリアス様に変わらぬ忠義を尽くす事こそが重要なのだ。
『今、僕は大切な人間を何人か抱えている。無礼があったとしても攻撃はするな』
エリアス様はそう言い、いくつか言い残して去った。
あの御方は変わられた。
しかし、微細でも、過剰でもない。
変わらず王道を貫かれている。
『どうして私に?』
『私、一応女王やってるので! 王様の振る舞い? っていうのを勉強したいんです』
それからというもの、クロペル共和国の女王だというティニアが定期的に尋ねてくるようになった。
王としての振る舞いを学びたいのだという。
私は彼女に、学んだことの全てを教えることにした。
私に王を学べと言われたエリアス様は、王になられた。
では次は、彼女を王にする番だ。
といっても、私を知らない者の方が多いだろうか?
Ve’zの歴史において、私程顔を出さない者はいない。
『人の王を知りたい、尊大に振舞え』
『エリアス様の前で、命令とはいえそのようなことはできません』
『そうか』
私の始まりは、そこからだ。
高貴であるために設計された私は、最初の三百年間を特に役割もなく過ごした。
だが、エリアス様に与えられた指令を実行するために、私は学習を繰り返し、王に対する知識を付けた。
当時はまだ、多くの未熟な文明が惑星の中で息づいていたため、学ぶことは多くあった。
『ケイトリン、上位権限を渡す』
『感謝します』
そして、三百年後のある日。
私は、カサンドラ様と同じレベルの権限を与えられ、アロウトのほぼ全てに干渉できるようになった。
その理由は、エクスティラノスの自我育成過程における造反防止。
王としての見地を身に着けた私であれば、その権限を預けるに相応しいとエリアス様は判断したようだ。
『この秘密は、守られるだろう』
私がアロウトの反乱防止システムの基幹である事は、エリアス様とカサンドラ様、グレゴル、そして私自身の四人の共通の秘密となり、他のエクスティラノスからは隠匿された。
『エリアス様、王とはどのような存在なのでしょうか?』
ある時。
私は自分の存在意義に疑念を抱いた。
ただ知識を集積し、その全てを研究するだけであれば、私の先輩にあたるシーシャもやっていることである。
自分の存在意義とは?
リソースを無駄にしている自分の存在は、ノクティラノスにも務まるのではないのか。
『わからない。私では.....ありきたりな答えしか用意できないだろう』
『エリアス様にも、御分かりにならない事があるのですか?』
『ああ。私も人間だ』
『では、私はどのようにあるべきですか?』
『私の鏡になれ、私がどう変わろうと、今この場における私だけの鏡になるがいい』
自分こそが王である。
王を名乗るなら自らを模倣せよ。
エリアス様はそう言われた。
『へぇ、アナタがケイトリンですカ?』
それから幾千年。
私の後輩が生まれた。
名はポラノル、今度は道化師だという。
『そうである』
『私は、ポラノル。滑稽で、アル』
『滑稽には見えぬ』
私は、新しく生まれた後輩に対してそう断じた。
...正確には、エリアス様からそう言われていたのだ。
『ポラノルは途上故、決して認めるな』
と。
なので、私はあくまで尊大に振る舞う。
『滑稽には見えぬ、全てが足りぬ。それ故に、より高めることができよう』
『そうですか...精進します』
ポラノルはそのうち、外部への積極的な侵略に乗り出し、私もポラノルに関わることは無くなった。
その代わり、薄い自我を獲得し始めたエクスティラノス達と、私は積極的に関わることになっていった。
『ケイトリン様、エリアス様に力で自らを示すには、どうすれば良いでしょうか』
『それは忠誠と人間は呼ぶぞ、ジェネラス』
『忠誠...興味深いです』
ジェネラス。
そして、
『あなたは王の知識を集めているのでしたね? ならば、エリアス様の前で密偵らしく振る舞う術を教えてください』
『問題ない、そのままで』
『はい、ありがとうございます』
シュマル。
最後に、
『ガハハハハ! 余の前に王を名乗るとは! 命が惜しいとは思えぬぞ、ケイトリン』
『そちらこそ...剣をちらつかせ、脅しで迫るのは愚者のする事であると知るがいい』
ナル・ラストティラノスとも。
私は、多くの彼ら彼女らと関わり、そして王としての知識を活用するようになった。
多くの戦いにおいて、私とナルは双璧を為して戦った。
Ve’zに戦争を仕掛け、領土内に立ち入って壊滅しなかった艦隊はなく、多くの国がVe’zを攻撃することをタブーとしていった。
そんな中。
エリアス様が御隠れになられた。
『あなたは何を思ったのですか?』
眠るエリアス様のクローンを前にして、当時の私は呟いた。
私に王道を、ポラノルに道化を。
それぞれ求めていたあの御方が、ただ無意味にそうしろと言ったわけではないのは重々承知である。
だからこそ、何を思い、意図的にシステムを断ち切られたのか。
カサンドラ様と違い、ログを閲覧できてしまう身だからこそ、理解できなかった。
『人間らしくあれ、王道を忘れるな』
それから幾千年。
私は崩壊した重力星雲の中で、終わりなき考証に身を沈めていた。
自壊することは、命令がなければできない。
しかし、主なくして存在しているのは奇妙なことだ。
それ故に、シールドを徐々に削り、装甲を破壊することで自壊しようとしていたのだが.....
もう少しで装甲に届く、といったタイミングで、懐かしい声での指示が届いた。
『どういう事でしょうか!?』
思念で叫ぶも、答えは帰ってくることはない。
慌てて私は、重力星雲から脱する試みに出た。
しかしながら、少し時間がかかってしまい、辿り着いたときには、多くのエクスティラノスが戻ってきている状態にあった。
困惑の中、エリアス様は私に尋ねた。
『Ve’zは今、大変革の時期にある。お前たちは、今までと違うVe’zを受け入れられるか?』
『度合いによりますが...我は、その...以前とは何かが変わったのを感じております。例えそれがどのような変化であろうと、我は問題なく受け止められるかと存じます』
私は、そう答えた。
エリアス様がどう変わろうと重要ではない。
私がエリアス様に変わらぬ忠義を尽くす事こそが重要なのだ。
『今、僕は大切な人間を何人か抱えている。無礼があったとしても攻撃はするな』
エリアス様はそう言い、いくつか言い残して去った。
あの御方は変わられた。
しかし、微細でも、過剰でもない。
変わらず王道を貫かれている。
『どうして私に?』
『私、一応女王やってるので! 王様の振る舞い? っていうのを勉強したいんです』
それからというもの、クロペル共和国の女王だというティニアが定期的に尋ねてくるようになった。
王としての振る舞いを学びたいのだという。
私は彼女に、学んだことの全てを教えることにした。
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