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終章(3/3)-『決着』編
273-回想『ARATA』
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僕の名前は黒川新。
新という名は、親が考えたものではない。
何やらお寺に行き、縁起のいい名前を選んでもらったそうだ。
僕は親に愛されて育った。
その証拠に、運動や勉強に関するものは何でも買い与えられたからだ。
保育園ではなく幼稚園に通い、勉強の日々を過ごした。
その内、人づきあいがうまくなった。
人を理解できて、角の立たない付き合いが出来るようになったのだ。
逆に大人たちは僕を不気味がったが、母親は僕を守ってくれた。
『うちの子は優秀なんです、他の子と違う事はそちらも理解してくださいね』
そう母が言うたび、僕は嬉しかった。
親は愛を僕にくれたのだと。
そのうち小学校に上がった僕は、ただ勉学に打ち込んだ。
外部からの刺激が増えてきて、マンガやゲーム等もやったけれど、どれも楽しくはなかった。
学ぶことの方が重要だった。
基礎体力をつけ、スポーツにも積極的に参加した。
優等生だった僕は、誰からも嫌われなかった。
だが......そう、嫌われているとは違う。
良く思わない人たちもいた。
『おい、アラタ! 勉強できるからってチョーシに乗るんじゃねえぞ』
『なんでこいつ、笑って.....』
集団で僕をリンチした彼等の名前を、今はもう思い出せない。
ただ、殴るけるの暴行を受けながら僕は思ったのだ。
こいつらは愚かだと。
争いでしか物事を解決できず、自分らが劣っているという事を理解しつつも、どうしようもできないので暴力で圧倒することに逃げていると。
だからか、笑いが止まらなかった。
僕を好き勝手嬲った彼らは、怯えて逃げていった。
母親にそれを報告すると、当然大問題になった。
『アラタは優秀なんだから、邪魔する子はちゃんと言うのよ』
『はい』
そして僕は受験を経て、中学に進んだ。
中学校の記憶は薄い、ただ....担任が体育会系で厳しかった記憶はある。
厳しい受験を乗り越えただけあり、緩い雰囲気だったが、僕はそんな中英単語帳を開いていた。
母は止まった者から駄目になると教えてくれた。
だから、僕は止まらなかった。
漢字検定や英語検定も次々と上のランクへと進み、僕はどんどんと成績を伸ばしていった。
だが....ある日、僕は疑問を抱いた。
本当に知識だけで、社会で生き抜けるのかと。
それを母に尋ねたが、
『私は専業主婦なのよ。分かるわけないでしょう、それより勉強は終わったの? 終わったなら冷蔵庫に梨があるわ』
と言われた。
そこで初めて、僕は親に疑問を持った。
専業主婦の母親は、僕に指図する資格はあるのだろうか? と。
だが、それは僕の傲慢だった。
勉強を拒否した途端、全ての待遇が一度に悪くなった。
『あなたは、勉強さえ、していればいいの。これは貴方の為を思って言っているのよ、社会で生きていくためには、勉強が必要なの』
その言葉に重みはなかったが、学期を重ねるうちに些事になっていった。
挫折を経て、僕はより勉学に重きを置いた。
そのうち運動も原因不明の違和感に悩まされたことで徐々にできなくなり、そして高校受験を迎えた。
僕のえてきた知識は全て役に立ち、僕は母に感謝した。
やはり、社会で生きていくためには、人より優れなければならない。
上澄みなどいくらでもいるのだから、もっと努力しなければならないと。
『父さん、ここを教えてほしいんだけど』
『はは...僕にはわからないな』
父も母も頼りにならない中、僕はついに国内の検定を踏破してしまい、翻訳のアルバイトで金を稼いだ。
本当は飲食業で働きたかったが、
『駄目よ飲食業なんて。きついし、汚いし、何より貴方のキャリアに関わるわ。もっとインテリな仕事を選びなさい』
と言われたので、翻訳のアルバイトを始めた。
大学に入ったら、家庭教師で稼ごうと思いつつ。
高校二年から大学受験勉強を本格的に開始した僕は、母親の言う通り東大を目指した。
総合的には僕のやりたい事と東大は合っていないように見えたが....
『やりたい事よりキャリアでしょう? それに、東大ならみんな良いって言ってるんだから良いに決まってるでしょう』
母がそう言うので、僕は第一志望を東大に定め受験勉強を開始した。
結果として、東大には受からなかった。
母は泣き崩れたが、僕は自分の中で無理だなと察してはいた。
ただ勉強だけをしていて突破できる問題ではなかった。
しかし、第二志望の国立に入れたため、僕は大学院を目指すべく勉強の日々を送っていたが――――
以前から感じていた、筋肉の違和感。
それが悪化し、受診した所....筋ジストロフィーだと診断された。
治療の難しい病気である事は、医大に進める知識を持っていた僕にも分かる事だった。
入院することになった僕は、それでも勉強は続けた。
しかし、母親は一度も会いに来なかった。
そうだろう、僕は役立たずになったのだから。
その後のことは、よく覚えていない。
だが、弟が生まれたと、父親から聞いたとき、僕は思った。
『スペアが産まれたのか』
と。
程なくして僕は死んだ....のだろう。
それからは、驚きの連続だった。
得られる知識も、より拡張された。
知り、理解するプロセスがより直感的になったことで、知識を集める事も以前より楽になった。
だが、自分以外について理解を深めれば深めるほど――――自分が空っぽであると気付いた。
何か別の原動力が僕にはあり、それが僕を動かしていたのだが、それは今は無い。
しかし、エクスティラノス達は僕に従うし、僕には彼等を導く責務があった。
そのうち、人間に会った。
僕はなぜか、その人間を助けてしまった。
恋愛等、興味もなかったのに。
僕はなぜか、その人のことが気になって仕方なくなったのだ。
無論、それを表に出すほど愚かではない。
『くよくよ悩まなくていいわ!』
僕は彼女に対して複雑な思いを抱いていたが、不慣れさから中途半端な対応になっていた。
その結果、僕は怒りに駆られ、彼女の故郷を焼いてしまった。
だが...彼女は、そんな僕を許してくれたのだ。
僕には生きる目的が生まれた。
その後、色々なことがあった。
筆舌に尽くし難い数々の経験が、僕の空っぽの中身を満たし、灰色だった世界が色づいて行った。
だから、これは...報いだ。
僕は、救いを得てしまった。
それが、僕に対しての罰なのだ。
新という名は、親が考えたものではない。
何やらお寺に行き、縁起のいい名前を選んでもらったそうだ。
僕は親に愛されて育った。
その証拠に、運動や勉強に関するものは何でも買い与えられたからだ。
保育園ではなく幼稚園に通い、勉強の日々を過ごした。
その内、人づきあいがうまくなった。
人を理解できて、角の立たない付き合いが出来るようになったのだ。
逆に大人たちは僕を不気味がったが、母親は僕を守ってくれた。
『うちの子は優秀なんです、他の子と違う事はそちらも理解してくださいね』
そう母が言うたび、僕は嬉しかった。
親は愛を僕にくれたのだと。
そのうち小学校に上がった僕は、ただ勉学に打ち込んだ。
外部からの刺激が増えてきて、マンガやゲーム等もやったけれど、どれも楽しくはなかった。
学ぶことの方が重要だった。
基礎体力をつけ、スポーツにも積極的に参加した。
優等生だった僕は、誰からも嫌われなかった。
だが......そう、嫌われているとは違う。
良く思わない人たちもいた。
『おい、アラタ! 勉強できるからってチョーシに乗るんじゃねえぞ』
『なんでこいつ、笑って.....』
集団で僕をリンチした彼等の名前を、今はもう思い出せない。
ただ、殴るけるの暴行を受けながら僕は思ったのだ。
こいつらは愚かだと。
争いでしか物事を解決できず、自分らが劣っているという事を理解しつつも、どうしようもできないので暴力で圧倒することに逃げていると。
だからか、笑いが止まらなかった。
僕を好き勝手嬲った彼らは、怯えて逃げていった。
母親にそれを報告すると、当然大問題になった。
『アラタは優秀なんだから、邪魔する子はちゃんと言うのよ』
『はい』
そして僕は受験を経て、中学に進んだ。
中学校の記憶は薄い、ただ....担任が体育会系で厳しかった記憶はある。
厳しい受験を乗り越えただけあり、緩い雰囲気だったが、僕はそんな中英単語帳を開いていた。
母は止まった者から駄目になると教えてくれた。
だから、僕は止まらなかった。
漢字検定や英語検定も次々と上のランクへと進み、僕はどんどんと成績を伸ばしていった。
だが....ある日、僕は疑問を抱いた。
本当に知識だけで、社会で生き抜けるのかと。
それを母に尋ねたが、
『私は専業主婦なのよ。分かるわけないでしょう、それより勉強は終わったの? 終わったなら冷蔵庫に梨があるわ』
と言われた。
そこで初めて、僕は親に疑問を持った。
専業主婦の母親は、僕に指図する資格はあるのだろうか? と。
だが、それは僕の傲慢だった。
勉強を拒否した途端、全ての待遇が一度に悪くなった。
『あなたは、勉強さえ、していればいいの。これは貴方の為を思って言っているのよ、社会で生きていくためには、勉強が必要なの』
その言葉に重みはなかったが、学期を重ねるうちに些事になっていった。
挫折を経て、僕はより勉学に重きを置いた。
そのうち運動も原因不明の違和感に悩まされたことで徐々にできなくなり、そして高校受験を迎えた。
僕のえてきた知識は全て役に立ち、僕は母に感謝した。
やはり、社会で生きていくためには、人より優れなければならない。
上澄みなどいくらでもいるのだから、もっと努力しなければならないと。
『父さん、ここを教えてほしいんだけど』
『はは...僕にはわからないな』
父も母も頼りにならない中、僕はついに国内の検定を踏破してしまい、翻訳のアルバイトで金を稼いだ。
本当は飲食業で働きたかったが、
『駄目よ飲食業なんて。きついし、汚いし、何より貴方のキャリアに関わるわ。もっとインテリな仕事を選びなさい』
と言われたので、翻訳のアルバイトを始めた。
大学に入ったら、家庭教師で稼ごうと思いつつ。
高校二年から大学受験勉強を本格的に開始した僕は、母親の言う通り東大を目指した。
総合的には僕のやりたい事と東大は合っていないように見えたが....
『やりたい事よりキャリアでしょう? それに、東大ならみんな良いって言ってるんだから良いに決まってるでしょう』
母がそう言うので、僕は第一志望を東大に定め受験勉強を開始した。
結果として、東大には受からなかった。
母は泣き崩れたが、僕は自分の中で無理だなと察してはいた。
ただ勉強だけをしていて突破できる問題ではなかった。
しかし、第二志望の国立に入れたため、僕は大学院を目指すべく勉強の日々を送っていたが――――
以前から感じていた、筋肉の違和感。
それが悪化し、受診した所....筋ジストロフィーだと診断された。
治療の難しい病気である事は、医大に進める知識を持っていた僕にも分かる事だった。
入院することになった僕は、それでも勉強は続けた。
しかし、母親は一度も会いに来なかった。
そうだろう、僕は役立たずになったのだから。
その後のことは、よく覚えていない。
だが、弟が生まれたと、父親から聞いたとき、僕は思った。
『スペアが産まれたのか』
と。
程なくして僕は死んだ....のだろう。
それからは、驚きの連続だった。
得られる知識も、より拡張された。
知り、理解するプロセスがより直感的になったことで、知識を集める事も以前より楽になった。
だが、自分以外について理解を深めれば深めるほど――――自分が空っぽであると気付いた。
何か別の原動力が僕にはあり、それが僕を動かしていたのだが、それは今は無い。
しかし、エクスティラノス達は僕に従うし、僕には彼等を導く責務があった。
そのうち、人間に会った。
僕はなぜか、その人間を助けてしまった。
恋愛等、興味もなかったのに。
僕はなぜか、その人のことが気になって仕方なくなったのだ。
無論、それを表に出すほど愚かではない。
『くよくよ悩まなくていいわ!』
僕は彼女に対して複雑な思いを抱いていたが、不慣れさから中途半端な対応になっていた。
その結果、僕は怒りに駆られ、彼女の故郷を焼いてしまった。
だが...彼女は、そんな僕を許してくれたのだ。
僕には生きる目的が生まれた。
その後、色々なことがあった。
筆舌に尽くし難い数々の経験が、僕の空っぽの中身を満たし、灰色だった世界が色づいて行った。
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それが、僕に対しての罰なのだ。
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