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終章(3/3)-『決着』編
291-シーフードなグルメたち
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夜。
僕らは、ティニアの別荘の庭で海産物を頂くことにした。
買い物にはティニアとアディナが行ってくれた。
何しろ所帯が大きいので、地元の魚屋で交渉できる人間が必要だった。
ティニアが居たことで、値段以上のものも貰ってきたようだ。
『ただでモノを受け取ると、後々足を掬われるぞ』
「感謝は受け取らないと。それに、ちゃんと買い物はしてるもん」
『だったとしても....おまけが多すぎる』
流石に魚の切り身50人前に刺身30人前、その他諸々30kg程は一日で消費しきれるものではない。
いや......出来なくはないのか?
うちは所帯が大きいのは確かだ、ニトのクローンが100人いる訳だからな。
調理する方が大変な気もする。
「えへへ、実はね...私ってほら、女王になってからもここを契約してたから...」
機材を持ったアンドロイドが列になって出てきて、一斉にお辞儀した。
「大所帯用の護衛用のお世話アンドロイドも置いてるんだ!」
『準備がいいな』
テキパキとアンドロイドたちは庭に調理器具を準備していく。
僕らはそれをゆったりと眺める。
流石にカトラリーと皿はシャトルに積んでいたものだ。
100人分は用意できないだろうからな。
「さて....どうする、エリアス?」
『まずは焼こう』
「了解!」
物騒な会話に聞こえるが、実際は違う。
調理不要の刺身などは一度放っておいて、調理しなければ食べられない(食べられない事も無いが、やはり焼いたほうが美味いとの判断だ)魚介類から食べてしまおうという訳である。
ティニアが買って来たものを網の上に並べ、そしてすぐに音を立て始めるのを聞く。
思えば、Ve’zとして生まれてから、焚火を目にする機会が一気に無くなった。
ある意味、新鮮だな。
揺らめき、明滅するように色を変える炎。
それを目に映して、僕はしばし時間を過ごす。
いつの間にか、隣にエリスが座っていた。
『食べないのか?』
「ふふ、分かってるくせに」
『ああ』
成程。
僕は皿に取り分けた貝を、箸のようなカトラリーをうまく使って中身を取り出す。
そして、箸で摘まんでエリスの前に差し出す。
「一度やってみたかったのよ」
『意外と、ロマンチストだな?』
「あなたもでしょ?」
僕は箸で摘まんだ貝を、エリスの口の中に入れた。
エリスが笑いながらそれを咀嚼して、僕にやり返そうとしたとき。
「それ、どういう意味があるの?」
ティニアが割り込んできた。
僕は気をよくして、箸でいい感じに焼けている魚を摘まみ、彼女の口に放り込む。
ワイルドに咀嚼する彼女の前で、僕は解説する。
『てっきり共通認識かと思ったんだが.....ようは、恋人になったらやりたい事....みたいなものだ、僕は給餌行動.....動物が、つがいに餌を渡すことで求愛するという光景から連想したものだと思ってる』
「へぇ~じゃあ、エリアスは私が大好きって事!?」
『そうなるな、エリスも一緒に大好きだ』
ここにはエクスティラノスがいない。
砕けて話せるので、気楽だった。
重荷という訳ではないが、彼ら彼女らの前でこんな様子は見せられない。
「妬けるな、吾輩に嫉妬や羨望といったものはないが、しかし興味がある」
「はいはい、お刺身も準備出来ましたよ」
「ヴァンデッタ帝国の地方料理ですが、アレンジも用意しました、お姉様!」
その時、背後から声がかかる。
僕はニトにも食べさせてやり、その後全員から口に料理を突っ込まれた。
デュクレット....つまり刺身は、日本のものとは大きく違い、甘辛いドレッシングを掛けて楽しむもののようだった。
サーシャが持ってきたのは、驚くことに寿司だった。
だが、驚きはしたが意外性はなかった。
地方の下手物という扱いらしく、生の赤身魚を白飯に載せたものらしく、酢飯にする工程はなかった。
それでも懐かしい味だったが。
その後は、戯れは一度辞め、焦げ始めた魚や貝を全員で食べた。
ニトたちは好き勝手取り分けて食べていたので、たまにアディナが仲裁に入るくらいで済んでいた。
『今度は肉が食いたくなってきたな』
「そうね....ピロエットルとか、どうかしら」
『.....いいのか?』
「もう過ぎたことよ。あなたは悪くないんだし」
またどこかで、万国料理の宴を開ければいいな。
僕はふとそう思う。
まあ、それはまた後で考えよう。
戦いの結果を見守り、そこからまた考えればいい事だ。
僕らは、ティニアの別荘の庭で海産物を頂くことにした。
買い物にはティニアとアディナが行ってくれた。
何しろ所帯が大きいので、地元の魚屋で交渉できる人間が必要だった。
ティニアが居たことで、値段以上のものも貰ってきたようだ。
『ただでモノを受け取ると、後々足を掬われるぞ』
「感謝は受け取らないと。それに、ちゃんと買い物はしてるもん」
『だったとしても....おまけが多すぎる』
流石に魚の切り身50人前に刺身30人前、その他諸々30kg程は一日で消費しきれるものではない。
いや......出来なくはないのか?
うちは所帯が大きいのは確かだ、ニトのクローンが100人いる訳だからな。
調理する方が大変な気もする。
「えへへ、実はね...私ってほら、女王になってからもここを契約してたから...」
機材を持ったアンドロイドが列になって出てきて、一斉にお辞儀した。
「大所帯用の護衛用のお世話アンドロイドも置いてるんだ!」
『準備がいいな』
テキパキとアンドロイドたちは庭に調理器具を準備していく。
僕らはそれをゆったりと眺める。
流石にカトラリーと皿はシャトルに積んでいたものだ。
100人分は用意できないだろうからな。
「さて....どうする、エリアス?」
『まずは焼こう』
「了解!」
物騒な会話に聞こえるが、実際は違う。
調理不要の刺身などは一度放っておいて、調理しなければ食べられない(食べられない事も無いが、やはり焼いたほうが美味いとの判断だ)魚介類から食べてしまおうという訳である。
ティニアが買って来たものを網の上に並べ、そしてすぐに音を立て始めるのを聞く。
思えば、Ve’zとして生まれてから、焚火を目にする機会が一気に無くなった。
ある意味、新鮮だな。
揺らめき、明滅するように色を変える炎。
それを目に映して、僕はしばし時間を過ごす。
いつの間にか、隣にエリスが座っていた。
『食べないのか?』
「ふふ、分かってるくせに」
『ああ』
成程。
僕は皿に取り分けた貝を、箸のようなカトラリーをうまく使って中身を取り出す。
そして、箸で摘まんでエリスの前に差し出す。
「一度やってみたかったのよ」
『意外と、ロマンチストだな?』
「あなたもでしょ?」
僕は箸で摘まんだ貝を、エリスの口の中に入れた。
エリスが笑いながらそれを咀嚼して、僕にやり返そうとしたとき。
「それ、どういう意味があるの?」
ティニアが割り込んできた。
僕は気をよくして、箸でいい感じに焼けている魚を摘まみ、彼女の口に放り込む。
ワイルドに咀嚼する彼女の前で、僕は解説する。
『てっきり共通認識かと思ったんだが.....ようは、恋人になったらやりたい事....みたいなものだ、僕は給餌行動.....動物が、つがいに餌を渡すことで求愛するという光景から連想したものだと思ってる』
「へぇ~じゃあ、エリアスは私が大好きって事!?」
『そうなるな、エリスも一緒に大好きだ』
ここにはエクスティラノスがいない。
砕けて話せるので、気楽だった。
重荷という訳ではないが、彼ら彼女らの前でこんな様子は見せられない。
「妬けるな、吾輩に嫉妬や羨望といったものはないが、しかし興味がある」
「はいはい、お刺身も準備出来ましたよ」
「ヴァンデッタ帝国の地方料理ですが、アレンジも用意しました、お姉様!」
その時、背後から声がかかる。
僕はニトにも食べさせてやり、その後全員から口に料理を突っ込まれた。
デュクレット....つまり刺身は、日本のものとは大きく違い、甘辛いドレッシングを掛けて楽しむもののようだった。
サーシャが持ってきたのは、驚くことに寿司だった。
だが、驚きはしたが意外性はなかった。
地方の下手物という扱いらしく、生の赤身魚を白飯に載せたものらしく、酢飯にする工程はなかった。
それでも懐かしい味だったが。
その後は、戯れは一度辞め、焦げ始めた魚や貝を全員で食べた。
ニトたちは好き勝手取り分けて食べていたので、たまにアディナが仲裁に入るくらいで済んでいた。
『今度は肉が食いたくなってきたな』
「そうね....ピロエットルとか、どうかしら」
『.....いいのか?』
「もう過ぎたことよ。あなたは悪くないんだし」
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僕はふとそう思う。
まあ、それはまた後で考えよう。
戦いの結果を見守り、そこからまた考えればいい事だ。
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