冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ

文字の大きさ
39 / 46
第3章 俺たちの楽園

7 封印強化装置

しおりを挟む
「四柱の神の紋章──これを刻むことができるのは、神が造ったものだけです」

 と、ノエル。

「王宮にいたとき、ディフレイムの国宝『神竜剛炎剣しんりゅうごうえんけん』を見たことがあるんですけど、これと同じ紋章がありました。四神の紋章は、そういうレベルの宝具にのみ刻まれているはずです」
「つまり、これも神造級の道具ってことか? それも一級の──」

 俺はあらためて石碑を見た。

 下部に長方形のくぼみがある。

 ヴン……!

 鈍い音がして、そこに映像が浮かんだ。

「なんだ……?」



『封印強化装置』

 状態  :稼働中
 居住人数:591
 必要人数:200
 封印条件:良好



「封印強化装置……」

 俺はハッとなった。

「もしかして、邪神の封印を強化する道具ってことか?」
「この村は邪神の封印を強化するために作られた場所です。ここに一定の人数が住んでいれば、封印の強化ポイントとして働きます。もしその人数を下回れば、強化効果はなくなる……と、聞いたことがあります」

 と、ノエル。
 その辺の説明は俺もある程度聞いていた。

「じゃあ、ここに示されている数字は村の状況で……これ自体が、封印強化のための装置なのか?」

 俺はあらためて石碑を見つめた。

「そうなると、村長宅の庭に突然地下通路が現れた理由はなんだろう?」

 まさか、封印になんらかの変化が起きているってことじゃないだろうな。

 と、

 ヴ……ヴヴヴ……ヴ……!

 画面がふいに明滅した。



 封印状態:良好→不安定
 警告段階:2



 赤い文字で『警告表示』って出てるんだけど……。

「カイル様……」

 不安げなノエルに、俺は険しい表情でうなずいた。

 嫌な予感がする──。

 次の瞬間、石碑全体がまばゆい光を放った。

    ※

 村の大通りに二人の少女がいた。

 銀髪のエルフと、青い髪の竜騎士。
 いずれも類まれな美少女二人は、マキナとサーシャである。

「マキナ、ノエル様がどこに行ったか知らない?」
「ん。カイルと一緒に村長宅に」

 サーシャの問いに答えるノエル。

「村長宅に?」
「さっき通り道で見かけた。付き合うとかどうとか言ってたから、声はかけなかった」

 と、マキナ。

「つ、付き合うっ!?」

 サーシャの声が裏返った。

 胸の鼓動が激しく高鳴る。
 いつの間にそんな関係にまで進展したというのか。

「い、いや、彼ならまあいいかな。変な男が寄りつくくらいなら……」

 サーシャはまだカイルとの付き合いは浅い。

 村に住むようになってからも、冒険者絡みの仕事でしばしば村を留守にするし、カイルはカイルで村のために色々と作ったりしていて、互いにあまり接点がないのだ。
 基本的に善人だと思うし、実直な性格はそれなりに好ましいと思う。

 きっとノエルとは仲良くやっていけるだろう。
 敬愛する少女の幸せを願いながらも、心の片隅にはソワソワするような気持ちが生まれてしまう。

「あら、随分と落ち着かない様子ですね」

 三つの人影が歩み寄ってきた。

「君たちは──!」

 振り返ったサーシャは驚きの声を上げる。

 フルプレートアーマーに身を包んだ黒騎士。
 妙齢の美女魔法使い。
 眼鏡をかけた少年僧侶。

 いずれも顔なじみの冒険者たちだった。
 冒険者の最高位──サーシャと同格のSSSランクである。

「よう、しばらくだな」

 黒騎士ドノバンが豪放な笑みを浮かべた。

「ここがジュデッカ村ですか。なかなか牧歌的でいいところですね」

 魔法使いマルティナが周囲を見回す。

「瘴気に覆われた『呪われた村』と聞いていたのですが、私の探知によると大気中の瘴気率は0.03%未満……自然界の基準値をはるかに下回ってますね」

 と、これは少年僧侶のアルフレッド。

「みんな、どうしてここに?」
「お前が言ったんだろ。この村にはSSSランクモンスターと渡り合える猛者がいると。一つ手合わせしてみたいもんだ」

 ドノバンが、ふしゅうっ、と息を吐き出した。

 まるでどう猛な獣のごときオーラ。
 無類の戦好きで知られる、彼らしい理由だった。

「若い男でしょう? あたし、ちょっと会ってみたいです。好みのタイプだったらいいなぁ……」

 マルティナが艶然と微笑む。

 三十路を過ぎたばかりの彼女は、婚活にいそしんでいるという噂だった。
 カイルもその候補になっているのだろうか。

「Eランクでありながら、SSSランクと渡り合った──どんな術式を使うのか興味がありますね」

 アルフレッドは純粋な好奇心のようだ。

 三人とも理由は異なるものの、いずれもカイル目当てで村までやって来たらしい。
 多忙なSSS冒険者がそろって──。

(それだけカイルくんには、人を惹きつける何かがあるってことかな?)

 内心でつぶやくサーシャ。

「彼は今、別の場所にいるの。しばらく待ってもらったほうがいいかもしれないね」
「ここって温泉街があるんですね。あたし、ちょっと入ってみたいです」

 マルティナが真っ先に言った。
 カイルに会うこと以外に、観光目的もあるのかもしれない。

「私はジュデッカランドという遊具施設に興味があります」

 こちらは少年らしい興味を示すアルフレッド。

「俺はカイルとやらが来るまで、そこらで剣でも振っている。遊んでいると体がなまってしまうからな」

 ドノバンだけはクルリと背を向けてしまった。

「──ちょっと待ってください」

 アルフレッドがふいに表情を引き締めた。
 同時に、ドノバンとマルティナが身構える。

 そしてサーシャも、反射的に腰の剣に手をやっていた。

「??? みんな、どうした?」

 マキナだけがキョトンとしている。

「──何かが、来る」

 サーシャはいつでも抜剣できる体勢のまま、答えた。

 彼女たちSSSランク冒険者の戦闘勘に触れるだけの、力ある者が──近づいている。

 次の瞬間、村はずれの森を落雷が直撃した。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな ・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー! 【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】  付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。  だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。  なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!  《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。  そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!  ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!  一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!  彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。  アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。  アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。 カクヨムにも掲載 なろう 日間2位 月間6位 なろうブクマ6500 カクヨム3000 ★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

処理中です...