3 / 22
一年目。
先輩は本当に大変......。
しおりを挟む
ある日の部活中。
顧問の先生が珍しくお休みで、いつもなら厳しい練習もこの日は少しだけ軽めだった。
ジュンヤとヤマトにゴム弓のコツを教えながら、3人で和やかに談笑していた。
「ジュンヤは形が定まってきていいね。
ヤマト、ここはこうした方がいいよ」
二人を比べると、明らかにジュンヤの方がセンスがある。そんなことは本人たちも気づいているだろう。でも、なるべく気を使って言葉を選んでいたつもりだった。
ジュンヤと二人で話していたとき、ヤマトが一人で黙々と練習を続けていた。そのとき――
バンッ!!!!
突然、ゴム弓が地面に叩きつけられた音が響く。
「どうせ僕はダメですよ!!」
目を潤ませながら叫んだヤマトは、そのまま部室の外へと走り去っていった。
「おい、ヤマトっ!!」
部長が声を荒げるが、「俺が行きます」と言ってすぐに後を追う。
体育館の裏、影のある場所で体育座りをしているヤマトを見つけた。
「ヤマト、どうした?」
「うるさい! 近寄るなっ!」
……その言葉に一瞬たじろぐ。
それでも、そっと近づこうとすると、ヤマトは俺を避けてまた走り出してしまった。
「おいっ!」
(くそっ、今回はちょっとやばいかもな……)
部長には「家の用事がある」と適当に伝えて帰らせてもらい、急いで着替えてヤマトの荷物もまとめる。
だが、どこにもいない。
(……帰ったか? いや、違う気がする)
とりあえずヤマトの家へ向かってみる。周辺も探してみたが、それらしい姿は見当たらない。
1時間ほど探し回って、もう一度ヤマトの家の前で立ち止まる。
【ヤマト、ごめん。今、家の前にいるから
もし家にいるなら、顔出してもらえると助かる】
2分後、返信が届く。
【はい】
ヤマトが玄関から出てきた。顔は真っ赤で、泣いていたのが一目でわかる。
「先輩……」
そう言って俺の方へ駆け寄り、また泣き出した。
「先輩がジュンヤとばっか話すの見てると、なんか嫌な気持ちになるし……
ぐすっ……先輩、全然褒めてくれないし……
ジュンヤのことばっかり褒めるし……ぼく……」
ぽろぽろと大粒の涙がこぼれる。その涙をそっと手で拭ってやる。
「ごめんな。俺が悪かった。
ヤマトもちゃんと上手だよ。だからもう泣くなって」
左肩に顔を寄せてきたヤマトの頭を、優しく右手で撫でる。
「ほら、もう泣くな。人も見てるし」
少し落ち着いた様子のヤマトに、「家、入ってく?」と誘われ、お邪魔することにした。
ヤマトの部屋は思った以上に整っていて、本棚やテレビもあり、こざっぱりしている。
「部屋、きれいだね」
ヤマトはちょっと照れて笑った。
「先輩、何か飲みますか?」
「ああ、うん。よろしく」
ヤマトが麦茶を持ってきて、二人並んでテレビを見ながらそれを飲む。
しばらく無言の時間が流れたあと、右肩にヤマトの頭がコツンと寄りかかってきた。
……泣いて疲れて、寝てしまったようだ。
悪い気はしないので、そのままテレビを眺め続ける。
気づいたときには、自分も寝てしまっていたらしい。
目を覚ますと、ヤマトの膝の上に頭を乗せていた。ヤマトはすでに起きていて、俺を寝かせてくれていたようだった。
「あっ、ごめん!寝ちゃってた」
「大丈夫です。もう帰りますか?」
夜は家の用事があったので、コクリと頷くと、ヤマトは少し寂しそうな顔をした。
「また明日な!」と頭をポンと撫でる。
「はい!」と、ようやく笑顔が戻った。
「明日、みんなにちゃんと謝ろうな。俺も一緒に謝るから」
翌日、二人でみんなにしっかり謝った。
顧問の先生が珍しくお休みで、いつもなら厳しい練習もこの日は少しだけ軽めだった。
ジュンヤとヤマトにゴム弓のコツを教えながら、3人で和やかに談笑していた。
「ジュンヤは形が定まってきていいね。
ヤマト、ここはこうした方がいいよ」
二人を比べると、明らかにジュンヤの方がセンスがある。そんなことは本人たちも気づいているだろう。でも、なるべく気を使って言葉を選んでいたつもりだった。
ジュンヤと二人で話していたとき、ヤマトが一人で黙々と練習を続けていた。そのとき――
バンッ!!!!
突然、ゴム弓が地面に叩きつけられた音が響く。
「どうせ僕はダメですよ!!」
目を潤ませながら叫んだヤマトは、そのまま部室の外へと走り去っていった。
「おい、ヤマトっ!!」
部長が声を荒げるが、「俺が行きます」と言ってすぐに後を追う。
体育館の裏、影のある場所で体育座りをしているヤマトを見つけた。
「ヤマト、どうした?」
「うるさい! 近寄るなっ!」
……その言葉に一瞬たじろぐ。
それでも、そっと近づこうとすると、ヤマトは俺を避けてまた走り出してしまった。
「おいっ!」
(くそっ、今回はちょっとやばいかもな……)
部長には「家の用事がある」と適当に伝えて帰らせてもらい、急いで着替えてヤマトの荷物もまとめる。
だが、どこにもいない。
(……帰ったか? いや、違う気がする)
とりあえずヤマトの家へ向かってみる。周辺も探してみたが、それらしい姿は見当たらない。
1時間ほど探し回って、もう一度ヤマトの家の前で立ち止まる。
【ヤマト、ごめん。今、家の前にいるから
もし家にいるなら、顔出してもらえると助かる】
2分後、返信が届く。
【はい】
ヤマトが玄関から出てきた。顔は真っ赤で、泣いていたのが一目でわかる。
「先輩……」
そう言って俺の方へ駆け寄り、また泣き出した。
「先輩がジュンヤとばっか話すの見てると、なんか嫌な気持ちになるし……
ぐすっ……先輩、全然褒めてくれないし……
ジュンヤのことばっかり褒めるし……ぼく……」
ぽろぽろと大粒の涙がこぼれる。その涙をそっと手で拭ってやる。
「ごめんな。俺が悪かった。
ヤマトもちゃんと上手だよ。だからもう泣くなって」
左肩に顔を寄せてきたヤマトの頭を、優しく右手で撫でる。
「ほら、もう泣くな。人も見てるし」
少し落ち着いた様子のヤマトに、「家、入ってく?」と誘われ、お邪魔することにした。
ヤマトの部屋は思った以上に整っていて、本棚やテレビもあり、こざっぱりしている。
「部屋、きれいだね」
ヤマトはちょっと照れて笑った。
「先輩、何か飲みますか?」
「ああ、うん。よろしく」
ヤマトが麦茶を持ってきて、二人並んでテレビを見ながらそれを飲む。
しばらく無言の時間が流れたあと、右肩にヤマトの頭がコツンと寄りかかってきた。
……泣いて疲れて、寝てしまったようだ。
悪い気はしないので、そのままテレビを眺め続ける。
気づいたときには、自分も寝てしまっていたらしい。
目を覚ますと、ヤマトの膝の上に頭を乗せていた。ヤマトはすでに起きていて、俺を寝かせてくれていたようだった。
「あっ、ごめん!寝ちゃってた」
「大丈夫です。もう帰りますか?」
夜は家の用事があったので、コクリと頷くと、ヤマトは少し寂しそうな顔をした。
「また明日な!」と頭をポンと撫でる。
「はい!」と、ようやく笑顔が戻った。
「明日、みんなにちゃんと謝ろうな。俺も一緒に謝るから」
翌日、二人でみんなにしっかり謝った。
10
あなたにおすすめの小説
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる