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一年目。
初めての誕プレ
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7月も終わりに近づき、暑さはますます増してくる。
部室には俺とジュンヤだけ。他の部員はまだ来ていなかった。
「先輩、ヤマトの誕生日そろそろなの知ってます?」
「えっ、いや…そういえば知らなかったな。」
部活の中で、俺とヤマトは“できてる”といじられるほど仲が良い。
「8月1日ですよ。この前俺の誕生日だったんで、ヤマトがプレゼントくれたんです。その時に聞きました。」
「え、あと3日じゃん。」
今日は7月29日。
誕生日か…。自分のはとっくに過ぎてるし、気にしてなかったな。
「何が欲しいのかな?」
「先輩じゃないですか?」とジュンヤが茶化してきたので、軽く頭を叩いた。
「んー、でも分からないですね。そこら辺は探ってください。」
「だな。」
ちょうどそのとき、ヤマトが部室に入ってきたので、話をやめた。
「先輩、何話してたんですか?」
「なんでもないよ。」そっけなく答える。
「僕に言えないことですか?悪口とか?」
しょんぼりし始めた。
「そんなわけないだろ。すぐ落ち込むな。」そう言いながら、ヤマトの脇をくすぐる。
「くすぐったいですっ、やめてっ!」
(ほんと、すぐ落ち込むな。こいつは…)
———
帰り道、いつも通りヤマトと別れたあと、駅に向かって少し戻る。
(この前ぬいぐるみ喜んでたし、また可愛いぬいぐるみとかでいいかな…)
駅前のおもちゃ屋に入り、商品を物色する。
小一時間探して、これだと思えるものを購入した。
———
8月1日。ヤマトの誕生日。
帰り道、誕生日のことにはあえて触れなかった。
「先輩、今日なんの日か知ってます?」
「浴衣の人が多いし、花火の日?」
「えっ、そうなんですか?…って違う!」
ヤマトが少しふてくされる。
「また明日ね。」と、いつも通り言うと、ヤマトが少し悲しそうな顔をした。
(…こいつのことだから、自分で誕生日って言うの、嫌なんだろうな)
「ヤマト!」
自転車を止めて、ヤマトの方へ駆け寄る。
「ハッピーバースデー。16歳おめでとう。」
ポケットから小さな包みを取り出して渡す。
「ありがとうございます!」
満面の笑みを浮かべるヤマト。
「開けていいですか?」
頷くと、ヤマトは包みを開けた。中には、ミサンガが2本。
「ミサンガですか?ありがとうございます。」
「ごめん、1つは俺の。ヤマトとお揃い。」
お互いに右腕にミサンガをつけ合い、ヤマトは嬉しそうにそれを見つめた。
「先輩の誕生日は?」
「5月20日。もう過ぎちゃったよ。」
「来年、絶対いいもの渡します!」
「期待してる。」
(ぬいぐるみは高くて手が出なかったから、隣のアクセサリーショップで買った。でも、喜んでもらえて本当に良かった。)
「明日から夏休みですね。大会とか練習で忙しいけど、先輩と海とかお祭りとか、花火とかしたいな。」
「そうだな。今年はヤマトがいるから、楽しい夏になりそうだ。」
「ミサンガにお願い事しましたか?」
「あ、すっかり忘れてたな。」
「僕はちゃんとしましたよ。」
「なんてお願いしたの?」
「先輩とこの先も、卒業してからも、一緒にいられますように、って。」
「……大会で優勝できますようにとか、そういうのじゃないんだ。」
「先輩もお願いしてくださいよ。」
「そうだな…」
(今の楽しい日々が、続きますように)
「なんて願いました?」
「内緒だよ。」
「僕教えたんですから、教えてくださいよ~」
「世界平和を願ったよ。」
「ぜっっったいウソ!」
「切れたときに教えてやるよ。また明日な。」
———
家に帰り、部屋でくつろいでいるとヤマトからメールが届いた。
『夏祭りも海も絶対行きましょうね!プレゼントありがとうございました!』
こんなに面倒くさくて、可愛い後輩に。
また、心を惹かれてしまった。
部室には俺とジュンヤだけ。他の部員はまだ来ていなかった。
「先輩、ヤマトの誕生日そろそろなの知ってます?」
「えっ、いや…そういえば知らなかったな。」
部活の中で、俺とヤマトは“できてる”といじられるほど仲が良い。
「8月1日ですよ。この前俺の誕生日だったんで、ヤマトがプレゼントくれたんです。その時に聞きました。」
「え、あと3日じゃん。」
今日は7月29日。
誕生日か…。自分のはとっくに過ぎてるし、気にしてなかったな。
「何が欲しいのかな?」
「先輩じゃないですか?」とジュンヤが茶化してきたので、軽く頭を叩いた。
「んー、でも分からないですね。そこら辺は探ってください。」
「だな。」
ちょうどそのとき、ヤマトが部室に入ってきたので、話をやめた。
「先輩、何話してたんですか?」
「なんでもないよ。」そっけなく答える。
「僕に言えないことですか?悪口とか?」
しょんぼりし始めた。
「そんなわけないだろ。すぐ落ち込むな。」そう言いながら、ヤマトの脇をくすぐる。
「くすぐったいですっ、やめてっ!」
(ほんと、すぐ落ち込むな。こいつは…)
———
帰り道、いつも通りヤマトと別れたあと、駅に向かって少し戻る。
(この前ぬいぐるみ喜んでたし、また可愛いぬいぐるみとかでいいかな…)
駅前のおもちゃ屋に入り、商品を物色する。
小一時間探して、これだと思えるものを購入した。
———
8月1日。ヤマトの誕生日。
帰り道、誕生日のことにはあえて触れなかった。
「先輩、今日なんの日か知ってます?」
「浴衣の人が多いし、花火の日?」
「えっ、そうなんですか?…って違う!」
ヤマトが少しふてくされる。
「また明日ね。」と、いつも通り言うと、ヤマトが少し悲しそうな顔をした。
(…こいつのことだから、自分で誕生日って言うの、嫌なんだろうな)
「ヤマト!」
自転車を止めて、ヤマトの方へ駆け寄る。
「ハッピーバースデー。16歳おめでとう。」
ポケットから小さな包みを取り出して渡す。
「ありがとうございます!」
満面の笑みを浮かべるヤマト。
「開けていいですか?」
頷くと、ヤマトは包みを開けた。中には、ミサンガが2本。
「ミサンガですか?ありがとうございます。」
「ごめん、1つは俺の。ヤマトとお揃い。」
お互いに右腕にミサンガをつけ合い、ヤマトは嬉しそうにそれを見つめた。
「先輩の誕生日は?」
「5月20日。もう過ぎちゃったよ。」
「来年、絶対いいもの渡します!」
「期待してる。」
(ぬいぐるみは高くて手が出なかったから、隣のアクセサリーショップで買った。でも、喜んでもらえて本当に良かった。)
「明日から夏休みですね。大会とか練習で忙しいけど、先輩と海とかお祭りとか、花火とかしたいな。」
「そうだな。今年はヤマトがいるから、楽しい夏になりそうだ。」
「ミサンガにお願い事しましたか?」
「あ、すっかり忘れてたな。」
「僕はちゃんとしましたよ。」
「なんてお願いしたの?」
「先輩とこの先も、卒業してからも、一緒にいられますように、って。」
「……大会で優勝できますようにとか、そういうのじゃないんだ。」
「先輩もお願いしてくださいよ。」
「そうだな…」
(今の楽しい日々が、続きますように)
「なんて願いました?」
「内緒だよ。」
「僕教えたんですから、教えてくださいよ~」
「世界平和を願ったよ。」
「ぜっっったいウソ!」
「切れたときに教えてやるよ。また明日な。」
———
家に帰り、部屋でくつろいでいるとヤマトからメールが届いた。
『夏祭りも海も絶対行きましょうね!プレゼントありがとうございました!』
こんなに面倒くさくて、可愛い後輩に。
また、心を惹かれてしまった。
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