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一年目。
頭と心の違い
しおりを挟むプルルル、プルルル。
「先輩! 着きましたよ!」
「ん~…あ、入ってきていいよ…開いてるから。」
ドタドタと階段を急ぎ足で登ってくる音が近づく。
ガチャ!
「先輩? 寝起きですね。眠そうな顔してますよ。」
ヤマトがニヤニヤしてる。
「先輩! 久しぶり! って、あれ? なんで下履いてないんですか?」
「ん!? あ、いや、別に…」
下着も履かずに寝てたことに気づいた。慌ててズボンとパンツを履く。
ヤマトが部屋を見渡し、鼻をクンクンさせる。
「先輩、オナニーしてました?」
「は!? するわけねえだろ、そんなこと…」
ヤマトが顔を近づけてくる。
「先輩、嘘つくとき、いつも目がパチパチしますよ。バレバレです。」
(そんな癖、俺にあったのか…)
「はぁ…してたよ…」
ヤマトがなぜかニッコリ笑う。
「先輩、僕のこと考えてしました?」
図星を突かれて言葉に詰まる。
「…か、考えるわけねえだろ!」
「またパチパチしてますよ。」
「…」
赤くなった顔を隠すように俯くと、ヤマトが隣にくっついて座ってくる。
「やっぱり先輩に触ってると落ち着きます。」
そう言って、俺の手を握ってきた。
こいつは俺の心を良くも悪くもかき乱す。
俺はヤマトが特別な意味で好き。でも、それを理解できない自分がいる。
---
「先輩、ゲームしよ! 今日こそ負けませんよ!」
「ん、よし、やろうぜ。手抜かねえからな。」
格闘ゲームで対戦し、俺の圧勝で終わった。
「強すぎです…先輩…」
ヤマトの目がちょっとウルウルしてる。
「でも、久しぶりにヤマトの顔見れてよかった。毎日会ってると、ちょっと会えないだけで寂しくなるんだよな。」
「先輩も、僕と会えないと寂しいって思ってくれるんですね!」
「いや、別に深い意味はねえよ。」
「先輩、まだちゃんと伝えてなかったから…この前、僕のために怒ってくれて、嬉しかったです。誰かにこんなに大切にされたの、初めてで…。先輩なら、中学のやつらと違って、絶対にいじめたりしない。心から信用できるって、本気で思いました。」
「なら、俺もお前を信じて話したいことがある。」
「なんですか?」
「最近、何しててもお前のことが頭に浮かんでくる。さっきお前が言ったことも、図星だし…。俺、おかしいのかな? 男を好きになるなんて、俺には理解できないけど…ヤマトのことが…」
言い切る前に、ヤマトが俺の唇に人差し指を当て、「しーっ」と遮った。
「先輩はおかしくなんかないです。この気持ちって、心ではわかってても、頭で理解するのが難しいんです。僕も最初、めっちゃ悩みました。だから、先輩の気持ちに頭が追いつくまで、その先は言わないでください。」
泣き虫で、弱虫で、友達もいなくて、俺がいないと何もできないヤマト。でも、俺の気持ちを唯一理解してくれる、頼りがいのあるやつだ。
「先輩、泣かないでくださいよ。」
「え?」
気づけば涙がこぼれていた。だんだん涙が止まらなくなる。
ヤマトが近づき、俺の顔を胸に抱き寄せる。
初めてヤマトの前で、ヤマトの腕の中で泣いた。
泣き止むまで、ヤマトは何も言わず、ただ抱きしめてくれていた。
心に溜めていた思いを吐き出せて、なんだかスッキリした。
泣き止むと、ヤマトは何事もなかったように話してきた。
---
明日も学校があるので、ヤマトは帰った。
残りの1週間の謹慎期間、ヤマトは毎日、部活終わりに遊びに来てくれた。おかげで謹慎期間はあっという間に終わり、いつもの日常に戻った。
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