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風呂に入ってスッキリしたリズは、セブルカに連れられ、また先ほどの部屋に戻ってきた。部屋の中をよく見れば、机の上には書類が積みあがっていて、書き掛けの書類や、書物が散乱している。
「あの、つかぬことをお聞きしますが、もしかして、この部屋、リュカさんの部屋ですか」
セブルカは、あらと、口を押えた。
「そうですよ、とっくにお気づきかと思ってましたけど、こんな汚い部屋、客室ではありません、リュカ様がリズ様を抱きかかえて自分のベッドへ寝かせてしまったんです」
「うううぅ……じゃぁ、僕はリュカさんのベッドを三日間も取り上げていたんですね」
「そんな、気にするところそこなんですか?人のベットって嫌じゃないです?私、ちょっと潔癖だから、ここで寝るなんてできませんけど、愛の力って人を盲目にさせるって本当なんですね」
セブルカはうっとりと、頬を赤らめ、リズを見つめた。リズは、急にいたたまれなくなって、休もうとしていたベッドから降りた。
「どうしました?やっぱりちょっと臭いです?リュカ様のベッドのシーツはちゃんと毎日とりかえてますけど、染みついたものってありますものね」
「いえいえいえ、臭いとかじゃなくて、全然っ、いい……匂いです」
人様のベッドの匂いを良いにおいなんて口にして、リズは羞恥心で自分がどうかなってしまうかと思った。でも、本当にリュカの香りはリズにとって心地いい程に良いにおいだし、このベッドで眠るのも、すごく安心できた。
「ずっと寝てばかりも良くなくて、えっと、そうだ、新人騎士の皆さんは無事にサララに到着したのでしょうか?あ!!ゼクスさんは、どうなったんでしょう、あぁ、僕、すっかり自分の事で頭がいっぱいになってて、ゼクスさんの事やさらわれた女性騎士の皆さんのことをすぐ思い出さなかったなんて、こうしちゃいられない」
リズは、扉から飛び出るような勢いでノブを掴み、部屋の外へでたところで、ボフッと柔らかな壁にぶち当たった。
「んぐぅ」
「リズ、どこへ行くつもりだ、まだ寝てないと」
リュカが驚いて、リズを腕の中に抱き留めた。
「リュカさん、僕、皆さんの事が心配で、ゼクスさんはひどい怪我だったはずです、女性騎士たちは」
「落ち着け、大丈夫、みな無事にサララに到着した、女性騎士もみな、今はもう回復して業務についてる、ゼクスも気にすることない」
「でも、ゼクスさんは僕のせいで殴られて」
「騎士なんだから、殴られるくらい慣れてる、そんなに心配しなくていい」
「慣れてたとしても、怪我はします!!リュカさんどいてください」
「はぁ……あんた自分が一番ダメージ受けてたって解ってんすか」
リュカの目が、じっとリズを見つめる。
「三日意識がなかったんですよ、高熱で動悸が激しくなりすぎて、呼吸が止まりかけたことだってあったんだ、解ってんすか」
それは知らなかった。フェロモンの過重使用は体に大きな負担を強いる、結果として助かったけれど、リュカが来てくれなかったら、本当に命を落としていただろう。
「熱、下がらなくて、怖かったんすよ」
「リュカさん、ごめんね」
そばで、看病するしかできなかったリュカに、どれほどの心配をかけたことだろう。涙がせりあがって来て、下を向くと、足元を腕ですくわれ、横向きに抱き上げられた。
「どうしても、様子を見に行きたいなら、連れて行ってあげます」
「ひゃっ、リュカさん、抱っこしないで」
「だめ、歩くつもりなら、このまま俺のベットへ連れてく、どうする?」
リュカは、軽々とリズをだき、わざとベッドへ行こうとしてた。
「わーーっ、ベッドはダメです、わ、解りました、歩かないか、ら、おねがい、です、皆さんの様子を」
「了解」
くるっと、向きを変えて、リュカは大事そうにリズを抱き抱え、歩いた。廊下ですれ違う人達の目線が恐ろしくて、リズは、ずっとリュカの胸元を見つめていた。
「あの、つかぬことをお聞きしますが、もしかして、この部屋、リュカさんの部屋ですか」
セブルカは、あらと、口を押えた。
「そうですよ、とっくにお気づきかと思ってましたけど、こんな汚い部屋、客室ではありません、リュカ様がリズ様を抱きかかえて自分のベッドへ寝かせてしまったんです」
「うううぅ……じゃぁ、僕はリュカさんのベッドを三日間も取り上げていたんですね」
「そんな、気にするところそこなんですか?人のベットって嫌じゃないです?私、ちょっと潔癖だから、ここで寝るなんてできませんけど、愛の力って人を盲目にさせるって本当なんですね」
セブルカはうっとりと、頬を赤らめ、リズを見つめた。リズは、急にいたたまれなくなって、休もうとしていたベッドから降りた。
「どうしました?やっぱりちょっと臭いです?リュカ様のベッドのシーツはちゃんと毎日とりかえてますけど、染みついたものってありますものね」
「いえいえいえ、臭いとかじゃなくて、全然っ、いい……匂いです」
人様のベッドの匂いを良いにおいなんて口にして、リズは羞恥心で自分がどうかなってしまうかと思った。でも、本当にリュカの香りはリズにとって心地いい程に良いにおいだし、このベッドで眠るのも、すごく安心できた。
「ずっと寝てばかりも良くなくて、えっと、そうだ、新人騎士の皆さんは無事にサララに到着したのでしょうか?あ!!ゼクスさんは、どうなったんでしょう、あぁ、僕、すっかり自分の事で頭がいっぱいになってて、ゼクスさんの事やさらわれた女性騎士の皆さんのことをすぐ思い出さなかったなんて、こうしちゃいられない」
リズは、扉から飛び出るような勢いでノブを掴み、部屋の外へでたところで、ボフッと柔らかな壁にぶち当たった。
「んぐぅ」
「リズ、どこへ行くつもりだ、まだ寝てないと」
リュカが驚いて、リズを腕の中に抱き留めた。
「リュカさん、僕、皆さんの事が心配で、ゼクスさんはひどい怪我だったはずです、女性騎士たちは」
「落ち着け、大丈夫、みな無事にサララに到着した、女性騎士もみな、今はもう回復して業務についてる、ゼクスも気にすることない」
「でも、ゼクスさんは僕のせいで殴られて」
「騎士なんだから、殴られるくらい慣れてる、そんなに心配しなくていい」
「慣れてたとしても、怪我はします!!リュカさんどいてください」
「はぁ……あんた自分が一番ダメージ受けてたって解ってんすか」
リュカの目が、じっとリズを見つめる。
「三日意識がなかったんですよ、高熱で動悸が激しくなりすぎて、呼吸が止まりかけたことだってあったんだ、解ってんすか」
それは知らなかった。フェロモンの過重使用は体に大きな負担を強いる、結果として助かったけれど、リュカが来てくれなかったら、本当に命を落としていただろう。
「熱、下がらなくて、怖かったんすよ」
「リュカさん、ごめんね」
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「ひゃっ、リュカさん、抱っこしないで」
「だめ、歩くつもりなら、このまま俺のベットへ連れてく、どうする?」
リュカは、軽々とリズをだき、わざとベッドへ行こうとしてた。
「わーーっ、ベッドはダメです、わ、解りました、歩かないか、ら、おねがい、です、皆さんの様子を」
「了解」
くるっと、向きを変えて、リュカは大事そうにリズを抱き抱え、歩いた。廊下ですれ違う人達の目線が恐ろしくて、リズは、ずっとリュカの胸元を見つめていた。
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