12 / 15
金獅子騎士団とライバル。
しおりを挟む
魔法騎士学院を卒業した俺は、
志望どおり金獅子騎士団へ入団した。
エルとは卒業以来、会っていない。
それどころか連絡する手段すらない。
だがもっと力をつけていつか必ずエルのところまで行ってやる!
俺がそんな決意を新たにしているとき、
アルベルトさん・・・いや、
兄と時期同じくして異例の早さで金獅子騎士団の団長に就任したアルベルト団長が
珍しく我が家に来ていて、談話室でレグルス兄さんと話をしていた。
新人団長同士、周りに聞かれたくない話でもあるのかもしれない。
(とはいえ、俺はいるのだが。)
二人の話を聞いてしまう前にここを立ち去って自室に戻ろうとしたとき、
アルベルト団長が
「来年はジークハルトをうちに入れようと思う。」
と言うのを聞いてしまった。
ジークハルトが金獅子騎士団に入団する!?
アイツは強い。
とてつもなく強い。
今のところ、王太子殿下の専属護衛騎士は決まっておらず、
金獅子騎士団内の上位者が持ち回りで護衛をしている状態だが、
このところ本格的に活動を始めた王太子殿下の専属護衛騎士が決まるのは
時間の問題だろう。
そして金獅子騎士団の中で、団長や副団長のような役職持ち以外で、
最も強い者が選ばれるようだった。
そこにジークハルトが入団したら・・・
いやだ。
ジークハルトが王太子殿下の専属護衛騎士になるなんて、いやだ。
エルを守るのが俺じゃないなんて、ジークハルトだなんて、想像もしたくない。
俺は今までずっと勝てなかったジークハルトに、初めて「勝ちたい」と強く思った。
次の日、
俺はアルベルト団長の執務室のドアを叩いていた。
そして、
「ジークハルトに勝てるように俺を特訓してくれませんか。」
と願い出た。
アルベルト団長は不思議そうに、
「私の弟のジークハルトに?なぜ?突然どうした?」
と俺に聞いた。
「俺は王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢なんです。」
言えた。
俺の夢をエル以外の人に言えた。
エルが魔法騎士学院で俺に自信と強さをくれたから、言えた。
「来年、ジークハルトがこの金獅子騎士団に入団したら、
アイツが一番のライバルになるかと思って・・・」
するとアルベルト団長は
「もしかしてラルフは昨日の話を聞いてたのかな?」
と微笑みながら言った。
「申し訳ありません・・・
団長が『ジークハルトをうちに入れようと思う』と言っているところだけ
聞いてしまいました・・・。」
俺が申し訳なくて声小さめに言うと、
アルベルト団長は、
「なるほど、そういうことか。」
となぜか楽しそうに言った。
「いいだろう、私の弟と同じ特訓をしたいというのだな。
騎士団の中であの特訓と同じことをするのはいささか問題かもしれないと思って
自重しようと思っていたのだが、
私の親友のレグルスの弟でもあり、我が騎士団の有望な新人でもあるラルフの
直接のお願いとあらば、
その要望に答えないわけにはいかないな。」
とアルベルト団長はにやりと笑いながら言ったのだ。
そしてそれから騎士団の鍛練場で定期的にアルベルト団長との特訓をする日々が始まった。
エルとの特訓を日々を思い出す・・・余裕などなかった。
そもそもレベルや過酷さがあの頃とは桁違いだった。
アルベルト団長は治癒魔法や回復魔法である光魔法の名手でもあるため、
俺はアルベルト団長に立ち上がれないほどやられては、
治癒魔法と回復魔法をかけられ、
「さあ、休憩している暇はないぞ。」
と永遠に鍛錬させられ続けるのだった。
「団長・・・もしかしてメッテルニヒ家では、
ジークハルトは、いつもこんな鍛練をしていたんですか?」
「そうだね、ジークハルトは物心ついたときからこのスタイルで鍛練をしていたね。」
なんてことないようにアルベルト団長は言う。
俺はここで初めて、
ジークハルトもアルベルト団長もとんでもないヤツだと気づいたのだった。
いや、団長にヤツとか言ってしまったが。
幼少期からこの環境で育てば、元の才能も相まって、
ジークハルトがあの強さになるのも納得しかなかった。
数ヶ月の時がすぎ、
アルベルト団長の特訓のおかげで、
俺は魔法騎士学院の卒業時とは比べ物にならないくらい、強くなった。
そしてアルベルト団長から、とうとう王太子殿下の専属護衛騎士への就任を命じられた。
俺が勝手にライバル視していたジークハルトがどうなったかというと、
なぜかレグルス兄さんが団長を務める銀鷲騎士団に入団したようだった。
あの団長同士の会話はなんだったんだ。
まあいいか。深く考えるのやめよう。
志望どおり金獅子騎士団へ入団した。
エルとは卒業以来、会っていない。
それどころか連絡する手段すらない。
だがもっと力をつけていつか必ずエルのところまで行ってやる!
俺がそんな決意を新たにしているとき、
アルベルトさん・・・いや、
兄と時期同じくして異例の早さで金獅子騎士団の団長に就任したアルベルト団長が
珍しく我が家に来ていて、談話室でレグルス兄さんと話をしていた。
新人団長同士、周りに聞かれたくない話でもあるのかもしれない。
(とはいえ、俺はいるのだが。)
二人の話を聞いてしまう前にここを立ち去って自室に戻ろうとしたとき、
アルベルト団長が
「来年はジークハルトをうちに入れようと思う。」
と言うのを聞いてしまった。
ジークハルトが金獅子騎士団に入団する!?
アイツは強い。
とてつもなく強い。
今のところ、王太子殿下の専属護衛騎士は決まっておらず、
金獅子騎士団内の上位者が持ち回りで護衛をしている状態だが、
このところ本格的に活動を始めた王太子殿下の専属護衛騎士が決まるのは
時間の問題だろう。
そして金獅子騎士団の中で、団長や副団長のような役職持ち以外で、
最も強い者が選ばれるようだった。
そこにジークハルトが入団したら・・・
いやだ。
ジークハルトが王太子殿下の専属護衛騎士になるなんて、いやだ。
エルを守るのが俺じゃないなんて、ジークハルトだなんて、想像もしたくない。
俺は今までずっと勝てなかったジークハルトに、初めて「勝ちたい」と強く思った。
次の日、
俺はアルベルト団長の執務室のドアを叩いていた。
そして、
「ジークハルトに勝てるように俺を特訓してくれませんか。」
と願い出た。
アルベルト団長は不思議そうに、
「私の弟のジークハルトに?なぜ?突然どうした?」
と俺に聞いた。
「俺は王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢なんです。」
言えた。
俺の夢をエル以外の人に言えた。
エルが魔法騎士学院で俺に自信と強さをくれたから、言えた。
「来年、ジークハルトがこの金獅子騎士団に入団したら、
アイツが一番のライバルになるかと思って・・・」
するとアルベルト団長は
「もしかしてラルフは昨日の話を聞いてたのかな?」
と微笑みながら言った。
「申し訳ありません・・・
団長が『ジークハルトをうちに入れようと思う』と言っているところだけ
聞いてしまいました・・・。」
俺が申し訳なくて声小さめに言うと、
アルベルト団長は、
「なるほど、そういうことか。」
となぜか楽しそうに言った。
「いいだろう、私の弟と同じ特訓をしたいというのだな。
騎士団の中であの特訓と同じことをするのはいささか問題かもしれないと思って
自重しようと思っていたのだが、
私の親友のレグルスの弟でもあり、我が騎士団の有望な新人でもあるラルフの
直接のお願いとあらば、
その要望に答えないわけにはいかないな。」
とアルベルト団長はにやりと笑いながら言ったのだ。
そしてそれから騎士団の鍛練場で定期的にアルベルト団長との特訓をする日々が始まった。
エルとの特訓を日々を思い出す・・・余裕などなかった。
そもそもレベルや過酷さがあの頃とは桁違いだった。
アルベルト団長は治癒魔法や回復魔法である光魔法の名手でもあるため、
俺はアルベルト団長に立ち上がれないほどやられては、
治癒魔法と回復魔法をかけられ、
「さあ、休憩している暇はないぞ。」
と永遠に鍛錬させられ続けるのだった。
「団長・・・もしかしてメッテルニヒ家では、
ジークハルトは、いつもこんな鍛練をしていたんですか?」
「そうだね、ジークハルトは物心ついたときからこのスタイルで鍛練をしていたね。」
なんてことないようにアルベルト団長は言う。
俺はここで初めて、
ジークハルトもアルベルト団長もとんでもないヤツだと気づいたのだった。
いや、団長にヤツとか言ってしまったが。
幼少期からこの環境で育てば、元の才能も相まって、
ジークハルトがあの強さになるのも納得しかなかった。
数ヶ月の時がすぎ、
アルベルト団長の特訓のおかげで、
俺は魔法騎士学院の卒業時とは比べ物にならないくらい、強くなった。
そしてアルベルト団長から、とうとう王太子殿下の専属護衛騎士への就任を命じられた。
俺が勝手にライバル視していたジークハルトがどうなったかというと、
なぜかレグルス兄さんが団長を務める銀鷲騎士団に入団したようだった。
あの団長同士の会話はなんだったんだ。
まあいいか。深く考えるのやめよう。
23
あなたにおすすめの小説
転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。
音無野ウサギ
BL
目覚めたら親指姫サイズになっていた僕。親切なチョウチョさんに助けられたけど童話の世界みたいな展開についていけない。
親切なチョウチョを食べたヒキガエルに攫われてこのままヒキガエルのもとでシンデレラのようにこき使われるの?と思ったらヒキガエルの飼い主である悪い魔法使いを倒した強面騎士様に拾われて人形用のお家に住まわせてもらうことになった。夜の間に元のサイズに戻れるんだけど騎士様に幽霊と思われて……
可愛いもの好きの強面騎士様と異世界転生して親指姫サイズになった僕のほのぼの日常BL
【完結】元勇者の俺に、死んだ使い魔が美少年になって帰ってきた話
ずー子
BL
1年前くらいに書いた、ほのぼの話です。
魔王討伐で疲れた勇者のスローライフにかつて自分を庇って死んだ使い魔くんが生まれ変わって遊びに来てくれました!だけどその姿は人間の美少年で…
明るいほのぼのラブコメです。銀狐の美少年くんが可愛く感じて貰えたらとっても嬉しいです!
攻→勇者エラン
受→使い魔ミウ
一旦完結しました!冒険編も思いついたら書きたいなと思っています。応援ありがとうございました!
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。
捨て猫はエリート騎士に溺愛される
135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。
目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。
お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。
京也は総受け。
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
【BL】僕のペットは白ウサギ?
樺純
BL
「公園に捨てられた可哀想なウサギだと思ったらただのえろウサギでした。」
ある日の帰り道、タケルがふと公園の隅にひっそりと置かれてあったダンボールに気づき中を見ると、そこにはそれはそれは可愛い白いウサギが捨てられていました。そのウサギのネームプレートにはジレンと書かれており、このまま放っておいたら死んじゃうかも…心優しいタケルはそのウサギを連れて家に帰ります。タケルはウサギの汚れを取ろうと一緒にお風呂ります。ウサギの体を洗ってあげようとするとウサギの背中にぷっくりとしたホクロがあるのに気づきます。タケルは変わったホクロだと不思議に思いながら興味本位で優しくそのホクロをぷにぷにと押してみました。するとなんと…可愛い可愛い白いウサギはポンっと魔法にでもかかったかのように細マッチョのイケメンに変身するのでした。突然の出来事に驚くタケル…目の前にいるウサギだったはずのジレンは甘い視線でタケルを見つめニヤッと微笑みます。タケルとジレンの不思議な甘い共同生活は一体どうなるのでしょう?
【連載版あり】「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩
ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。
※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる