乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。

黒茶

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(オレにとっては)因縁のライバルをたぶらかしてみた5

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ある日、
オレルーカスは訓練終わりでへとへとになりながら歩いていると
宿舎の庭に面した通路の脇にあるベンチに座っているジークを見つけた。

「あいつ、なにやってるんだ・・・?」

よく見ると箱から何かを食べようとしているみたいだ。
ついでにオレも休憩していこうとベンチのジークの隣に勝手に座った。

「ジーク、なに食べてんだ?」

と横のジークに声をかけると、
ジークは一目こちらを見て、また箱に目を戻した。
よく見ると街のスイーツショップで売っているチョコレートの詰め合わせだった。
え、またなんでそんなものを!?
といぶかしがるオレの心を読んだのか、

「なぜか団長がくれたんだ。」

とジークがつぶやいた。
謎過ぎるぜ、団長。まあでもそれが通常運転だぜ、団長。
ジークが長い指でチョコレートを一つつまんで口に運ぶのを眺めながら

(ほんとこいつ、顔は良すぎるんだよな・・・
チョコレートを食べてるだけなのに、こんなに絵になるとか、
おかしいだろ・・・)

なんてことをぼんやり考えていたら、
珍しくジークが

「ほしいか?」

と声をかけてきた。
実はオレは甘いものが好きだから、
ひとつくらい食べてみたいなぁ
なんてこっそり思ってもいたけれど、
まさかジークがそんなことを言ってくるとは思わず、びっくりして

「あ、うん・・・」

なんてなさけない返事をしているうちに
ジークがチョコレートを一つつまんでオレのほうに渡そうとしてきたから
オレは手を出そうとしたんだけど。

ジークがチョコレートを運んだ先はオレの口元だった。

「え!?」

と思わず声が漏れたところへチョコレートがほうりこまれた。

えっ!?
まさかの「お口にあーん」スタイル!?
あのジークが!?
突然の出来事にドキっとするどころか処理が追い付かない。
オレが呆然としているところに
ジークが

「うまいか?」

と聞いてきた。

「う、うん。うまい・・・」

とオレがなんとか答えたところに

「そうか。
お前もチョコレートとか好きなんだな。
俺もチョコレートとか、甘いものがわりと好きだ。
体力回復にも手っ取り早いからな。」

ジークが言った。

「え、ジーク、急にどうしたんだ?」

とオレが聞くと、

「前にお前が俺に『好きな食べ物は何か』って聞いてきたんだろうが」

とジークはあきれたように言った。

え、あのときの質問の答え!?

「あ、そうだ、オレが聞いたんだったな、
お前も甘いもの好きなんだ、知らなかったよ。」

とオレが言うと、ジークは、

「そうか。」

と言うと、チョコレートの箱を閉じて、歩いていってしまった。

てか今日のジーク、どうした!
距離感おかしくないか!!??

思わぬ出来事に時間差で心臓の鼓動が早くなる。
おかしいな、
オレがジークをたぶらかすはずなのに
オレがドキドキさせられてどうする!
しっかりしろ、オレ!
いやでもこれは致し方なくないか!?

またしてもジークに完敗した気分だった。
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