女公爵となってなんとか上手くやれるようになった矢先に弟が出来たんですが…可愛いからオールオッケー!!!

下菊みこと

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かなりの年の差の姉弟です

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私はクリスティナ。三十歳。女公爵として領地を守っている。

去年両親が病気で急逝し、頼りになる執事に支えられつつ女公爵となった。

どうにかこうにか女公爵としての仕事にも慣れやっと安定した生活習慣も身につけてひと段落したところで…また問題が発生した。

「この子が私の弟…これまた随分と年の離れた子だわ…お父様、なにやってるのよ…」

「といってもこの子の自己申告のみが証拠ですが」

「魔術で確かめればわかることだわ」

私の元に突然現れた、スラム街出身の男の子。まだ十二歳程度の子供。

なんでも父の元愛人の子だが、父に認知してもらえなかった上この子が原因で二人が別れたため母親から愛されることもなく…ある程度の年齢になった時点で母親に捨てられたという。

せめて今までの分の養育費くらいのお金はくれたっていいじゃないかと乗り込んできたわけだ。

「ちょっと魔術で血縁を調べるけどいい?」

「…はい」

私の血と彼の血を使って魔術で血縁を確かめる。

…うん、たしかに私の弟で間違いないらしい。

「ええ、わかりました。貴方はたしかに私の弟です」

「…じゃあ、養育費の支払いをお願いします」

「それはもちろんです。アル、至急準備して」

「はい、お嬢様」

「ところで貴方、お名前は?私はクリスティナよ」

「セラフィンです」

突然名前を聞かれて面食らった様子の彼は、しかしきちんと名乗ってくれた。

彼は声は可愛いし、顔立ちも整っている。伸びっぱなしの髪を手入れしてお風呂に入れればかなりの美少年になると予想される。

…突然現れた弟だが血の繋がった存在なのだし、なにより磨けば光る原石であるのは明白。一緒に暮らせないか、提案してみようか。

「そう、セラフィン…よかったら、うちで暮らさない?」

「え?」

「貴方は私の血の繋がった弟。私は両親を亡くして独りぼっちで寂しいから貴方が家族になってくれたらとても嬉しいの。どうかしら」

「で、でも…」

困った顔をするセラフィンにここで押し切れと脳が信号を出す。

「行くあてもないのでしょう?ここで暮らせば安定した生活を送れるし、銀行口座も作ってあげるから養育費分の大金はそこに入れたらいいわ。もちろん、今まで受けられなかったであろう教育も受けさせてあげられるし…貴方に損はさせないわ」

「…甘えてもいいんですか?」

「ええ、もちろん!」

こうして十八歳差の弟を引き取り、育てることになった。

そうと決まれば早速と弟をお風呂に入れ、伸びっぱなしの髪も短髪にさせた。

うちの弟に相応しい上等な服を着せれば、やはり見栄えはかなりよくなる。

そんなこんなでかなりの美少年な可愛い私の弟、セラフィンと暮らすことになった。

家庭教師も急遽ではあるが、大金を積んで評判のいい方にお願いした。

貴族籍の方も魔術で血縁を確認したからと正式にうちの子にする手続きをした。

彼の母親にもコンタクトを取って改めて養育費と弟との手切れ金を払った。彼女は生活に困ってはいなかったようだが思わぬ大金に喜んでいた。

弟にも養育費として銀行口座を作ってお金を渡したが、まああれは今までもらえたはずの分のお小遣いだと思ってくれたらいい。

そこまでしたら遠慮がちに困った顔でお礼を言う弟を思いっきり甘やかして、私を姉としてたくさん甘えられるようになるまで構いまくることにした。














弟を引き取って半年。

私の生活はパラダイスになった。

まず私の弟は美少年であるが、ここで栄養たっぷりの食事をして安定した生活を送ることでさらに美貌に磨きがかかった。自分で言うのもなんだが美人姉弟として貴族界隈でも有名になったくらいである。

そして私の弟は育った環境のため教養はあまりなかったが、元々地頭が良かった。引き取ってから半年で、すでにマナーや教養を年相応のレベルまで身につけた。評判の良い家庭教師を雇った甲斐があるというものだ。

そしてなにより、お互い家族の愛というものに飢えていたため今では幸せ家族としてたくさんイチャイチャ出来ている。

「フィン、あーん」

「ん、美味しい!ティナ姉様もあーん」

「んー、美味しい!」

こうしておやつの食べさせあいっこをしたり、お互いお気に入りの小説をお勧めしあったり、仲良く過ごしている。

「フィンが来てくれてお姉様の心は潤ったわ!ありがとう、フィン」

「僕こそ、ティナ姉様に引き取られてから毎日が幸せだよ。ありがとう、ティナ姉様」

花が咲くように笑うフィンに、心が満たされる。

ずっとこんな日々が続けばいいと願った。

だが、下世話な人間はいるものだ。

社交界に出ると、こんなに完璧にお貴族様のお坊ちゃんになったフィンに、未だに育ちの悪い愛人の子呼ばわりするカスがいる。

もちろんこちらにバレないように陰口を叩いているのだが、それでも地獄耳な私には聞こえてくる。

なのでフィンの耳に入る前に粛清…もとい仕返しする。

これでも女公爵。地位と権力はいやというほどあるので嫌がらせの手段には困らないのだ。

といってもせいぜいあの人たちは弟を悪く言うから嫌いだという話をオブラートに包んで周りの貴族連中にするだけ。

しかし女公爵として有名で実際地位も権力も財力もある私に顰蹙を買ったとなれば相手の名は地に落ちる。

割と貴族社会では致命的とも言えるので、ざまぁみろというやつである。

「ティナ姉様はいつも僕を守ってくれるね」

「ふふ、当たり前じゃない」

「これからもそばにいてね、ティナ姉様」

「もちろんよ」

そんなこんなで幸せな家族になった私たち姉弟。

ここまで幸せになれるとは引き取った時にも想像していなかったので嬉しい誤算。

ただ、ひとつだけちょっと困った誤算もある。

それは。

「ところで、フィン。貴方の婚約者をそろそろ決めたいのだけど」

「まだいいよ。僕はティナ姉様と一緒にいたい」

「もう、困った子」

フィンが私に懐きすぎて婚約者の選定を渋ること。

私は女公爵となる際に、結婚はしないと決めていた。

前の婚約者と一悶着あって、婿入りする予定だった彼を切って私が爵位を継ぐという経緯があったためだ。

幼馴染兼頼りになる執事のアルは、実は秘密の恋人だが結婚したり子供を作る気はお互いない。

なので将来は親戚から後継を迎えるつもりだった。

でも今はかなり年の離れた血の繋がる弟であるフィンがいるので、将来はフィンに代を譲ってその子孫に継いでいって欲しいと思っている。

なのに私といる時間を優先したいからと婚約者選びに積極的でないこの子に、嬉しいやらちょっと困るやら。

でもお互い家族からの愛情に飢えて育った結果なので、まあ満足するまで甘やかそう。

その頃にはフィンの婚約者も決まるだろう。

そんな甘い判断をする私に、執事兼恋人のアルはため息を吐きつつも優しく見守ってくれていた。

それを嫉妬丸出しでむむむ…と睨むフィンも可愛らしくて、今日も私は幸せだ。
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