貴族なのに結婚できない‼︎‼︎

アクエリア

文字の大きさ
20 / 40
二章 王弟殿下の襲来

王弟殿下視点 めんどくさい兄

しおりを挟む
 兄さんの質問に答えてからハロイドくんは、仕事があるからと帰ってしまった。ええ……この状況で俺を置いていく?兄さんに酷い目に遭わされてしまいそうなんだけど。

 全くハロイドくんは、兄さんに自分がどれだけ愛されているのか自覚してほしいところだね。兄さんのあの常軌を逸した行動の数々を耳にしていないのか?あんなにも有名な話なのに。

 一度学園に通ったものや貴族なら誰もが知っている話。そう、それは兄さんがハロイドくんを囲い込もうとしているという話だ。

 ハロイドくんの恋人となったものは、他に婚約者をあてがい別れさせ、縁談を持ち掛けられた家には圧力をかけて、婚約を結ばせないようにする。もちろん貴族のパワーバランスが崩れない程度にだけど。

 何度もハロイドくんに会いに行こうとしていたのを、ハロイドくんのお兄さんに拒否されていたから直接アプローチはしていなかったみたいだけど。お兄さんのガードがものすごく硬かったんだろうなぁ……。

 兄さんが押し負けるなんてよっぽどだよね。

 ガッカリしている兄さんの様子を思い出して、クスクスと笑っていると兄さんが不機嫌そうな声で問いかけてきた。

「何が面白いんだ。」

「別に?思い出し笑いだよ……フフッ」

 いつも自信満々な兄さんが落ち込んでいるところなんて滅多に見られないから、本当にあのときは腹がよじれるかと思ったよ。

「なんでレオンはユニファートに絡むんだ。関わりなんてなかっただろう?」

「いやぁ、町でたまたま会ってね。面白そうな子だなって思って。」

「よりにもよってなんでコイツと……。」

「コイツってひどくない?仮にも弟に対してさ。」

プクッと頬を膨らませて、不快であることを示す。

「お前がやっても可愛くない。自分の年齢理解してるか?」

 痛々しいものを見るような目で見ないでくれ、流石にわかってるから。ふざけただけだって。

「さすがにわかってるよ!でも兄さん、ハロイドくんがやったら可愛いとかいうんでしょ?兄さんも大概気持ち悪いよね。」

 うっと息を詰まらせる兄さん。よかったその程度の自覚はあったみたいだ。それさえも無かったら流石に、ハロイドくんがかわいそうだ。

「ハロイドくんもかわいそうだよね~こんな変態に好かれちゃって。かわりに俺がもらってあげよっか?」

 あれ、こんなこと言うつもりないのに、口が滑っちゃった。思わず口を押えると、兄さんが驚いたように目を見張っていた。

「レオン……それ本気で言ってるのか?」

 兄さんが戸惑うのも無理はない。俺もなんで言ったのかわけが分からないんだから。

「何言ってるの、冗談だよ。真に受けちゃって兄さんってもしかしてバカ?」

「なっ何言ってるんだ!」

 動揺を悟られないように満面の笑みを浮かべる。

 ……今日しようと思ってた外交計画の提案、今したらやばいかな。でもあとで執務室に行くのも面倒くさいし。このまま移動しよう。さすがに下にまで声が届いてしまうのに、込み入った話はできないからね。

「兄さん、外交計画の話したいからさ、執務室いこっか。」

「……今の話と全然関係ないけど、いきなりそんなに話変えるか?普通。」

「兄さんはいちいち細かいね。そんなんじゃハロイドくんに嫌われちゃうよ?」

「ユニファートは、そんな簡単に人を嫌いにはならない。あのことを知ってもなお俺と普通に話してくれているからな。」

「……あのことって、え?兄さんが婚約妨害してたやつ?」

コクリと兄さんは頷いた。思わず俺は天を仰いだ。え~あれ許しちゃうの?それなら大抵のことは大丈夫じゃん。

「まあ、いいや。早く行こう。」

兄さんの背中をグイグイと扉のほうへ押す。国王だけ、執務室からここまで直通の道があるからずるいよなぁ。俺たちは、居住区域からの直通の道はあるけれど、執務室からだと遠回りになる。





 執務室の中に入り、セレナにまとめてもらった書類を差し出す。兄さんは紙を一枚めくってそこでピタッと停止してしまった。

「……これは、どういうことだ?」

 説明してくれるんだろうな?と目で威圧してくる。いわれなくても説明くらいちゃんとするのに。

「わかってるって、ハロイドくんのことでしょ。今回の採用試験の中で一番成績がよかったみたいだし、さっき様子見たけど仕事も早くて正確だったし別にいいでしょ?」

「……でもユニファートは最近入ったばかりだろう?もうひとりの奴も。」

「新人教育にちょうどいい機会じゃない?幸い今回向かう国は古くから親交のある国だし、貿易内容の確認や国際情勢の情報交換をする程度だから、仕事もそこまで多くはないよ。」

 兄さんが難しい顔をして考え込んでいる。大方、国としては特に損害もなく人材教育をできるいい機会だとは思うけど、個人的にはハロイドくんを国外には出したくないとか考えてるんだろう。

 まあ、反対されようと連れていくけど。あんなに優秀な人材はなかなか出会えないし。

「……わかった許可しよう。ただお前はユニファートに指一本触れるな。ほかの奴にも目を光らせておけよ。」

 さっきの行動がよほど気に食わなかったみたいだ。大体、わざわざ俺が監視するまでもなくハロイドくんに隠密たくさんくっつけてるだろ。

 まったく面倒くさい兄だなぁ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...