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二章 王弟殿下の襲来
王弟殿下視点 めんどくさい兄
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兄さんの質問に答えてからハロイドくんは、仕事があるからと帰ってしまった。ええ……この状況で俺を置いていく?兄さんに酷い目に遭わされてしまいそうなんだけど。
全くハロイドくんは、兄さんに自分がどれだけ愛されているのか自覚してほしいところだね。兄さんのあの常軌を逸した行動の数々を耳にしていないのか?あんなにも有名な話なのに。
一度学園に通ったものや貴族なら誰もが知っている話。そう、それは兄さんがハロイドくんを囲い込もうとしているという話だ。
ハロイドくんの恋人となったものは、他に婚約者をあてがい別れさせ、縁談を持ち掛けられた家には圧力をかけて、婚約を結ばせないようにする。もちろん貴族のパワーバランスが崩れない程度にだけど。
何度もハロイドくんに会いに行こうとしていたのを、ハロイドくんのお兄さんに拒否されていたから直接アプローチはしていなかったみたいだけど。お兄さんのガードがものすごく硬かったんだろうなぁ……。
兄さんが押し負けるなんてよっぽどだよね。
ガッカリしている兄さんの様子を思い出して、クスクスと笑っていると兄さんが不機嫌そうな声で問いかけてきた。
「何が面白いんだ。」
「別に?思い出し笑いだよ……フフッ」
いつも自信満々な兄さんが落ち込んでいるところなんて滅多に見られないから、本当にあのときは腹がよじれるかと思ったよ。
「なんでレオンはユニファートに絡むんだ。関わりなんてなかっただろう?」
「いやぁ、町でたまたま会ってね。面白そうな子だなって思って。」
「よりにもよってなんでコイツと……。」
「コイツってひどくない?仮にも弟に対してさ。」
プクッと頬を膨らませて、不快であることを示す。
「お前がやっても可愛くない。自分の年齢理解してるか?」
痛々しいものを見るような目で見ないでくれ、流石にわかってるから。ふざけただけだって。
「さすがにわかってるよ!でも兄さん、ハロイドくんがやったら可愛いとかいうんでしょ?兄さんも大概気持ち悪いよね。」
うっと息を詰まらせる兄さん。よかったその程度の自覚はあったみたいだ。それさえも無かったら流石に、ハロイドくんがかわいそうだ。
「ハロイドくんもかわいそうだよね~こんな変態に好かれちゃって。かわりに俺がもらってあげよっか?」
あれ、こんなこと言うつもりないのに、口が滑っちゃった。思わず口を押えると、兄さんが驚いたように目を見張っていた。
「レオン……それ本気で言ってるのか?」
兄さんが戸惑うのも無理はない。俺もなんで言ったのかわけが分からないんだから。
「何言ってるの、冗談だよ。真に受けちゃって兄さんってもしかしてバカ?」
「なっ何言ってるんだ!」
動揺を悟られないように満面の笑みを浮かべる。
……今日しようと思ってた外交計画の提案、今したらやばいかな。でもあとで執務室に行くのも面倒くさいし。このまま移動しよう。さすがに下にまで声が届いてしまうのに、込み入った話はできないからね。
「兄さん、外交計画の話したいからさ、執務室いこっか。」
「……今の話と全然関係ないけど、いきなりそんなに話変えるか?普通。」
「兄さんはいちいち細かいね。そんなんじゃハロイドくんに嫌われちゃうよ?」
「ユニファートは、そんな簡単に人を嫌いにはならない。あのことを知ってもなお俺と普通に話してくれているからな。」
「……あのことって、え?兄さんが婚約妨害してたやつ?」
コクリと兄さんは頷いた。思わず俺は天を仰いだ。え~あれ許しちゃうの?それなら大抵のことは大丈夫じゃん。
「まあ、いいや。早く行こう。」
兄さんの背中をグイグイと扉のほうへ押す。国王だけ、執務室からここまで直通の道があるからずるいよなぁ。俺たちは、居住区域からの直通の道はあるけれど、執務室からだと遠回りになる。
執務室の中に入り、セレナにまとめてもらった書類を差し出す。兄さんは紙を一枚めくってそこでピタッと停止してしまった。
「……これは、どういうことだ?」
説明してくれるんだろうな?と目で威圧してくる。いわれなくても説明くらいちゃんとするのに。
「わかってるって、ハロイドくんのことでしょ。今回の採用試験の中で一番成績がよかったみたいだし、さっき様子見たけど仕事も早くて正確だったし別にいいでしょ?」
「……でもユニファートは最近入ったばかりだろう?もうひとりの奴も。」
「新人教育にちょうどいい機会じゃない?幸い今回向かう国は古くから親交のある国だし、貿易内容の確認や国際情勢の情報交換をする程度だから、仕事もそこまで多くはないよ。」
兄さんが難しい顔をして考え込んでいる。大方、国としては特に損害もなく人材教育をできるいい機会だとは思うけど、個人的にはハロイドくんを国外には出したくないとか考えてるんだろう。
まあ、反対されようと連れていくけど。あんなに優秀な人材はなかなか出会えないし。
「……わかった許可しよう。ただお前はユニファートに指一本触れるな。ほかの奴にも目を光らせておけよ。」
さっきの行動がよほど気に食わなかったみたいだ。大体、わざわざ俺が監視するまでもなくハロイドくんに隠密たくさんくっつけてるだろ。
まったく面倒くさい兄だなぁ。
全くハロイドくんは、兄さんに自分がどれだけ愛されているのか自覚してほしいところだね。兄さんのあの常軌を逸した行動の数々を耳にしていないのか?あんなにも有名な話なのに。
一度学園に通ったものや貴族なら誰もが知っている話。そう、それは兄さんがハロイドくんを囲い込もうとしているという話だ。
ハロイドくんの恋人となったものは、他に婚約者をあてがい別れさせ、縁談を持ち掛けられた家には圧力をかけて、婚約を結ばせないようにする。もちろん貴族のパワーバランスが崩れない程度にだけど。
何度もハロイドくんに会いに行こうとしていたのを、ハロイドくんのお兄さんに拒否されていたから直接アプローチはしていなかったみたいだけど。お兄さんのガードがものすごく硬かったんだろうなぁ……。
兄さんが押し負けるなんてよっぽどだよね。
ガッカリしている兄さんの様子を思い出して、クスクスと笑っていると兄さんが不機嫌そうな声で問いかけてきた。
「何が面白いんだ。」
「別に?思い出し笑いだよ……フフッ」
いつも自信満々な兄さんが落ち込んでいるところなんて滅多に見られないから、本当にあのときは腹がよじれるかと思ったよ。
「なんでレオンはユニファートに絡むんだ。関わりなんてなかっただろう?」
「いやぁ、町でたまたま会ってね。面白そうな子だなって思って。」
「よりにもよってなんでコイツと……。」
「コイツってひどくない?仮にも弟に対してさ。」
プクッと頬を膨らませて、不快であることを示す。
「お前がやっても可愛くない。自分の年齢理解してるか?」
痛々しいものを見るような目で見ないでくれ、流石にわかってるから。ふざけただけだって。
「さすがにわかってるよ!でも兄さん、ハロイドくんがやったら可愛いとかいうんでしょ?兄さんも大概気持ち悪いよね。」
うっと息を詰まらせる兄さん。よかったその程度の自覚はあったみたいだ。それさえも無かったら流石に、ハロイドくんがかわいそうだ。
「ハロイドくんもかわいそうだよね~こんな変態に好かれちゃって。かわりに俺がもらってあげよっか?」
あれ、こんなこと言うつもりないのに、口が滑っちゃった。思わず口を押えると、兄さんが驚いたように目を見張っていた。
「レオン……それ本気で言ってるのか?」
兄さんが戸惑うのも無理はない。俺もなんで言ったのかわけが分からないんだから。
「何言ってるの、冗談だよ。真に受けちゃって兄さんってもしかしてバカ?」
「なっ何言ってるんだ!」
動揺を悟られないように満面の笑みを浮かべる。
……今日しようと思ってた外交計画の提案、今したらやばいかな。でもあとで執務室に行くのも面倒くさいし。このまま移動しよう。さすがに下にまで声が届いてしまうのに、込み入った話はできないからね。
「兄さん、外交計画の話したいからさ、執務室いこっか。」
「……今の話と全然関係ないけど、いきなりそんなに話変えるか?普通。」
「兄さんはいちいち細かいね。そんなんじゃハロイドくんに嫌われちゃうよ?」
「ユニファートは、そんな簡単に人を嫌いにはならない。あのことを知ってもなお俺と普通に話してくれているからな。」
「……あのことって、え?兄さんが婚約妨害してたやつ?」
コクリと兄さんは頷いた。思わず俺は天を仰いだ。え~あれ許しちゃうの?それなら大抵のことは大丈夫じゃん。
「まあ、いいや。早く行こう。」
兄さんの背中をグイグイと扉のほうへ押す。国王だけ、執務室からここまで直通の道があるからずるいよなぁ。俺たちは、居住区域からの直通の道はあるけれど、執務室からだと遠回りになる。
執務室の中に入り、セレナにまとめてもらった書類を差し出す。兄さんは紙を一枚めくってそこでピタッと停止してしまった。
「……これは、どういうことだ?」
説明してくれるんだろうな?と目で威圧してくる。いわれなくても説明くらいちゃんとするのに。
「わかってるって、ハロイドくんのことでしょ。今回の採用試験の中で一番成績がよかったみたいだし、さっき様子見たけど仕事も早くて正確だったし別にいいでしょ?」
「……でもユニファートは最近入ったばかりだろう?もうひとりの奴も。」
「新人教育にちょうどいい機会じゃない?幸い今回向かう国は古くから親交のある国だし、貿易内容の確認や国際情勢の情報交換をする程度だから、仕事もそこまで多くはないよ。」
兄さんが難しい顔をして考え込んでいる。大方、国としては特に損害もなく人材教育をできるいい機会だとは思うけど、個人的にはハロイドくんを国外には出したくないとか考えてるんだろう。
まあ、反対されようと連れていくけど。あんなに優秀な人材はなかなか出会えないし。
「……わかった許可しよう。ただお前はユニファートに指一本触れるな。ほかの奴にも目を光らせておけよ。」
さっきの行動がよほど気に食わなかったみたいだ。大体、わざわざ俺が監視するまでもなくハロイドくんに隠密たくさんくっつけてるだろ。
まったく面倒くさい兄だなぁ。
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