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失せ物 諦めずに探し続けよ
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鍵が落ちていないか期待しつつ自宅まで帰ってきたが、結局龍大の家の鍵は見つからなかった。自宅の最寄駅の方にも問い合わせたが、やっぱり鍵の落とし物はなかったそうだ。一度家に戻り、更紗に鍵が見つからないと言ってみたが、更紗も見ていないと首を振る。
終電までまだ時間があるので、鈴夏は今朝小春ベーカリーで買ったカンパーニュを家に置き、もう一度家を出て鍵を探しに行く。スマホの電池が残り少ない中、地面にライトを照らしながら歩を進めた。
再び会社の最寄り駅まで着くが、まだ見つからない。少し疲れてきたから、駅構内のベンチに座ってもう一度バッグの中を確認する。退社直後は気にしなかったが、なぜか今バッグのポケットに入っていたおみくじが目に入った。しかも、おみくじを開いて見ると、「失せ物 諦めずに探し続けよ」と書かれていた。おそらく諦めずに探すことで見つかるのだろうと、一筋の希望が見えてきた。そこで鈴夏は一旦ごちゃついている頭の中を整理した。
会社で鍵を落とした可能性は低い。会社に着いたらほとんどバッグを触らないし、開けもしないことが多いからだ。
それに、21時になろうとしている時刻だと、もうほとんど人がいないだろう。設計製図フロアは人がいなくなると警備員が施錠しに来るから、そうなると入れない。月曜日だからこの時間まで残業している人も少ないはずだ。
あと残った場所は、小春ベーカリーだ。今朝行ったし、スマホも取ったからそのときに落とした可能性もある。面倒くさい気持ちは置いておき、重い腰を上げて小春ベーカリーに行ってみることにした。
途中で雨が降ってきた。傘は当然持っていない。でも、ここまで来たら鈴夏も諦めきれなかった。鍵は誰かに拾われて悪用される危険性も、ゼロではない。キーホルダーには住所とか書いてなかったはずだが、もしかしたらそれになにか情報があって、そこから探知されるかもしれない。
それに、おみくじにも「失せ物 諦めずに探し続けよ」と書かれていたのだ。だったら今は、それを実行するしかない。小春ベーカリーへ行く道路の地面を、スマホのライトで照らしていく。
雨がどんどん強くなっているのは、鈴夏もわかっていた。でも、諦めきれなかった。
そんな鈴夏の思いもつゆ知らず、スマホの電池は少なくなり、ついに小春ベーカリーに着いた時点で力尽きた。とりあえず傘を買おうと、小春ベーカリーから西の方角を見ると、少し先にコンビニの看板が光っていた。鈴夏はそのコンビニに向かって走ろうと思ったが、もう脚が限界だった。
コンビニに着いて傘は買えたものの、鈴夏にはもう鍵を探す気力は残っていなかった。髪も服もしっとりするくらいに濡れているし、こんな状態で傘を買いに来たなんて、店員にも変な目で見られただろう。
コンビニで傘と一緒に買ったゼリー飲料を、ちまちまと飲み込む。今朝はいつもより早く起きたせいもあって、疲労感は予想以上だ。
最初は立っていた鈴夏だったが、鍵が見つからない絶望と疲労が襲ってきてその場に座り込んだ。今日はパンツスタイルだし、ロングカーディガンを合わせているから下着は見えてないだろう。
――あぁ……借りた鍵なくすなんて、ダメな人間だ。私は。
仕事にプライドを持っている鈴夏だからこそ、鍵を失くした自分への絶望を痛いほど感じていた。
終電までまだ時間があるので、鈴夏は今朝小春ベーカリーで買ったカンパーニュを家に置き、もう一度家を出て鍵を探しに行く。スマホの電池が残り少ない中、地面にライトを照らしながら歩を進めた。
再び会社の最寄り駅まで着くが、まだ見つからない。少し疲れてきたから、駅構内のベンチに座ってもう一度バッグの中を確認する。退社直後は気にしなかったが、なぜか今バッグのポケットに入っていたおみくじが目に入った。しかも、おみくじを開いて見ると、「失せ物 諦めずに探し続けよ」と書かれていた。おそらく諦めずに探すことで見つかるのだろうと、一筋の希望が見えてきた。そこで鈴夏は一旦ごちゃついている頭の中を整理した。
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それに、21時になろうとしている時刻だと、もうほとんど人がいないだろう。設計製図フロアは人がいなくなると警備員が施錠しに来るから、そうなると入れない。月曜日だからこの時間まで残業している人も少ないはずだ。
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それに、おみくじにも「失せ物 諦めずに探し続けよ」と書かれていたのだ。だったら今は、それを実行するしかない。小春ベーカリーへ行く道路の地面を、スマホのライトで照らしていく。
雨がどんどん強くなっているのは、鈴夏もわかっていた。でも、諦めきれなかった。
そんな鈴夏の思いもつゆ知らず、スマホの電池は少なくなり、ついに小春ベーカリーに着いた時点で力尽きた。とりあえず傘を買おうと、小春ベーカリーから西の方角を見ると、少し先にコンビニの看板が光っていた。鈴夏はそのコンビニに向かって走ろうと思ったが、もう脚が限界だった。
コンビニに着いて傘は買えたものの、鈴夏にはもう鍵を探す気力は残っていなかった。髪も服もしっとりするくらいに濡れているし、こんな状態で傘を買いに来たなんて、店員にも変な目で見られただろう。
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最初は立っていた鈴夏だったが、鍵が見つからない絶望と疲労が襲ってきてその場に座り込んだ。今日はパンツスタイルだし、ロングカーディガンを合わせているから下着は見えてないだろう。
――あぁ……借りた鍵なくすなんて、ダメな人間だ。私は。
仕事にプライドを持っている鈴夏だからこそ、鍵を失くした自分への絶望を痛いほど感じていた。
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