41 / 79
トシを考えなさい
5
しおりを挟む
お互いの体を離し、欲望を吐き出したコンドームを再び捨てた。産まれたままの姿でベッドの中に入り、少しの間肌が触れ合う時間を味わう。
今日は泊まりの準備をしていないし、翌日ふたりとも仕事があるから帰らなければいけない。その現実から目を逸らしたくて、鈴夏はついわがままをこぼしてしまう。
「うーん……やだな」
「なにが?」
「……帰りたくない」
「……俺も」
「でも帰んないとね……」
ふたりとも社会人だし、ずっとこのままでいるわけにはいかない。こういうときは、気合で乗り切るしかない。鈴夏も今まで、こうして自分を奮い立たせてきたからだ。
「じゃあ、あと5秒で起きて準備しよ!」
鈴夏が54321とカウントダウンする。本来の秒数よりは幾分遅い数え方だった。
0になった瞬間、ふたりで布団を除けて服を着始めた。こういうときは、お互いに着せ合っているヒマはない。そんなことをしていれば、また龍大に甘えたくなってしまう。
服を着終えて、荷物もまとめてホテルを出る。ホテルの休憩代は、すべて鈴夏が払うことにした。龍大も財布から出そうとしたが、それは鈴夏が阻止した。
「ダメ。今日は私が誘ったようなもんだし、たっちゃんの今日の運転代も入ってるから」
ふたりともわかっている。鈴夏の方が収入が多いことくらい。
だから今日の運転代なんていうのは、言い訳だ。
部屋の中にある自動精算機でお金を払い、部屋を出ていった。
心地よい疲労感が全身にまわって、龍大が運転する車の助手席で帰る途中も寝そうだった。でも、運転している龍大だって眠いはず。そんな状況で、ウトウト寝るわけにはいかなかった。
ふたりとも疲れていたのか、あまり会話を交わさず鈴夏の家に着いた。湯船に浸かる体力もなく、簡単に全身洗ってメイクを落とし、スキンケアをした。
更紗が今日起こったことを話せと言ってきたが、そんな体力はもうとっくにない。明日話すからと言って、快楽のせいで空っぽになった体をベッドへなげうった。
しかし次の日、久々に感じる体の痛みがあった。これは鈴夏にも覚えがある。筋肉痛だ。
「いっだ……」
起き上がるのもやっとな体を起こしてみると、体が硬くて動きづらい。起き上がるのもつらいのに、歩くと昨日の疲れを引きずっていて体も重たい。そして腹筋がいちばん痛い。
「ヤ、やばいかも……」
やっとの思いで洗面所に来たが、顔を洗うときに背中を曲げるだけでも痛みが走る。泡で出る洗顔料で顔を洗い、すすいでタオルで拭いたあと、鏡を見たら明らかにクマが濃くやつれていていた。
「げほっ! えっ……」
しかも不意に咳をしたら、なんだか喉の様子もおかしい。明らかに掠れているし、大声を張り上げた翌日のような感覚がある。
一旦部屋に戻ってスマホをキッチンに持ってくるが、歩いてくるだけでも体が悲鳴をあげていた。ダイニングテーブルのチェアに座ると、吸われた安心感でぐったりとしてそのまま突っ伏してしまう。
――このままだと会社行けない……。
あと40分もすれば、家を出ないと会社の始業時刻に間に合わない。なのに、体が上手く動いてくれない。このもどかしさをどうすることもできず、ぼんやりとした頭の中で休む選択肢がウロウロと浮かび始める。
今受けている案件もあるし、昨日は私用で有給を取って、キャンプした挙げ句ラブホテルへ行った。そんな中今日休むことに罪悪感がある。
今日は泊まりの準備をしていないし、翌日ふたりとも仕事があるから帰らなければいけない。その現実から目を逸らしたくて、鈴夏はついわがままをこぼしてしまう。
「うーん……やだな」
「なにが?」
「……帰りたくない」
「……俺も」
「でも帰んないとね……」
ふたりとも社会人だし、ずっとこのままでいるわけにはいかない。こういうときは、気合で乗り切るしかない。鈴夏も今まで、こうして自分を奮い立たせてきたからだ。
「じゃあ、あと5秒で起きて準備しよ!」
鈴夏が54321とカウントダウンする。本来の秒数よりは幾分遅い数え方だった。
0になった瞬間、ふたりで布団を除けて服を着始めた。こういうときは、お互いに着せ合っているヒマはない。そんなことをしていれば、また龍大に甘えたくなってしまう。
服を着終えて、荷物もまとめてホテルを出る。ホテルの休憩代は、すべて鈴夏が払うことにした。龍大も財布から出そうとしたが、それは鈴夏が阻止した。
「ダメ。今日は私が誘ったようなもんだし、たっちゃんの今日の運転代も入ってるから」
ふたりともわかっている。鈴夏の方が収入が多いことくらい。
だから今日の運転代なんていうのは、言い訳だ。
部屋の中にある自動精算機でお金を払い、部屋を出ていった。
心地よい疲労感が全身にまわって、龍大が運転する車の助手席で帰る途中も寝そうだった。でも、運転している龍大だって眠いはず。そんな状況で、ウトウト寝るわけにはいかなかった。
ふたりとも疲れていたのか、あまり会話を交わさず鈴夏の家に着いた。湯船に浸かる体力もなく、簡単に全身洗ってメイクを落とし、スキンケアをした。
更紗が今日起こったことを話せと言ってきたが、そんな体力はもうとっくにない。明日話すからと言って、快楽のせいで空っぽになった体をベッドへなげうった。
しかし次の日、久々に感じる体の痛みがあった。これは鈴夏にも覚えがある。筋肉痛だ。
「いっだ……」
起き上がるのもやっとな体を起こしてみると、体が硬くて動きづらい。起き上がるのもつらいのに、歩くと昨日の疲れを引きずっていて体も重たい。そして腹筋がいちばん痛い。
「ヤ、やばいかも……」
やっとの思いで洗面所に来たが、顔を洗うときに背中を曲げるだけでも痛みが走る。泡で出る洗顔料で顔を洗い、すすいでタオルで拭いたあと、鏡を見たら明らかにクマが濃くやつれていていた。
「げほっ! えっ……」
しかも不意に咳をしたら、なんだか喉の様子もおかしい。明らかに掠れているし、大声を張り上げた翌日のような感覚がある。
一旦部屋に戻ってスマホをキッチンに持ってくるが、歩いてくるだけでも体が悲鳴をあげていた。ダイニングテーブルのチェアに座ると、吸われた安心感でぐったりとしてそのまま突っ伏してしまう。
――このままだと会社行けない……。
あと40分もすれば、家を出ないと会社の始業時刻に間に合わない。なのに、体が上手く動いてくれない。このもどかしさをどうすることもできず、ぼんやりとした頭の中で休む選択肢がウロウロと浮かび始める。
今受けている案件もあるし、昨日は私用で有給を取って、キャンプした挙げ句ラブホテルへ行った。そんな中今日休むことに罪悪感がある。
11
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる