「婚約破棄したからと言って、結婚しないとは言っていない」……って、え!? なに言ってるんですかッ!?

高圧的で嫌味な婚約者リリエンクローン侯爵令息ムスタファ・フォン・トゥルンヴァルト。
彼はある日、私にバシッと言ったのだ。

「もう君みたいなおバカさんにはうんざりだよ! 婚約は破棄させてもらおう!!」

私ロクスバーグ伯爵令嬢アニカ・クラインは、それはもう泣いて喜んだ。
だって、あんな意地悪な人の妻になったら、一生いびり倒されて早死にしちゃうもの。

ところが……。

「君は這い蹲って僕に『棄てないでくださいお願いします』と言うんだ! 言え!!」
「えええっ!?」

恐るべきムスタファ様は、新しい虐め方に目覚めただけだった。

「跪いて足を舐めろ。ほら。僕と結婚したいんだろう?」
「そんなっ。こっ、婚約は、そちらから破棄なさったはず……!」
「君は本当におバカだな。婚約破棄したからと言って、結婚しないとは言っていない」

嘘ぉーーーっ!
自由の身になれたと思ったのにぃーーーっ!!

そんな私を助けてくれたのは、リリエンクローン侯爵令息……え?

「あの男は詐欺師だ。私がリリエンクローン侯爵令息、ミハエル・シュテーガー」

それが、その人との出会いだった……
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